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『往生際の意味を知れ!』この思いは執着?恋?それとも愛なのか?

代表作『あげくの果てのカノン』の著者である、米代恭先生の『往生際の意味を知れ!』は「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中である。

この作品はミステリーラブコメであり、元カノを忘れることの出来ない盲目的な男が、もう一度やり直すために奮闘する、ドタバタ活劇である。
米代先生の独創的な心理描写に、ページをめくる手を止められないこと間違いなしである。

・あらすじ


『往生際の意味を知れ!』米代恭/小学館

主人公・市松海路(いちまつかいろ)の元に、忘れられない元カノジョ・日下部日和(くさかべひより)から7年ぶりに電話がかかってきた。
恋焦がれ、待ち望みすぎていた市松は、元カノ教の敬虔な信徒と化してしまっていた。
しかし再開した彼女が口にしたのは、無理難題な要求であり市松の自尊心をガリガリに削るのであった。

元カノ、元カレが忘れられないあなたに贈る。一筋縄ではいかない「やり直し」ラブストーリーの開幕!

・元カノと結婚したい男


『往生際の意味を知れ!』米代恭/小学館

主人公の市松は元カノ・日和と結婚したい。二人の出会いは、大学時代に日和と偶然であった市松が、自分の映画に出て欲しいと頼んだことがキッカケで付き合うこととなる。
しかし一か月程度で音信不通となりフラれてしまったと思う市松は、その後7年間拗らせ続けるのである。
まともな別れ方をしていれば、拗らせる事はなかったかもしてないが、市松はその手のタイプではないだろう(笑)
市松はよく言われる、男は「名前を付けて保存」の典型的な人物なのである。

・出産記録を撮ってほしい


『往生際の意味を知れ!』米代恭/小学館

そんな市松に、7年ぶりに会おうと電話をしてくる日和。
突然の事に、普通の男なら怪しむものだが市松は違う。なんなら「今すぐに会おう。」と答える始末。しかしそれも当然か、彼は拗らせているのだから。

久しぶりに会う日和は市松に頼みごとがあると伝えていた。
その内容は「私の出産記録を撮ってほしい」というものであった。
突拍子もない頼みに困惑する市松にさらに日和が追撃する。「市松君の精子が欲しいの」
いやいや意味が分からない。何がどうなったらそんな頼みをするのか?
しかも「結婚もしない。父親もいらない。セックスもしない。」「でも子供は欲しい」と言うのだ。

正直私の頭はパニックだ。もしこんなことを言われたら、私は断っているだろう。だって怖すぎるもん!意味わからないもん!

でも市松は違った。この頼みを了承し、なんならこれをチャンスだと思い、
「逃がさない」とまで考え出すのだ。

すごい。すごすぎる。到底市松の気持ちは分からないのに、何故か引き込まれていくのだ。これほど恐ろしい事はない。
はたしてどんな内容の物語になるんだ?


・日下部日和という世界に巻き込まれる


意味の分からない頼みごとをしてきた日和。そんな彼女の事も知っておく必要があるだろう。
重要な事だが市松の事は好きだ。だがそれ以上に大切にしたいものがある女性である。

まず日和の母親は『星の三姉妹』という家族エッセイを執筆する漫画家であり、日和が三姉妹であることが伺える。

ここまで来たら勘の良い人なら気付くであろう。その通り『うちの三姉妹』が脳裏に浮かびあがるだろう。

しかしだ。内容は全く異なる。『星の三姉妹』は嘘、偽りの家族の出来事を描いているのだ。
母親と日和は不仲であり、母は三女を洗脳させている。
母親は漫画を盛り上げるためなら何でもする。本当に何でもだ。

そんな母親を日和は憎んでいる。姉妹を母から助けたい。いつか姉妹すらも漫画の為に退場させられてしまうのではないかと。

だから子供が欲しいのだ。母親への復讐の為に。
日下部親子の物語を読むと『うちの三姉妹』はこうであって欲しくないと強く思ってしまう(笑)
まあそんなことは無いと思うが、、、何があるか分からないのが物語の世界なのだから。


そんな日和の復讐に巻き込まれた市松だが、その思いもひっくるめ出産記録を撮っていく姿にはある種の感動すら覚えてしまう。
はたして二人の行く末はどうなるのか?ゆっくりと見守っていきたい。






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