「FYQD」氏が一人で開発した ハイクオリティFPSゲーム「Bright Memory: Infinite」 〜売上げ実績の裏側に迫る〜
中国の個人開発者「FYQD」氏が一人で作り上げたFPSゲーム「Bright Memory - Episode 1」(以下Episode 1)は、2019年発表以来、「個人開発」、「AAA級グラフィック」として中国国内のみならず日本でも大きな注目を集めた。
先月11月12日、その完全版となる「Bright Memory: Infinite」(以下Infinte)が発売されると、すぐさま売上トップ3位まで上り詰め、全レビューの93%が好評となっている。
実は、当時の「Episode 1」がヒットした直後、中国ゲーム大手のテンセントや西山居、その他多くの投資会社から、次々と「FYQD」氏に他ゲームへの協力開発の相談が殺到していたようだ。
しかし、「FYQD」氏はそれによって自分自身の制作能力を再認識し、「Episode 1」を購入したユーザーの期待にしっかり応えたい事を理由に、それらを全て断り「Infinte」の開発に専念していた。
本記事では、最新作「Infinte」のちょっとした制作の裏側を紹介する。
■遊び方を大きく進化:
まず、ゲームのコアとしての遊び方からメスが入った。
「FTQD」氏は特に「コール オブ デューティ」、「デビルメイクライ」を好んでいた。「Episode 1」では、近接攻撃アクションや空中アクションを取り入れ、一定の範囲でのプレイヤーと敵のスタイリッシュなコンポアクションを強調する「デビルメイクライ」のスタイリッシュランクを彷彿させた”ランク評価”も作った。
ところが、実際にプレイしたプレイヤーの動画をみると、ほとんどの人は
近接攻撃アクションを使わず、通常の一人称FPSとしてプレイしていた。
このような現象を向け、コンボアクションの一部削減、ランク評価の削除、バリーシステムを追加、スキルダメージを強化等、プレイヤーの需要に基づいたスキル見直し等の調整を行った。
そして「コア」としての遊び方は「スタイリッシュなコンボアクション」から「スキルの組み合わせと使い方」へと変わった。
そして、「Bright Memory」シリーズでは少し古いシステムの「ステージ制」のゲームとしてデザインされているが、現代ではもっと「自由」に走り回れ、「リニアな進行」が求められていることから、雑魚敵をアクションでスルーできるように調整した。
■背景・ボスをデザイン:
「Infinte」では、とても早い段階で背景のテイストを中国風に決めたようだ。「FYQD」氏は3Dプリレンダー画像が好きで、ゲーム業界に入った後
自然とライティングとコンポジットの勉強をした。
初期の企画段階では、大都会のコンクリートジャングルのような
背景にする予定だったが、都会の構成があまりにも複雑で、ワンマン運転(開発)では短期間での作成は無謀と考え、方向性を転換して古き良き中国テイストの背景とした。
その間、木彫り職人である「FYQD」氏の父親もデザイン作業に加わり、ラスボスを含むモンスターデザインや背景のアートなどを担当した。「FYQD」氏は、「うちのアートディレクターです」と紹介している。
■おわりに:
「Infinte」発売後、高評価ながらも、ストーリーやステージデザイン、リズム、継続性の面では厳しい指摘を受けることもあったが、個人開発のインディーゲーム規模という前提で、他のAAA級ゲームと比べては不公平感は否めない。
少なくとも「Infinte」のクオリティを通じて、中国のゲーム開発者は既に一定以上のゲーム開発スキルを持ち、「ビッグタイトルを作る」という野心を垣間見ることができる。