組織のデザイン活用度の可視化について
どうも、GLOBISでデザイナーをしている田中です。
今回も、棚卸しとして過去に組織内で行ったことについて書こうと思います。(※2020年7月時点)
ここ数年、「デザイン経営」」という言葉をよく聞くようになりました。
海外では経営プロセスの中にデザインが組み込まれていることが多くなっている中で、やっと日本でも経産省から出された「デザイン経営」という文脈で重要性が啓蒙されつつあるのかなー?と思う一方で、そういった流れを取り入れようと思う経営者の方や組織を引率するデザイナーの方がいるのではないでしょうか?
私や、社内のデザイナーもその一人で、実際取り入れようとしても一朝一夕ではいかないのが現実です。
私が所属するGLOBISのデジタルプラットフォーム部門は立ち上がって約3年がたちますが、やっとエンジニア組織になってという状態で、まだまだデザイン領域は浸透していないのでこれからといった感じです。
そのような状態で、デザインを組織に浸透させかつデザイン組織を作りたいと思っていた際に「デザインマネジメント原論」を読んでいて出会ったのが「Design Ladder」です。
では、Design Ladderについて詳しく見て行きましょう。
Design Ladderとはなにか?
「Design Ladder」は、デンマーク・デザインセンター(Danish Design Centre)が企業や組織におけるデザインの活用度を理解するための方法として提唱しているモデルです。
ステップが進むほど、デザインが企業にもたらす価値が大きくなる、としています。※ラダー(ladder):はしご
https://danskdesigncenter.dk/en/design-ladder-four-steps-design-use
出典: Danish Design Centre
デザインマネジメント原論にも記載されている、今回活用した4つのステージについて詳しく見て行きましょう。
Design Ladder~4段階のデザイン成熟度~
ステージ1:デザインの活用なし
デザインは、製品やサービスの開発においてごくわずかな役割を担っている(または、ほとんど担っていない)。
このレベルのデザイン活動では、エンドユーザーのニーズが十分に、または有意義なかたちで活用されていない状態。
ステージ2:スタイルとしてのデザイン
デザインは多くの場合、遅い段階のスタイリングの活動として使用されていて、重要性は低い。つまり、主に反応的な活動(個々の好き嫌いと言った関心の度合いによって判断される)であるため、その影響力や価値は限られている状態。
専門のデザイナーが関与していることもあるが、スタイリングは主に社内的に、または他の部門の専門家によって行われている。
ステージ3:プロセスとしてのデザイン
デザインやイノベーションのプロセスの早期の段階から、組織内でデザインが日常的に活用されている。非常に効果的でアジャイルなデザインプロセスが確立していて、イノベーションプロセス全体に渡るリスクを最小限に抑えている。
この結果、デザインへの投資から大きなリターンを得ている可能性が高い。通常は、デザインのソリューションが社外から提案されていて、学際的なアプローチや方法論を使ってエンドユーザーの具体的な要件に合わせて調整されている。
ステージ4:戦略としてのデザイン
これは最高レベルの成熟度でデザインが組織の欠かせない構成要素となって、あらゆる業務分野のイノベーション戦略に情報をもたらし、その活動を後押ししている。
このような組織では、エグゼクティブレベルでデザイン担当者の意見が代弁されていて、(多くは最高デザイン責任者の責任として)、デザインが事業活動を率いるコアバリューになっている。
さらに、デザインが主な事業目標に整合していて、開発のあらゆる領域、あらゆる段階で重要な役割を果たしている。
といったような4つのステージにわかれています。
なぜ、Design Ladderを活用しようとおもったのか?
「デザイン経営」とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営である。
「デザイン経営宣言」にもあるように、企業がこれからの市場で生き抜くためには戦略的にデザインを組織内に導入する必要があると思ったこと。
そのためには人を集めチームを作り組織化して行かなければならないと思ったことから、それらを行うためにはまず、私達が所属している企業または組織がどのようにデザインを捉え活用しているかを認識する必要があると思ったことから、Design Ladderの活用を提案しました。
また、活用段階だけではデザインにどのような価値があると認識しているかがわからないため、デザイマネジメント原論の第6章にある産業や事業レベルでデザインの価値を評価する4つの段階も同時に活用しました。
デザインの価値モデルについても詳しく見て行きましょう
デザインの価値モデル
今回の使い方が正しい使い方かどうかはなんとも言えませんが、一旦、組織や経営に関わる方々やデザイナーがどういったことをデザインの価値と認識しまた、実現出来ているとおもっているのか?を確認するために活用しました。
実際書籍ではデザインの価値モデルの4つの段階に関してこのように触れています。
1:非デザイン
デザインが活用されていない非デザインの段階で、組織内で意識的なデザイン行動が取られていないことを意味する。
この段階では、デザイン以外の専門領域が機能性と美観を開発し、意思決定を下している。
2:戦術要因としてのデザイン
スタイルや表面的な活動としてのデザインを活用する段階で、最終的な成果の一部に美観を統合する道具としてデザインをとらえるが、もう少し進化すると機能に融合させるための道具となる。
3:プロセス要因としてのデザイン
新しい製品やサービスの開発システムの中核をなす内在的な要素としてデザインを位置付ける。
様々な専門領域の方法論を使用して、アイデアを結合しそ、組織全体に浸透させる。
4:戦略要因としてのデザイン
戦略的差別化を達成する上で欠かせない側面としてデザインをとらえ、斬新かつ画期的なイノベーションを用いて新しい事業モデルを開発し、市場を再定義していく。
この2つのモデルを活用し、デザインの活用レベルを調査しました。
活用レベルの調査方法
■アンケート
調査のやり方として、組織の経営に関わるメンバーを巻き込む必要があり、対面での対話時間を個別または同日確保することがむずかしいことから、Google Formを使ったアンケート形式にしました。
■集計結果のプロットと結果
分析結果の活用方法
この調査で得られた結果や認識と組織の経営に関わるメンバーと現場で活躍するデザイナー間のギャップを元に、どのように組織にデザインを啓蒙していくか?やデザイン組織を作る上でどのような人材が必要か?など文化醸成と採用活動に活かしていきました。
最後に
振り返り時の個人的な考えですがDesign Ladderだけではなく、山田裕嗣 / Yuji Yamadaさんのmediumの記事もかけ合わせで使うとより解像度の高い分析ができたかもしれないなと思いました。
読んでくださった方の中でまだデザインが浸透していない組織にいる場合やデザイン組織を作ろうとしているフェーズの参考としていただけるとうれしいです😊