コストコと送別会の長い一日
有給消化に入ってはや3週間。
顔を合わせる人間は同居人氏とたまに実家の妹、先日は遠くに住む母、そうでなければスーパーの店員さんと半引きこもり生活を送っている。
人間に会う時間が少なくなるとは快適な反面、刺激に乏しい物でもある。
フォロワーさんのゑるはさんからお誘いがあったのは最終出勤の翌日。
どうも職場の人たちでコストコに行くというので一緒にいかがですか?とのことだ。
コストコ……。行ったことがない。コストコ……。アメリカの匂いがする。
是非!と返事をしてコストコツアーに参加させていただくことになった。
メンバーは以下に記す。
・ゑるはさん
前職での私の癒し。しっかり者でいろんなことに気づいている。そしてnoteのフォロー、フォロワーの関係でもある。ワンちゃんが家にいる。
・Nさん
肝っ玉母さんでめちゃくちゃ面倒見がいい。歩くパワースポット。ワンちゃん2匹が家にいる。冷蔵庫が2台ある。
・Mさん
めちゃくちゃいい人。彼女が怒るところが想像できない。家族ぐるみでB'zが好きと言っていたのは意外な一面。猫ちゃんと暮らしていたことがある。
・さざなみ
いつも通りである。コストコツアーに女装して行った。猫が3匹家にいる。
当日のお天気は晴れ。暑すぎず、寒すぎずいい気候だ。
早起きをして現地集合である。
無事故無違反で現地に到着していざ、コストコへ。
ゑるはさんとNさんがコストコ会員なので私とMさんはゲストで入場。
入ってすぐ、目に飛び込むのはでかいカートだ。とにかくでかい。
ホームセンターにあるカートを想像してほしい。あれよりでかい。
「こんなにでかいカートが埋まるほど買い物できるのか?」と思う。
答えはできる。置いてあるものもでかいのだ。
私とMさんはコストコ初体験。「でかいねぇ」「おおきいですね……」と2人で圧倒されながら進む。
コストコにはなんでもある。
思わず「アメリカのコストコなら棺桶くらい売ってそう」と言った。が、実際アメリカのコストコには棺桶と骨壺が売っているらしい。
もう一件カラパイアの記事も出たがどうしても文字化けして貼れない。
生活用品ももちろんでかい。
そしてでかいから一発の値段が高いのだ。
高っ!と思うが冷静に考えるとバラした1個あたりは安いという、計算力がモノを言う世界である。
何を買うにもざっくり脳内のそろばんを弾く。昔少しだけ珠算教室に通っていたが私の算数は小学生と同じくらいだ。単元によっては小学生以下である。
すごい、すごい、高いのか安いのかわからない、とキョロキョロし通しだ。
でかい牛肉の塊、ベーグルの購入単位は12個、いつものスーパーで見る調味料も2、3倍の容量で売られている。
でかい食べ物は素晴らしい、の信念を持つ私も流石に「でかすぎる」と尻込みするほどの単位の違いを感じた。
アメリカ、おそるべし。
どこを見てもでかい商品、そして棚の上のでかい在庫。日本なのに日本じゃないみたいだ。コストコだけ治外法権だったらどうしよう。
そしてコストコではホットドッグを食べるべき、という話を同居人氏から教わっていたのでホットドッグとアイスコーヒーを買った。すごいホットドッグに飲み物がついてくる。そして180円。安い。すごい。飲み物だけなら80円らしい。すごい。トッピングも自分でできる。すごい。なんかよくわからないピクルスのみじん切りもたくさん乗せられる。
平日昼間のコストコは思ったより混雑していたが、とても楽しかった。
コストコを出るときは店員さんがレシートをチェックするそうだ。お兄さんがレシートとカートを交互に見てチェックしていた。
これで何がわかるのだろう、とMさんと首をかしげながら我々はコストコを後にした。
Nさんのお宅にお邪魔して戦利品の分配と精算、そして購入したホットドッグを食べる運びとなった。
全員が車で集合したのでNさんとはぐれないよう出発、と思ったが私が2台目に、そして住所を教わったがナビを見間違えて遠回りをしながらNさんの家に到着。後ろにいたゑるはさんもMさんも本当に申し訳ない。
人のお家にお邪魔することなんて久しぶりだ。とても素敵なお家だった。
犬ちゃんの熱烈なお出迎えを受けた後、ホットドッグを食べる。
大きい。モリモリである。1個で満腹になる。
食後にゑるはさんとMさんが戦利品の分配と精算をしてくれた。
ここまで私は集合して、道を間違え、モリモリご飯を食べて、犬ちゃんと遊んでいる……以上である。
なんだか集団行動ができないのはここなんだろうな、と気づいた一瞬であった。
Nさんがお土産としてミートソースをくれた。後日食べたらとてもおいしかった。お店と錯覚した。
一旦帰宅して荷物を整理し、ファミレスで再集合となった。
ポテトがおいしい。
夜には送別会がある。0.5次会だ。
なんだか私のいない職場の話を聞くが、まだ出勤しているかのように感じる。
あの子はそういうところあるもんな、そこの棚はこうなってたからこうだね、あの辺とあの辺も変わるのか、などただ長期で休んでいるだけかのようだ。
ここにいる人たちと同じように職場を見ることはもうないのだが、手に取るように何が起こっているのか感じられる。
職場のボスであるKさんも合流して小一時間ほど過ごして送別会の会場に向かった。
・Kさん
職場で一番のベテラン。社員より仕事のことを知っている。頭の上がらない社員も多々存在する。というか誰も頭が上がらない。
時には母の如く、時には鬼神の如く仕事をする。ワンちゃんと暮らしている。あとメンタルもフィジカルも強靭。
送別会の会場にはもう人が集まっていた。
平日の夜のせいかお店は混んでいない。
段取りを組んでくれたのは直属の後輩だった。ベジマイトをくれた後輩だ。
20人近くで居酒屋に行ったのにお酒を飲むのは4、5人だった。
ほとんどの人がソフトドリンクで思い思いのことを向かいの人、隣の人と話すというスタイルだ。
主役だから真ん中に、と声をかけてもらったが、せっかくの機会だ。シフトがあまり被らない人や、これからも顔を突き合わせて仕事をする人たちの親睦を深められたらいい、と思って隅っこにいた。
実際は真ん中が落ち着かないだけである。
みんな楽しそうだった。久しぶりにたくさんの人がいる空間に行ったので、最後の方は情報量の多さに目が回る。グルグルしながら食べた揚げパンアイスクリームみたいなのは甘くておいしかった。
些か飲みすぎの人もいたが、無事に送別会も終わった。
送り出される人間は私のほかにもう一人いたので、精算するとき財布を持ってモチャモチャしていたら隣に座ったNさんに「仕舞いな!」とけん制されたりした。
ベジマイトの後輩は締めの挨拶でぐだっていたが、Kさんがうまいこと締めてくれた。流石Kさん。場数が違う。
こうして私の長い一日が終わった。
私の働いていた職場は昼間は主婦の人が多く、夜は学生とフリーターで回すようなところだった。
密かに思い続けていたことがある。
それは主婦の人たちが私を自分の娘であるかのように扱ってくれたことである。
Nさんもゑるはさんも、今回のコストコに誘ってくれたり「またほしい物があったら教えてね!予定合わせてまた行こうね!」と言ってくれた。実母とまではいかずとも、義理の母くらいの甘え許容を感じる。
娘、は言い過ぎなのかもしれないが、どこかにそれぞれの実子に重なる部分があるのだろうか、と思うことがあったのだ。
もしかしたら、自意識過剰な表現だが「未来の自分の娘」を私のどこかに観測しているのかもしれない、と感じる瞬間が確かにあった。
きっと私はあの職場で普遍的に娘だったのだろう。
逆に時々は高校生のバイトの子を産んだことのない子のように感じたこともあった。
その時私は母であり、父でもあっただろう。
私はここで巨大な家族から独り立ちをして、新たな役割を持つだろう。
そして、私の働いた職場の人たちにはまたきっと会うだろう。
先輩でも後輩でも同僚でも親でも娘でもない関係になるだけである。
今後もあの職場に幸多からんことを。
とても楽しい一日だった。
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