課題が見つかれば後はだいぶ楽
各ステークホルダーの深刻な問題が明らかになれば、その後の思考は格段に容易になる。深刻な問題とは、例えば既存の代替手段に10万円などの高額を投じている状況を指す。これは自明のように思われるかもしれないが、多くの場合、プロダクトをリリースしたタイミングで「現時点でその問題にXX円を支払うほどの価値はない」ということに気づく。ここでの「現時点」とは、顕在化した問題を指す。
ペインの深い顕在課題とは、その重要性と緊急性が高いものを指す。
例えば、予防系のプロダクトは潜在課題に焦点を当てているため、お金を支払われにくい傾向がある。つまり、緊急性が低く課題は顕在化してない。
また、ペインが深くない課題ほど、施策がエンタメの方向に進みやすい。エンタメにおいて「その施策が解決する課題は何か?」と問うと、多くの課題はペインが深くないことが分かる。
例えば、成功しているポイ活や推し活サービスは、楽しさや魅力ではなく、ユーザーの顕在課題に刺さっている。売れる理由を突き詰めると、そこには強いペインが見えてくる。課題とお金には相関関係があり、まずは課題の発見が必要だ。地下アイドルにオタクのファンが集まる理由は、彼らが抱える圧倒的な孤独感と自己有用感の欠如などにあり、これは彼らにとって重要性と緊急性の高いペインだ。ペインの感じ方は人それぞれであるため、その人がその課題をどれほど深く感じているのかを捉えることが重要である。
デザイン思考とは、この「当人の目から見る」という部分に重きを置いた思考であると自分は解釈している。ペインの深さは本来、他者の視点からは計り知れないものだからである。故に、デザイナーには共感性や感受性の高さ、インサイトを抽出する能力、洞察力が求められる。
<余談>
顕在化しているペインの深い課題を見つけるとなると、大体のサービスがSaaSソリューションに行き着くのが若干面白くないところでもある。
お金はないが課題の深いとされる領域にいかにメスを入れられるか、本来イノベーションというものはそういったものを指すと感じる。
故に、教育などの領域への事業が生まれづらいので、インパクト投資などの支援がより増えてほしいと感じる。
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