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宇宙よりも遠い場所 南極への旅路 第2回 「刺激」

思わぬ反響

2024年11月6日に初公開した記事である「宇宙よりも遠い場所 南極への旅路 第1回 「現地現物」」の投稿は、今日現在で2.1万ビューと思わぬ反響をいただいた。お読みいただいた方に感謝申し上げたい。「宇宙よりも遠い場所」(以下「よりもい」と呼ぶ)の放送は2018年1月である。既に放送後7年も経っている作品であるものの、わたし個人としては、少しも色褪せていない。そうした思いを持っている同じよりもいファンは多いのではないかと勝手に推測している。

さて、わたしは旅行が趣味だ。日本各地をただ旅するのは、正直飽きてしまった。
それ故に、四国にある88箇所の寺院を巡るお遍路に出たり、全国に400以上ある有人離島制覇にチャレンジしたり、全国の原子力発電所のPR施設めぐりをしたりしている。
そもそも、後者の有人離島制覇のために、「フェリーがない離島もあるし、やっぱり船を操縦できないとダメだよな」と友人と話し、そのまま一級小型船舶操縦士免許を取った。
ただ、そもそも離島にはレンタルボート屋なぞなく、仮にレンタルボートがあったとしても係留できる場所はローカルルールで決まっている現状を後から知った。
そのため、一級小型船舶操縦士免許は、もっぱら海の遊び(オフショアフィッシング)に使っている有り様だ。

「Enjoy」の意味

エピソード1「青春しゃくまんえん」に印象的なシーンがある。
英語の授業中、玉木マリと高橋めぐみがコソコソ話をしているシーンだ。
黒板には「why don't you travel?」と板書してあり、先生がコソコソ話をしていた玉木をたしなめた次の瞬間に、男子生徒が「Enjoy your trip」と教科書の音読をする。

このシーンを見ていてハッとした。
わたしが高校生で、時間と体力だけはあった当時、夜行バスや青春18切符を駆使して、朝から晩まで日本中を旅していた。
アニメ「けいおん!」に登場する1本の電柱を探すために、猛暑のなか、汗だくになって、京都市内をカメラ片手に歩き回り、いまは廃業してしまった京都タワーの地下にあるスーパー銭湯でその汗を流し、そのまま夜行バスで帰京した記憶が蘇る。
前回の記事でも触れたものの、わたしの趣味である「舞台探訪/聖地巡礼」で最も「Enjoy」できる瞬間は、「苦労してたどり着いた先にある”アニメと同じ背景”を見つけた時」だ。それが界隈初たるや、その感動もひとしおである。そうした意味で「Enjoy」は、わたしのなかでは、「刺激」と理解している。

では、高校生だったわたしと大人のわたしが旅している時に感じる「刺激」の差は一体なんなのか。それは、旅の「結果」ではなく「プロセス」を楽しむことに「刺激」を感じているのだと思う。

例を挙げてみよう。有人離島制覇のため、友人と北海道を訪ねていた時だ。北海道には、北方領土を除けば、奥尻島、焼尻島、天売島、利尻島、礼文島の5つの有人離島がある。オンラインミーティングを重ね、綿密に予定を組んだ。そして、順調に奥尻島、天売島、焼尻島と移動している時に、「台風が接近している」という一報が入る。残すは、利尻島と礼文島。
ここで友人と天気予報と睨めっこしつつ、どうするかを議論した。2人で導いた結論は、焼尻島を一便早いフェリーで脱出し、そのままレンタカーを稚内まで飛ばし、すぐに礼文島へ移動して「あえて閉じ込められる」というものだった。これは、礼文島と利尻島のフェリーは風に弱く、よく欠航するため、波高が高くないうちに島へ入ってしまおうという判断だった。案の定、わたしと友人が礼文島に入った次の便から、フェリーは欠航となった。その後、無事に台風が過ぎ去り、利尻島にも立ち寄って帰京できた。
シビアな旅をしていると、こういったトラブルには、たびたび遭遇する。しかし、そうしたトラブルも、旅の「プロセス」に他ならない。そして、そうしたトラブルに対処すること自体も、もはやある種の「刺激」になっている。

強い「刺激」に注意!

さて、南極への旅路だが、まだ出発前にもかかわらず、既に強い「刺激」を多々受けている。
ここで少し簡単に南極への旅するにあたっての出発前準備の流れを説明しよう。詳しくは続編で個別に解説しよう。

1.クルーズ船の予約
国家事業である南極観測隊以外で南極大陸の地を踏むには、主に3つの方法がある。
A.アルゼンチンから船あるいは飛行機
B.チリから船あるいは飛行機
C.オーストラリアから船あるいは飛行機
一般的なのは、アルゼンチンの最も南にあるウィシュアイアから船で南極大陸を目指す方法だ。
わたしも、今回はアルゼンチンを経由して、南極大陸を目指す。

2.クルーズキャンセル保険への加入
南極大陸の地を踏むには「いくら必要なのか」は、コミックマーケット106で発刊予定の本に詳しく書く予定だ。
ただ「相当な費用」を払う必要がある、とだけ言っておきたい。
飛行機の遅延をはじめ、未だ流行している新型コロナウイルス感染症を含めた種々の感染症への罹患等、やむを得ない事情により「渡航できなかった」場合に、その一部を金銭補償するのがクルーズキャンセル保険である。なにせ「相当な費用」を払っている以上、万が一にも、渡航ができないとなると、金銭的にも厳しい。そのために、クルーズキャンセル保険は、加入しておくことをおすすめする。

3.航空券の手配
今回は航空券代を抑えつつ、なるべく快適な空の旅をすべく、海外発券を選択した。
海外発券については、同行者であり、趣味が「特典航空券発券」という @shugonta にお任せした。

4.前金の支払い
クルーズ船を予約すると、まず前金を支払う必要がある。
前金を支払うと、先方から詳しい情報やメディカルフォーム等が送られてくる。

5.残金支払い
クルーズ船出発の約2ヶ月前に、前金を除いた残金を支払う。
これで予約は確定である。

6.海外旅行保険加入
クルーズ船によって対応は異なる可能性があるものの、わたしが予約したクルーズ船は「海外旅行傷害保険加入」は必須であり、その証憑も求められる。
そして、加入するのは「治療・救援費用が無制限(Unlimited)」の「海外旅行傷害保険」に限られる。
裏を返せば、クルーズ船には医師が同乗しているとはいえ、限られる医療資源のなか、治療ができない疾患や傷病が発生した場合は、ヘリでの搬送となり、とんでもない金額を負担する必要があるからだと思われる。

第一の刺激|フライトが盗まれる!?

さて、アルゼンチンのウィシュアイアへ向かうには、首都であるブエノスアイレスで、アルゼンチン航空の国内線へ乗り換える必要がある。
この国内線区間は、海外発券ではなく、Booking.comで個別手配(正確には業務委託先のGotogateを経由)をしていた。
なお、Gotogateが信用できないことは知っていたものの、アルゼンチン航空の直接予約だとイレギュラー対応が発生した時に、英語ではなくスペイン語対応になってしまうため、仕方なくGotogateを利用した。

ただ、ここで早くも強い「刺激」を受けてしまう。

結論から申し上げると、アルゼンチン航空が、大幅なダイヤ変更を行い、往復とも予定していた便での乗り継ぎがまったく不可能となったのである。
まずは、同行者の @shugonta が Booking.com(Gotogate)に電話をかけ、「航空会社都合による無償変更」の依頼をした。
しかし、Gotogateの窓口は、「アルゼンチン航空の規定により、4時間未満の時間変更は、航空会社都合として取り扱わない」と言い放ち、変更に伴う運賃差額を請求してきた。
その後も、Gotogateのインドなまりの英語でのらりくらりと話す窓口と2度やり取りしたものの、埒が明かず、致し方なく、クルーズ船の帰着に間に合わせるべく、請求通りに支払った。
更に悪質なのは、変更前と変更後の時間差が3時間55分だったということだ。

少し遅れて、わたしが同じく、Gotogateの窓口に「航空会社都合による無償変更」の依頼をしたところ、先に述べた対応とは異なり、無償で変更対応となった。
先に払った @shugonta 曰く、運賃差額の96ユーロ(約15000円)が「盗まれた」とのことだった。
つまり、担当者によって対応が異なっていたのである。
もはや、アルゼンチン航空を信用していない我々は、海外発券した航空券も追加費用を払って時間変更し、アルゼンチン・ブエノスアイレスに早めに入る安全策を取った。

そもそも、フライトが3時間55分早まるダイヤ変更を、「航空会社都合による無償変更」の対象外とするのは、スカイチームというアライアンスに所属しているエアラインとしてまったく理解できない。
そして、運賃は日が経つごとに、高くなってくる。
抜本的な対策としては、1年前の運賃が最も安い時期に、(多重予約に引っかかる可能性は否定できないものの)、すべてのブエノスアイレス-ウィシュアイア間の往路、復路の便を、抑えておくのが確実だ。
我々が予約した時に往復約2万5000円だった運賃が、いまや往復約13万円となっている。

まだなにがあるかはわからない。どうなるか、見てみよう。

正直、アルゼンチン航空が全く信用できないため、無事にウィシュアイアにたどり着けるのかが、いま最も不安である。

つづく

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