宇宙よりも遠い場所 南極への旅路 第9回 「トラブルとトラベル」
ふとした気付き
南極クルーズも、すべてのアクティビティが終了し、これよりドレーク海峡を渡り、ウシュアイアへ戻る。昨日のガイドの話では、「かなり揺れる」とのことであり、実際不安だ。しかし、心配しても、避けては通れぬ道である。
この船には89人の乗客が乗っている。うち、6名が日本人である。その皆様とは日本語で話ができるため、内心安心する節がある。正直、6名も日本人の乗客がいること自体に驚いた。詳しくは書かないものの、さまざまなバックグラウンドを持った人たちが乗っている。
そのうちのお一人が「”トラブル”と”トラベル”って似てますよね」と仰っていた。たしかに、旅にトラブルは付き物だ。どれだけ綿密に計画を立てても、どうしようもない事態は、発生しうる。そうした時に「旅に慣れている」と差が出るのだと思う。
転倒、そして医務室
南極クルーズ最大の「トラブル」は、上陸した島の滑る岩場で転倒し、膝と手を打ったことだ。幸いなことに、すぐ近くにドクターがおり、ペンギンの撮影はそこそこに、ゾディアックで船に戻り、医務室へ直行した。
医務室では、ドクターの触診とタイレノール(アセトアミノフェン)の処方を受けた。不幸中の幸いで、防水のズボンと手袋をしていたため、出血はなく、軽いうちみで済んだ。
ただ、一歩間違えると、「骨折」していた可能性もある。南極大陸に上陸する前日のトラブルだったため、最悪上陸できなかった可能性すらある。本当に打ちどころが良かった。
仕事柄、医療に興味があるため、ドクターの触診中も、キョロキョロと周りを見渡していた。AED、除細動、手術台、酸素等があり、軽い外傷の縫合程度であれば、処置ができる様子だった。ただ、見る限りレントゲン等の画像撮影装置はなかった。
船の中で指を挟んだ人を見たが、固定処置がされていており、その程度の処置であれば、可能だということだ。
これより、昼食の前に船長より「8から9メートルの波高」があると説明があったドレーク海峡を3日かけて通過する。非常に厳しい。
ただこれも「トラベル」だ。
Let’s see what happens. I don’t know what happens.
つづく