
コンカフェでボッタクリにあった件
先日、秋葉原のメイドカフェに行きました。最近はコンカフェというらしいですね。
きっかけは、仲のいい外国人がメイド喫茶に強い興味を示したからでした。
上田ピーターというスウェーデンとのハーフで、世界の恋愛事情について研究する学者です。
(バキバキ童貞チャンネルに頻繁に登場していた、元凶・上田ピーター博士。同居していた)
普段はスウェーデンに住んでいる彼が言うには、欧米には「キャバクラ」や「ホスト」「アイドル」といった職業が存在しないそうです。いわゆる「疑似恋愛」を売りにするお仕事が、海外住みからすると珍しいらしい。
日本特有の「疑似恋愛」に興味を示したピーター博士。
「疑似恋愛体験にうってつけなのはメイドカフェだ!」と提案したら、即座に「行きたいです!」と返事がきました。そんなわけで博士と二人で秋葉原に赴きました。
僕は見かけによらずメイドカフェに明るくないため、詳しい知人にLINEでおすすめの店を聞きました。しかし、どの店も行列で入れませんでした。
失望しながら秋葉原の街を歩いていると、可憐なメイド姿で客引きしている女性たちが目につきました。等間隔で立つ彼女たちが、次々に愛想を振り撒いてきます。
そのうちの一人が話しかけてきました。メイド姿にネコミミをつけた女性。マスクで半分顔が隠れていましたが、泉こなたに似て可愛らしい方でした。
正直、この時点で危険な香りがしました。客引きについて行って良かったことが一度もないからです。
しかし有名コンカフェに門前払いをくらい途方に暮れていた我々は、渡りに船とばかりにお誘いにのりました。
その子が胸に掲げているプレートには「1時間/700円〜」と記載されており、その程度なら問題なかろうと判断したのもあります。
彼女はアオイ(仮名)と名乗りました。
アオイ「ありがと〜❤️ボクは実は今日が初日なの〜❤️よろしくねー❤️」
ボクっ娘でした。初出勤と言うけど本当だろうか。みんなにそう言ってるんじゃないか??
アオイ「ボクのお店まで少し歩くね❤️お話できるの嬉しい❤️」
気がかりな点はあれど、女の子との会話が楽しくてそれどころではありませんでした。
先導する猫耳メイドが寂れた場末にどんどん歩を進め、怪しい雑居ビルに吸い込まれた頃には、さすがに二人とも物怖じしてしまいました。
僕らをエレベーターに乗せたメイドは「ボクはエレベーターに乗れない規則なのぉ〜❤️階段ダッシュするから7階で会おっ❤️」といいました。
7階で待っていたら、全力坂でもお目にかかれないような爆速でアオイ氏が駆け上がってきました。この時点でぼくもピーター博士も引いてしまいました。
いざ入店すると、カウンターがL字型に伸びて、その奥にメイドさんが、手前に客の男性が座る形でした。バーの奥には大量の高そうなお酒が並んでいます。ガールズバーに近い感覚です。
メイドがお店の説明を始めます。
アオイ「このお店は、"アニマル"と触れ合えるコンセプトカフェですー。私たちは人間が大好きなアニマルですー。ぜひお話して癒されてくださいー」
これと同じ文章がそのままメニュー表に書いていました。猫耳メイドアオイさんは、これらをできる限り感情を殺して、棒読みで読んでいました。
世界観を提示するという、おそらくコンセプトカフェにおいて最初の段階でつまずいており、本当に初出勤かもしれない、と思いました。
アオイ氏がチャージ料の説明をしてあたふた苦戦している隙に、勝手に冊子状のメニューをめくりました。
そこにはシャンパンのメニューが掲載されていました。
お酒の横に値段が15万円と書いてありました。血の気がサーッと引く。ピーターをみると顔が引きつっていました。
THEボッタクリバーでした。
◆
アオイさんが冊子をめくり、説明します。
アオイ「ボクたちアニマルは人間の言葉を話すと喉が渇いちゃうにゃん❤️だから"エサ"がほしいにゃん」
アオイ「この5000円とか8000円のシャンパンなら1時間は話せるにゃ」
といってシャンパンを指さしました。
シャンパンは様々な種類があり、5000円や8000円のものもありました。最高額が15万円。
また「冒険録を聞く」というオプションが1000円でした。冒険録を聞く??
いきなりの高額請求によく分からないメニューがあったため、堪らずアオイ氏に尋ねました。
ぐんぴぃ「え、冒険録ってなんですか??」
ピーター「ちょっと高い感じシマスネ…」
するとアオイ氏の表情がビタッと固まり、押し黙りました。
どうしたんだ??と思ったのも束の間、彼女の目から一筋の涙が流れました。泣いているのです。
どういうことだ…??
本当に初日勤務で、ぼったくりに加担することにまだ良心の呵責があるのか。ならばこの娘はまだ戻ってこれる。そんなことを考えました。
「なぜ泣いているのですか?」と話を聞くと。
研修を受けてないので何を言っていいか分からず、テンパって泣いてしまったらしいです。
ぼったくりコンカフェって研修ないんだ!!
猫耳メイドアオイが泣いてしまうので、あれこれ詮索するのはよして、一番安いメニューを頼みました。
一緒にいったピーター博士は、泣いているメイドより隣の男性客に気を取られていました。
彼は童貞についての研究をしており、疑似恋愛に絡め取られる男に興味が湧くようでした。
横を見ると、メイドと楽しく会話するおじさんがいました。白髪気味の頭に丸眼鏡で、お酒を飲んで赤ら顔の、ぐんぴぃを30年老けさせたような見た目でした。
耳を澄まさなくても大音量で喚いているので、会話の内容が聞こえてきました。
おじさん「お前の住んでる駅はな、イオンモールのためにある駅だ!!!!!イオンしかねえじゃねえか!!!ひひひ」
キツネ耳メイド「そーなのー。イオンしかないのー」
どうやらキツネ耳メイドさんの最寄駅に対してマウントを取っているようです。女性は流しているようでした。
キツネ耳メイドは女子レスラーぐらいガタイがいい巨人でした。
彼女の右手にはシャンパンの瓶が掴まれていました。おじさんが彼女に奢ってあげたのでしょう。
次の瞬間、巨人メイドは瓶に直接 口をつける。シャンパンをラッパ飲みしはじめました。喉を鳴らして高級酒を胃に流す姿はヒールレスラーそのものでした。
巨体「これ(シャンパン)残すと怒られるからさー。あ、次なに頼むー?」
けろりとした顔で次の"エサ"を催促していました。
おじさんが大枚をはたいて買った超高級シャンパン、命のメタファーのような酒を、巨人にラッパ飲みでグビグビいかれる。疑似恋愛 搾取の風刺画のような瞬間でした。
◆
なんだかんだあって、そこそこの額を払って退店。ピーターには、変なコンカフェに連れて行ったことを謝罪しました。せっかく日本に来たのに、ひどいところにきてしまったと。
しかし、ピーターの反応は意外で、とても喜んでいました。そういえばラッパ飲みメイドを見るピーター博士の眼は輝いていました。
「シャンパの ラッパ飲みメイドの姿は、一生忘れないよ。いいものをみた」と喜んでいました。変人でよかった。
ピーターとは他にもアイドルのイベントに行ったり、さまざまな知見を得ました。また書きます。ではまた。おわり。
いいなと思ったら応援しよう!
