ぐん税ニュースレター vol.37 page05 -税理士受験ノート-
今回は、来年度の税制改正に向けた各省の要望の中から少し気になった点を2つほど紹介したいと思います。
1.「賃上げ促進税制」についての期限の延長や内容の拡充
賃上げ促進税制とは青色申告書を提出している中小企業者等が、一定の要件を満たした上で、前年度より給与等の支給額を増加させた場合、その増加額の一部を法人税(個人事業主は所得税)から税額控除できる制度です。
現在、賃上げ促進税制は令和4年4月1日から令和6年3月31日までの間に開始する事業年度が適用時期だったため、実質令和6年3月31日までが期限となっていました。しかし、経済産業省からの要望では、令和6年3月31日までの期限を大幅に延長することを求めています。また、中小企業については、給与の増加分のうち控除額の上限を超えた分を翌年度以降に繰り越すことができるよう求めています。
制度について
賃上げ促進税制は雇用者の賃金を上げたり教育訓練費に投資したりすると、その額に応じて法人税の税額が控除され、節税効果が見込める制度です。大企業と中小企業で要件が異なりますが、令和4年度の税制改正で主に上乗せ部分の要件が緩和され最大控除率が増加しました。その際の改正内容は以下です。
大企業の場合
増額幅が2%→3%となっていますが、要件対象が新規雇用者から継続雇用者に変更されています。そして上乗せ要件に4%以上の増加が加わり、最大控除額が30%となりました。
中小企業の場合
中小企業の場合、要件の対象となっているのは雇用者全体です。上乗せ要件について、2つとも満たす必要がありましたが、それぞれで満たせばそれぞれの判定で控除され、いずれも満たせば最大40%の控除となります。
昨今の物価高を反映して、賃上げを迫られている企業が多いと思いますが、こうした税制のご活用もご検討ください。
また教育訓練費も対象ですので、社員のスキルアップも見込めます。
こうした賃上げや投資については先月のニュースレターで掲載した業務改善助成金というものもありますので、ご参考まで。
経済産業省では、賃上げ促進税制措置の期間の延長と中堅・中小企業については繰越控除措置を創設するよう要望しています。また仕事と子育ての両立、女性活躍支援に取り組む企業に対しての上乗せ措置も求めています。
2.会食等の交際費について1人当たりの上限金額の引き上げ
現行の上限額
会計上の利益と法人税額の算定における利益は費用の扱いの違いにより異なりますが、交際費、とくに接待に使う飲食費については損金に算入できる金額は大企業で費用のうちの50%、中小企業では同じく費用のうち50%または費用のうち800万円までを損金として算入することができます。会社の規模的に多くの中小企業は800万円までの損金算入を選ぶのではないでしょうか。個人事業主の場合ですと全額損金に算入することができます。
1人あたりの接待飲食費
その飲食費ですが、現在は1人あたり5,000円以下であれば、税務上全額損金として処理することができます。もし5,000円を超えた場合は、超えた金額だけではなく、全額が交際費として取り扱われてしまい、損金不算入となってしまう部分が出てくる可能性があります。
そのため、厚生労働省は法人税の算定の際に、企業が行う会食などの交際費を税務上認められる経費として算入できる措置について、近年の物価上昇を考慮し1人当たり1回5,000円以下となっている上限の引き上げを求めています。
損金として認められるには
領収書を用意するだけでは損金として処理することはできません。
以下の内容を領収書に記載するようご注意ください。
・飲食等をした年月日
・飲食等に参加した取引先名と氏名、関係
・参加した人数
・金額と利用した飲食店等の名称と所在地
・その他参考事項
交際費については税制改正が行われたり、税務調査で指摘されたりすることもありますので国税庁のウェブサイトで最新の情報をチェックするようにしましょう。
このほかにも物価上昇に伴い、来年の税制改正が出てくるのではないかなと思います。また、気になる記事等を見つけ次第、共有していければと思います。
業務部 佐藤