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桜島の麓で
鹿児島旅行の始まりは、残念ながら雨だった。晴れていれば、桜島の美しい姿が見えたはずだが、初日はその姿をなかなか見せてくれなかった。しかし二日目、桜島に上陸したとき、雲が時折切れ、その瞬間に桜島の壮大な全景が目の前に広がった。
活火山である桜島は、鹿児島市街地から見える距離にあり、常に噴煙を上げている。その姿は、自然の壮大さを物語っている。
桜島の活発な噴火活動は、爆発的な噴火があれば周囲数十キロに空振をもたらすほどだ。しかし、この地で暮らす鹿児島の人々は、爆発的な噴火に驚くことなく、風向きによる降灰を面倒くさがる程度で、すっかり慣れっ子になっている。
桜島の麓で繰り広げられる日常は、旅行者から見れば、火山の息吹を背にした大胆な生活実験のようにも見える。雨に煙る桜島を見つめながら、わずかな時間だったが、その独特な風景と地元の人々の生活に思いを馳せることができた。
このように活発な火山のそばに都市がある例は珍しい。興味を持って調べてみると、イタリアのシチリアにカターニャ市があり、そのすぐそばにエトナ山があることを知った。
カターニャ市の歴史はエトナ山と深く関わっている。紀元前から存在するこの街は、古代ギリシャ時代に設立され、その後ローマ、ビザンチン、アラブ、ノルマンといった多様な支配者の手に渡った。これらの異なる文化はカターニャの建築、言語、食文化に独特の多様性をもたらし、街のアイデンティティを形成してきた。
1669年のエトナ山の大噴火は街の大部分を破壊したが、この災害を機にカターニャはバロック様式の華やかな建築で再建され、今日見られる美しい市街の景観が生まれた。
そして、エトナ山は農業、特にブドウ栽培において重要な役割を果たしており、この地域の経済と文化に貢献している。エトナ山の麓で育つブドウから造られるワインは、その独特な土壌のおかげで世界的にも高く評価されている。
桜島も1914年の大噴火では多くの被害をもたらし、島と大隅半島が繋がるなど地形を大きく変えた。桜島はエトナ山同様に、桜島大根や桜島みかんといった農業への恵みをもたらしており、火山活動による温泉も観光資源となっている。
火山は破壊だけでなく恵みももたらす。いつかシチリアに行って、エトナ山も自分の目で見てみたいものだ。