自動車の広告表示について
2022.2.1
自動車(クルマ)の広告表示について、よく使用されるものの留意点などをまとめました。広告やWebサイトなどの制作では原稿が提供されることが多いですが、知っておいてもよいかと思います。
※本記事は新車に関するものになり、中古車は含まれません。二輪自動車(バイク)も含まれません。
最上級を意味する用語の表示:最高、No.1など
商品の宣伝文句でよく使用されている「1位」や「No.1」などの用語。最上級を意味する用語ですが、使用するには「客観的根拠を記載する」という条件を満たす必要があります。
「自動車公正競争規約集(一般社団法人自動車公正取引協議会)」 には、以下のように記載があります。
第 4 条 事業者は、新車の表示に関し、次の各号に掲げる用語について表示する場合は、それぞれ当該各号の定める基準に従い、施行規則で定めるところによるものとする。
<規約>
(1) 最上級を意味する用語
「首位」、「第1位」、「トップ」、「最高」、「最長」、「BIGGEST」その他の最上級を意味する用語を表示する場合は、その裏付けとなる客観的数値等又は根拠を付記すること。
<施行規則>
第12条 規約第4条第1号の「最上級を意味する用語」には、純然たる序列のみでなく、単なる通俗的な慣用語及び流行語を含むものとする。
【出典】一般社団法人全国公正取引協議会連合会ホームページ。
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
また、用語に関して、施行規則に ”「最上級を意味する用語」には、純然たる序列のみでなく、単なる通俗的な慣用語及び流行語を含むものとする。” とあります。「最上級」と受け止められる用語にはこの規約が適用されることになります。
客観的根拠とは
では、客観的根拠とはどんなものか。消費者庁ホームページには根拠を示す資料と認められる条件が記載されています。
商品・サービスの効果、性能に関する表示の裏付けになる「合理的な根拠を示す資料」であると認められるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
1.提出資料が客観的に実証された内容のものであること(次のいずれかに該当するものです。)。
・試験・調査によって得られた結果
・専門家、専門家団体若しくは専門機関の見解又は学術文献
2.表示された効果、性能と提出資料によって実証された内容が適切に対応していること
【出典】消費者庁ページ。表示に関するQ&A。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/
この条件を満たした根拠を示さなければならず、「宣伝文句にちょうど良いのでなんとなく」で使用することはできません。具体的な根拠がない場合は不当表示とみなされ、景品表示法違反となります。
【参照】
消費者庁:よくわかる景品表示法と公正競争規約(平成30年3月改訂)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_180320_0001.pdf
消費者庁:事例でわかる景品表示法(平成28年7月改訂)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/pdf/fair_labeling_160801_0001.pdf
ランキング表示:第1位、No.2 など
販売台数などを表すときに、「第○位」や「No.○」などのランキング表示を用いることがあります。ランキング表示にも「自動車公正競争規約集(一般社団法人自動車公正取引協議会)」 に規約が設けられています。
第 5 条 事業者は、新車の表示に関し、次の各号に掲げる事項について表示する場合は、それぞれ当該各号の定める基準に従い、施行規則で定めるところによるものとする。
<規約>
(1) ランキング表示
生産台数、登録台数等のランキング表示を行う場合は、過去 1 か月以上その順位を確保しているときに限るものとし、その確保期間を明りょうに表示すること。
<施行規則>
第 16 条 規約第 5 条第 1 号の「ランキング表示」において、数値や根拠などの条件を同じくするものが存在するときは、自社又は他社に条件を同じくするものが存在する旨を明瞭に表示するものとする。
2 数値や根拠などの条件を比較すべきものが他社に存在しない場合は、規約第5条第1号の「ランキング表示」を行ってはならないものとする。
【出典】社団法人全国公正取引協議会連合会ホームページ。
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
ランキング表示ができるのは、過去 1 か月以上その順位を確保しているときに限る。また、その順位の確認期間を明りょうに表示する必要があります。
自社の他商品や他社に同じ条件(ランキングで同じ順位なるもの)のものが存在する場合は、その旨を表示しなければなりません。
また、施行規約に記載がある通り、数値や根拠などの条件を比較すべきものが存在しない場合はランキング表示をすることができません。
【参照】
一般社団法人自動車公正取引協議会ホームページ:広告表示に関するFAQ
https://www.aftc.or.jp/contents/am/kiyaku/faq.html
一般社団法人自動車公正取引協議会ホームページ:特定事項(燃費、運転支援機能、No.1表示など)「No.1に関する表示方法」
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kokokuFaq/new/20/new_20_011.pdf
新発売、NEW の表示
新型車が発売されたときに使用する「新発売」、「NEW」、「新登場」、「新型」など、新しい商品を意味する用語は、使用できる期間が発表から12か月間と決まっています。
が、「ただし、モデルチェンジ、マイナーチェンジ等新型車の発表が予定される以前の6か月間は使用しないものとする。」とあるので、新型車発表後12か月以内にモデルチェンジやマイナーチェンジが予定されている場合は使用期間が変わってきます。例えば、新型車発表から8か月後にマイナーチェンジがある場合は使用できるのは2か月間となります。
状況により使用できる期間が変わるので、忘れないよう覚え書きなどしておくのがよさそうです。
第 4 条 事業者は、新車の表示に関し、次の各号に掲げる用語について表示する場合は、それぞれ当該各号の定める基準に従い、施行規則で定めるところによるものとする。
<規約>
(4)「新発売」等の用語
「新発売」、「新型登場」等の商品が新しくなったことを意味する用語を新聞、雑誌、テレビ、ラジオ及びインターネット等を用いて表示する場合は、施行規則で定めるところにより表示すること。
<施行規則>
第15条 規約第4条第4号の「新発売」「新型登場」等の用語を使用できる期間は、新型車発表後12か月とする。ただし、モデルチェンジ、マイナーチェンジ等新型車の発表が予定される以前の6か月間は使用しないものとする。
【出典】社団法人全国公正取引協議会連合会ホームページ。
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
燃料消費率の表示
燃料消費率の表示に使用できるデータ(数値)は、公式テスト値(10・15 モード燃費や JC08 モード燃費)または公的第三者によるテスト値に限られ、その旨を表示しなければなりません。あわせて、数値は一定の試験条件の下での数値であり、実際の走行条件等により異なる旨を明瞭に表示することが定められています。
燃費の値とテストに関する記載は近接した箇所に一体として視認できるよう表示し、文字の大きさは8ポイント以上の大きさで表示、とされています。
第 5 条 事業者は、新車の表示に関し、次の各号に掲げる事項について表示する場合は、それぞれ当該各号の定める基準に従い、施行規則で定めるところによるものとする。
<規約>
(4) 燃料消費率
燃費の表示に使用できるデータは、公式テスト値又は公的第三者によるテスト値に限るものとし、必ずその旨を付記するものとする。併せて、当該値は、一定の試験条件下での数値であり、実際の走行条件等により異なる旨を明りょうに表示すること。
<施行規則>
第19条 規約第5条第4号の「燃料消費率」とは、ガソリン等の燃料を使用する自動車の場合は、燃料1リットル当たりの走行距離をいい、電気自動車の場合は、一充電走行距離及び交流電力消費率をいう。
2 規約第 5 条第 4 号の「公式テスト値」とは、道路運送車両法第 75 条の規定に基づき国土交通大臣の指定を受けた数値をいう。
3 規約第 5 条第 4 号の「公的第三者によるテスト値」とは米国環境保護局(EPA)等のテスト結果に基づく数値をいう。ただし、国内市販車の仕様と異なるものを使用したテスト結果である場合にはその旨を付記するものとし、この場合にはアイキャッチャー又はメインのキャッチフレーズとして用いてはならないものとする。
4 ラジオ広告において燃料消費率を表示する場合は、規約第 5 条第 4 号に定める「当該値は、一定の試験条件下での数値であり、実際の走行条件等により異なる旨」の表示を省略することができるものとする。
【出典】社団法人全国公正取引協議会連合会ホームページ。
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
留意点
一般社団法人自動車公正取引協議会のホームページに燃費表示に関して、以下の留意点が掲載されています。
<燃費を表示する際の留意点>
◆ 燃費を表示する場合は、公式テスト値(10・15 モード燃費、JC08 モード燃費)又は公的第三者によるテスト値を表示し、かつ、「同テスト値である旨」をその数値の直近に、かつ、明瞭に表示すること
◆ 表示した燃費(公式テスト値又は公的第三者によるテスト値)は、「一定の試験条件の下での数値であり、走行条件等により異なる旨」の付記説明を、燃費表示との関連が明確になるよう、直近、かつ、明瞭に表示すること
◆ 広告スペース等の関係で、止むを得ず、付記説明を燃費の表示と離れた場所に表示する場合は、燃費に関する付記説明であることが明確に分かるよう表示すること
◆ 公式テスト値を基に、「○○㎞走れる!」など、誰でもその表示した燃費どおりに一般的に走ることができるかのように誤認されるおそれのある表示は行わないこと
◆ 特定の車両の燃費を用いて算出した「走行可能距離」、「ガソリン代・ガソリン消費量」などの表示は、計算値どおりになるかのように誤認されるおそれが強いため、行わないこと
【出典】一般社団法人自動車公正取引協議会ホームページ
燃費の表示方法と留意点
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kokokuFaq/new/20/new_20_005.pdf
また、「低燃費」というキャッチコピーを使用することは可能ですが、当該車両を特定した上で、低燃費であることの客観的根拠として、当該車両の公式テスト値と燃費基準早期達成車である旨等を表示する必要があります。
燃費表示の具体例などは以下の参照ページから確認することができます。
【参照】一般社団法人自動車公正取引協議会ホームページ
「燃費やASV技術の明瞭な表示に関する規約運用の考え方」の策定について
https://www.aftc.or.jp/content/files/pdf/aftc_info/aftcinfo_201311_asv.pdf
燃費の表示方法と留意点
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kokokuFaq/new/20/new_20_005.pdf
「低燃費である旨」の表示
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kokokuFaq/new/20/new_20_001.pdf
自社等による燃費テスト結果の表示
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kokokuFaq/new/20/new_20_007.pdf
特別仕様車
特別仕様車の表示には、特別仕様の内容や限定台数(ある場合)、発売期間(ある場合)の表示が必要です。
第 5 条 事業者は、新車の表示に関し、次の各号に掲げる事項について表示する場合は、それぞれ当該各号の定める基準に従い、施行規則で定めるところによるものとする。
<規約>
(11) 特別仕様車等
特別仕様車等の表示を行う場合は、特別仕様の内容と販売台数等に限定がある場合にあってはその内容を、施行規則に定めるところにより表示すること。
<施行規則>
第22条 規約第5条第11号の特別仕様車には、次の事項を表示するものとする。
(1) 追加など変更された仕様や装備品等の内容
(2) 販売台数、販売期間、販売地域に限定が伴う場合には、その旨の表示
【出典】社団法人全国公正取引協議会連合会ホームページ。
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
先進安全自動車(ASV)の表示
ブレーキ踏み間違え防止などの安全運転サポート機能に関しては、文字のサイズは最低12ポイント以上や「止まる」など断定的な用語は使用しないなどがポイントになります。
■ASV 技術に関する説明等は
①強調表示に近接した箇所に一体として視認できるよう表示すること
②最低でも12ポイント以上の大きさで表示すること
③強調表示と同一、または著しく異ならない程度の大きさで表示すること(最低でも、強調表示の3分の1(最低12ポイント)以上
④文字間及び行間の余白を空けるとともに、背景の色とは対照的な色の組み合わせにすること等により、視認性を確保すること
■「止まる」等の断定的な用語や「自動ブレーキ」、「自動でブレーキが作動」等の用語を使用する場合は安全運転や衝突被害の軽減を「支援(サポート)する機能である」旨を表示すること
【出典】一般社団法人自動車公正取引協議会ホームページ
「燃費やASV技術の明瞭な表示に関する規約運用の考え方」の策定について
https://www.aftc.or.jp/content/files/pdf/aftc_info/aftcinfo_201311_asv.pdf
迷ったときの参照ページ
広告表示に関して迷ったときは、まずはこちらのページなどで確認することができます。
●消費者庁ホームページ
表示対策
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/
景品表示法
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/
景品表示法関係ガイドライン等
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/guideline/
公正競争規約
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/fair_competition_code/
表示に関するQ&A
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/
●一般社団法人全国公正取引協議会連合会
https://www.jfftc.org/index.html
公正競争規約とは
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_hyoji.html
表示に関する公正競争規約条文
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/kiyaku_hyoji.html
自動車業における表示に関する公正競争規約及び同施行規則
https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/automobile.pdf
●一般社団法人自動車公正取引協議会
https://www.aftc.or.jp/index.html
自動車公正競争規約集
https://www.aftc.or.jp/content/files/am/kiyaku/kiyaku_4.pdf
広告表示に関するFAQ
https://www.aftc.or.jp/contents/am/kiyaku/faq.html
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【注意】
掲載内容は、独自に調査したものになります。最新の情報と異なる場合もございますので公式サイトにて必ずご確認ください。