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GW杯vol.5決勝戦 Rustal対白使人 観戦記事「歴史を変える男」

 本大会「ガンダムウォー杯」は、禁止カードのリストや「サイコミュ」などの特殊効果に関するルール、「キャラクター1枚制限」など、テーマとなるエキスパンションの当時の状況に合わせたルールを再現するように設けられており、いうなれば「当時のガンダムウォーの環境を再現し、もう一度遊ぼう」というコンセプトになっている。
 プレイヤーたちは一度通ったその道に対して、過去に結果を残したリストを手にして郷愁に浸る者もいれば、当時のやり残しを清算するため、宿敵たちに逆襲に行く者もいる。
 他にも、まだ見ぬ意欲作に取り組み、歴史に新たな爪痕を残そうとするチャレンジャーな者までいた。

 しかし、いくら当時と比べてカードゲームの研究が進んでいること、人数や規模の小さいイベントではあることを踏まえたとしても、なかなか過去のTierデッキ達にTier下位のデッキやオリジナルの構築で勝つというのは容易ではない。
 やはり過去の再現イベントであるこの「ガンダムウォー杯」の大会結果も、過去のイベントの結果を踏襲するような結果に・・・

歴代「ガンダムウォー杯」優勝デッキ
GW杯vol.1:ラゴゥシュート
GW杯vol.2:緑単焼きウィニー
GW杯vol.3:アフリカロック
GW杯vol.4:白単重速

 全くなっていなかった。

 「GWを真剣に、でも自由に楽しもう!」という空気がしっかり反映されすぎた結果か、過去四度のイベントいずれも当時のトップTierデッキでないデッキが優勝し、メタゲームも当時の再現とは程遠い「自由な校風」というような装いとなっている。

『好きなデッキを使うのもいいし、活躍するのも面白いけど、とはいっても当時の強いデッキが「強い」ってことが証明されないのは嫌なんだよね。』

 「Rustal」はイベントの前日、そう前置きした上で決意を語った。

『だから今回は使いたいデッキじゃなく、当時の最強デッキが「強い」ってことを証明するために結果を残したデッキを持っていくよ!』

 Rustalはこのイベントに対して、歴史を修正しようとする者たちの野望を打ち砕くべく、歴史の番人としてイベントに臨んでいた。

 その決意にこたえるかのように・・・いや、そもそもが当時のトップメタ『シャア専用デッキ』にプレイヤーとしての腕前も随一のRustalが乗っているのだ。
 それが「当然」であるようにスイスラウンド、そしてシングルエリミネーションを勝ち抜き、当時の歴史を再現するために決勝の舞台に舞い降りた。

乗り手も一流、デッキも最強

 対する相手は・・・やはり、というべきか、まさか、というべきか。
 GW杯5回の開催で5度の決勝卓、当時の環境ではメタ上に存在しなかった『白単』を使い幾度も過去の歴史を塗り替えてきたGW杯最強プレイヤー「白使人」。
 歴史を変える者と、歴史を守る者、5度目の歴史の修正を賭けたゲームが始まった。

Game1
 
先手はスイスラウンド予選上位となったRustalからのスタート。
 緑基本Gを置いてからの「ドップ」。そして「ギレン・ザビ」。

緑ウィニーの象徴
シャアの次点に置きたいキャラ

 流れるように「ジオニズム」まで設置したあとは、「ギレン」の能力でGをユニット化してダメージを与えてからのターンエンド。

 手札を4枚投下して3点のダメージを入れる緑ウィニーらしい電光石火のスタートを切った。
 初手で「シャア」を設置、というベストム―ブにこそならなかったものの、まずまずの展開といえるのではないだろうか。

 対する白使人は白基本Gを置いてターンエンド。
 ただでさえ重いデッキな上に「ギレン」の枷がかけられている状態とあっては、かなり長いターン、耐えの時間を過ごすことになるだろう。

 Rustalは2枚目のGを置いて「ニューヤーク」、そして「ギレン」の能力でG2枚をユニット化しての5点アタック。

 クロック、足止め、両方の面で非常に「ギレン」がいい働きをしている。

 白使人は「ジオニズム」のユニットプレイ制限が外れた2ターン目でようやくの「L-3 X18999コロニー」を投下。
 片面だけでも時間を稼ぐしかないというところ。

 Rustalは「サイド3」を投下後、少考した後に「ニューヤーク」をコストに「赤い彗星のシャア」!

 本国からキーカードである「シャア・アズナブル」と、「シャア専用リック・ドム」をセットで場に出し、「ギレン」の能力でユニット化したGと両面で攻撃!

ゲルググの次に強いシャア専用機

 足止めをしてからのエンジン全開で攻めに転じていく。

 返すターン、白使人が三枚目のGを置いたところにもカットイン「女スパイ潜入」。

 主導権は意地でも渡さないという念の入れよう。
    白使人はこのターンもGを置いただけでパスするのみに留まった。

  返すターンにまた、少考するRustal。
  既に、ここから終幕までのストーリーの計算が始まっているのだろう。
 一度目の過去で幾度も繰り返してきたように、その歴史を再びなぞるように。
 「リック・ドム」とユニット化したGで攻撃したところで・・・

 白使人のお家芸「ヴォワチュール・リュミエール」からの「デストロイガンダム」召喚ブロックによって「シャア」と「リック・ドム」、一気に2枚のカードを失い「シャア」の効果によって「コロニー」までもが道連れとなる。

 手厳しい返し技をもらったにも関わらず、なおも冷静な声のRustal。
   要の「シャア」を失ってまでも、未だ計算していた勝利への道筋からは外れていないか。

 当座の危機はやり過ごしたものの白使人は「ジオニズム」によってGを伸ばすことが出来ず(注1)足踏みをしてターンを返す白使人。

 Rustalはお得意の「シャア」による高打点で攻撃する事こそかなわなかったが、別のルートからの勝利を目指す。
 緑ウィニーの伝家の宝刀「制圧作戦」をプレイ。

緑の原点にして頂点

 『タイムリミット』があるこのマッチ、1ターンの猶予を得られるのは非常に大きい。
 「ギレン」で再びユニット化したGで両面から攻め立てる。

 Gに対する攻めとGによる攻め、「二重のG攻め」に遭いつづける白使人は、ここもただGを置いてターンを返すのみとなる。

 続くターンのRustal。いよいよ終幕が見えてきたか、「ギレン」が乗った「ドップ」までも攻撃に向かわせ、クロックをさらに早めていく。

 ようやくの4枚目のGにたどり着いた白使人。
  ここに至って非常に重く感じる資源コストを支払いつつ「ストライクノワール」をプレイしてエンドする。

 ターンをもらったRustalは戦闘に入る前に「ノワール」のテキスト、そして白使人の本国の枚数を確認。

 『15枚です』。答える白使人。

 Rustalは長考の後、「ギレン」の乗る「ドップ」を配備エリアに残したまま両面からGだけを攻撃に向かわせる。
 それに対し白使人は「ノワール」で一方をブロックし、逆サイドの攻撃を無視しつつ、手札の「ニュートロンジャマ―キャンセラー」を切って「ドップ」と「ギレン」を葬る。

 残り枚数少ない本国、攻めに来ている片側の2点ダメージを受けてまで「ギレン」を除去した理由は次のターン明確になる。

 白使人のターン。「中東国の支援」「ハッキング」とドローソースを連打してまで探す起死回生カードといえば・・・

 当然、白の代名詞「フリーダムガンダム(ハイマットモード)」。
 厄介なブロッカーを生み出す「ギレン」も処理した今、道をふさぐブロッカーは存在しない。

 本国を一気に回復していくこのカードによって残り僅かだった本国が積み上がっていくのを眺め続け・・・ついにはRustalは投了を宣言した。

白使人1-0


 5回のイベントで5回の決勝進出。
 それがいかに驚異的な偉業かというのは、ガンダムウォーに明るくない人間でも理解できるだろう。
 しかし、更に驚嘆すべきことは、その全てを『白単』デッキだけを使って成し遂げているということだ。
 どんな白単に不利なカードプールであろうと、どんな環境であろうと、ただ、自分が使いたいデッキを持ち込み、そして結果を出す。
 
 それは、カードゲームプレイヤーにとって理想的な姿であり・・・
 同時に屈辱的なことでもあった。
 
 自分たちが生きた時代の人間全員で作り上げたトップメタデッキ。
 その強固な構築が、一人の人間が考えた構築に屈していいはずがない。
 
 この時代を生きた人間たちのプライドを背負い、Rustalは意地を見せる。

Game2

 先ほどのゲームではキーカードの「シャア」の着地が遅れ、あと一歩詰め切れなかったRustalだったが、
 Game2では1ターン目から緑G、「サイド3」「ドップ」「ジオニズム」そして「シャア・アズナブル」と手札5枚をダンプするロケットスタートを決める。

1ターン目とは思えない盤面

 返すターン、白基本Gを置くのみで返す白使人に、2ターン目に「シャア」のテキストを起動し、「シャア専用ゲルググ」で強襲していく。

シャア専用機強い部門ランキング第1位

 テキスト起動で3点、部隊戦闘で6点。2ターン目にして二桁に届こうかというビッグクロックを作り出すRustal。
 苦い表情の白使人は、続くターンもGを置くのみでターンを返す。

 次ターンの戦闘では、RustalはGame1で見た「ヴォワチュール・リュミエール」をケアしてか「ドップ」を配備エリアに置いて単騎「ゲルググ」で攻撃していく。
 先ほどの轍を踏まないように、それながらも最速でのフィニッシュルートをトレースしていく。
 
 ようやく3ターン目、3G目に到達した白使人は「ガンダムアストレイ(バックホーム装備)」を送り出し、「ニュートロンジャマ―キャンセラー」でリロールして攻撃、「ゲルググ」へ対処できるカードを探しに行く。 

優秀なカードだが、片適正が仇となる

 ・・・が、めくれたのは白基本Gと「血のバレンタイン」。
 そのままターンを返す。

 Rustalのターン。
 リロールフェイズ。
 白使人は再び聞きたくないコマンドの名称を告げられる。

押しているときには必殺の一手

 実質的な『追加ターン』を得たのみならず、Rustalは「シャア」の打点をさらに水増しすべく追加のカードをプレイする。

 「マリオン・ウェルチ」。これにより「ゲルググ」のスタッツを7/5/8速攻、強襲、宙間戦闘(2)というスーパーユニットにまで引き上げる。

 たまらず切り札を切る白使人。
 「ヴォワチュール・リュミエール」からの「アカツキ」!

 テキストを使用し、「ゲルググ」にダメージを跳ね返して除去しようとする白使人。   
 だがしかし、「マリオン」によって防御値が増えている状態の相手には、それもかなわず、ついに打つ手がなくなった白使人は投了を宣言した。

 デッキが正しく実力を発揮さえできれば、結果は順当な結果になる。
 そう見せつけるかのような横綱相撲のゲームになった。

Rustal 1-1


 常識外れの歴史を作り続けている白使人がGame1を、定石通りの現実を見せてくれたRustalがGame2を取ったこの決勝戦。
 勝つのは「今」の最強プレイヤー白使人の駆る『白単重速』か、「歴史」での最強デッキ『緑単シャア専用』を駆るRustalか。
 さあ、「正史」と「if」がぶつかり合った、この戦いの終幕を見ていこう。 
 

 Game3

 
渋い声をあげながらもキープを宣言した白使人。
 まずは白基本Gを置いてターンを渡す。

 運命を占うRustalの1ターン目はというと、緑基本G、「ニューヤーク」、「シャア専用ザクⅡ」と並べてターンエンド。
 今までで一番静かに1T目を終える。

 2ターン目、白使人は「ロゴスの私兵」をヴァリアブルで置き、ターン終了。

 すると返すターンでRustalが動く。
  「赤い彗星のシャア」。

「シャア専用ザクⅡ」を廃棄してからの、再び「シャア専用ザクⅡ」+「シャア・アズナブル」のセット。
 間を置かず即戦闘からの「シャア」のテキスト宣言、「シャア専用ゲルググ」!

 落ち着いた展開になるかに見えた前ターンから、嵐のような猛攻。
 10点のダメージを叩き込み、これこそ史実で最強だったデッキの実力だ、そう言わんばかりの攻撃力を見せつけていく。

 「ヴォワチュール・リュミエール」こそなかったものの、「シャア」に対して何の打つ手もないようなハンドをキープするはずもない。
 白使人は自軍配備フェイズに「アストレイ(バックホーム装備)」を置いてからの「ラクス襲撃」。

 可能であれば相手ターン配備フェイズに打ちたかったであろう対策札を使い、「シャア」を対処していく。 

 一難去ったかに見えた白使人だったが、Rustalの猛攻は止まらない。
 「自軍リロールフェイズ」。
 Rustalの手からコマンドがプレイされる。

※1枚制限です

 3ゲーム連続、三度目となる「制圧作戦」。白使人のゴールテープは更に1ターン向こう側へと移動される。

 さらに自軍攻撃ステップに入ってからの「赤い彗星のシャア」!

 「シャア専用ザクⅡ」を追加コストにしてからの本国を捲って・・・・

デッキの中にシャアがない!

 「何も出ません」
 この重要な局面でなんたるアンラッキー!
 
 Rustalは『相手がシャアへの対策を持っている』ことを当然予想していたし、1ターン前に「シャア」が2枚山に残っていることを確認していた。
 しかし、この1ターンに支払った資源コストの中に「シャア」が全て流れていることまで織り込んで考えるはずもない。

   まるで、白使人に運命が味方しているような展開だが、しかし、不満の声をあげつつもRustalからは諦めの感情は見られない。
 「シャア専用ゲルググ」で3点。
 

 『この環境は、このデッキが最も強いデッキなんだ』

 それを証明するために最善の選択を選び続け、勝ちまでの道筋を再び探し始める。

 白使人も唐突に降ってきた幸運により、窮地は脱したものの、未だ楽な展開ではない。
 再びの3枚目のGを置いて、二枚目の「アストレイ(バックホーム装備)」をロールイン。
 そして攻撃に出撃し、ハンガーに送られるのは三枚目の「アストレイ(バックホーム装備)」と「中東国の支援」。
 「中東国の支援」をすぐさま使い、有効牌を探していく。

 しかし、増えていく手札とは裏腹に確実に白使人の本国は薄くなっている。

 「シャア」が居なくとも、不運に見舞われようとも、デッキを信じて毎ターン最大限に本国を削り続けるRustal。

 「シャア専用リック・ドム」を戦線に追加し、「ゲルググ」で3点。

 白使人も、残り時間が少ない状態でクロックを刻まれながらと、迷いそうなところだが、構わず全力で本国を掘り進め続ける。

 「アカツキ」を手札からキャストし、「アストレイ(バックホーム装備)」で攻撃。本国のカードをハンガーに移していき・・・
 捲れたのは「フリーダムガンダム(ハイマットモード)」。
 出せば勝負が決まる、正にこのゲームのフィニッシャーである。

 ついにクライマックスという様相を呈したこの決勝戦。
 ターンを迎えたRutalから白使人へ本国枚数の確認が入る。
 
 「1、2、3、4・・・10枚です」

 勝利条件を確認したRustal。再度「アカツキ」のテキストを尋ね、テキストを使用されても本国にはダメージが通ることを確認した後、念入りに出撃する部隊の順番を確認する。

 長考の後、出撃。
    順番は「ゲルググ」「ガトル」「リックドム」。部隊戦闘力は6点。
 「アカツキ」のテキストを使う/使わないにかかわらず相手本国には6点のダメージが入り、ターンドローを合わせれば残り本国が3枚。
 そう、これで「ハイマットモード」の資源コストの支払いが不可能になる。
 Rustalが見出した細い細い勝ち筋、見事わたり切ったかに見えたが、ここで白使人から予想外の言葉が発される。

 
「換装、アカツキ(オオワシ装備)」


「やっぱ俺って―」

 飛び出した「アカツキ(オオワシ装備)」が身を挺して本国を守り、Rustalの乾坤一擲の攻撃をやり過ごした白使人。
  返すターンで「フリーダムガンダム(ハイマットモード)」をキャスト、攻撃を通すことで本国を安全圏に脱出し…今回のイベントでもまた、歴史を白く塗り替えることに成功した。

白使人2-1

 史実で華々しい結果を残したデッキが強いということは、確かな事実だ。
 当時の熱心なプレイヤーたちに研磨され、洗練され続けた、言わば集合知の結晶とも言える最適解なのだ。その強さには誰もが疑う余地はないだろう。
 しかし、その影でトップメタに抗い続けた無名のデッキたちも、決してただ、虐げられるばかりの存在ではなかったのだ。
 強力なデッキたちに打ちのめされ続けても、自身のデッキを信じ、牙を研ぎ続け、いつの日か逆襲する機会を伺って雌伏の時間を過ごしてきた。

 このガンダムウォー杯というイベントの歴史は、そうやって雌伏の時を過ごしてきたレジスタンスたちが、その悲願をかなえてきた歴史となっているのかもしれない。

 ガンダムウォー杯vol.5、優勝者は白使人!
 史上初の連覇、おめでとうございます!!

注1:ゲーム進行中、ジオニズムでヴァリアブルカードをGとして置けないと裁定し、進行しましたが、正しくはヴァリアブルとしてプレイ可能でした。


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