そうは言っても
胸の痛みは進化の証
必要なものだったと思えば
っていう話
なぜ人は精神的なダメージを負った時に「肉体的な痛み」を感じるのか?
失恋や近親者の死によって大きな悲しみに襲われた際に
胸が締め付けられるかのような耐えがたい痛みを経験した人もいるはず
こうした精神的なダメージが
「肉体的な痛み」を生み出すメカニズムについて
トロント大学心理学部のジェフ・マクドナルド教授と
ミシガン大学心理学部のイーサン・クロス教授が解説しています
マクドナルド教授によると精神的なダメージが
肉体的な痛みを生み出すというプロセスは
「生存に役立つ」ため進化の過程で発達したとのこと
例えば熱くなっているストーブに手を置いた場合には
脳内のニューロンが活性化して
「何かが大きく間違っている」という信号を送信します
この信号は注意力を乱し間違っていることを
直ちにやめさせるのに非常に適した効果があるそうです
進化の観点から見た場合孤立するというのは最悪に近い状態です
人類の祖先は緊密な社会的関係を構築し
協力し合うことで食料収集や天敵の撃退などを効率化してきました
そして何より孤立している場合は繁殖相手を見つけることができず
「種の保存」が出来なくなる点も問題
こうした要因から人類の祖先には
「孤立を避けた個体ほど生存率が高い」という進化圧が生じたとのこと
クロス教授は2011年に行った研究の中で失恋した被験者40人を対象に
元恋人の写真を見つめつつフラれた瞬間について思い出している状態の脳や
親しい友人の写真を見つめつつ幸せな瞬間について思い出している状態の脳
熱いモノを腕に押し当てた時の脳
心地よい程度の暖かさの物体を腕に押し当てた時の脳を
fMRIでスキャンするという実験を行いました
これらのスキャンデータを分析したところ
失恋時を思い出している状態と熱いモノを押し当てた時だけが
痛みに関連する脳領域を活性化させていたことが判明
この現象の原因についてクロス教授は
「感情的な痛みが人類の祖先の脳に存在していた肉体的な痛みを司るシステムに『便乗』した」と解釈しています
精神的な痛みは胸や腹部に感じられることから
「脳から首、胸、腹部にかけて通っている迷走神経の活性化が精神的な痛みを肉体的な痛みに転換しているのでは」という説が存在するものの
クロス教授は「説得力に乏しい」とこれを否定
また精神的ダメージによって引き起こされるという説から「ブロークンハート症候群(失恋症候群)」という俗称のある
心疾患・たこつぼ型心筋症は
2018年の調査によって精神的ダメージが
死亡率を高めることが確認されていますが
実際には「失恋が失恋症候群を引き起こすことはまれ」とのこと
以上を報じた科学系ニュースサイトのLive Scienceは
「心の痛みはつらいものですが
心の痛みを感じる能力は人類が生き残るために進化した結果得た能力だという事実を踏まえれば安心できるかもしれません」とまとめています