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忘れてしまうから

ふとした時20年前のことを思い出した
偏に20年と言っても今のボクから言えば人生の約半分だから
それなりにかなり昔のことなんだけど
不思議なことにすごく過去の事だと思う部分と
ついこの間の事のように
現在も当時の気持ちのままの部分がある気がする
同じ時間軸で二つの感覚が共存するなんて
人の頭ん中の記憶や時系列なんてものは
案外適当で不確実なものなんだろうな

思い出すってことは
忘れていたからできることでさ
ずっと覚えていることを思い出すことはなくて
いつか思い出すために忘れるんだ
ボクたちは忘れることで過去から解放され
思い出して引き戻される

覚えていたり、覚えていなかったり
どうだったっけ?
忘れてしまったものが多すぎるような気がする
いままで食べたパンの枚数も
吸った煙草の本数も
寝た女性の数も
覚えていたり、覚えていなかったり
忘れてしまったものを
どうやって思い出すことができるだろうか

中学の時にせっかく覚えた
Mr.childrenのCROSS ROADのピアノも弾けなくなっていた
そもそも何でピアノを練習していたんだっけな
そうだ、そうだ
音楽の先生の気を惹きたかったからだ
だから本当の所はMr.childrenとかどうでもよくて
グランドピアノの横に来て教えて欲しくて
ただそれだけでピアノスコアを買ったような気がする
結局誰にも披露することなく
放課後の音楽室でしかボクのピアノは鳴らなかった

はじめて買った車でかけるために編集したMDの1曲目は
宇多田ヒカルのFirst Loveだった
タバコを吸い始めたばかりだったから
キスがタバコのフレーバーがするとか知らんかったし
女の子を車に乗せるときの曲は
R&Bであれば何でもいいと思っていたんだ
ごめんなヒカル

夜のガラガラのジーンズ屋のバイトで
レジに座りながら、ずっと将来について語り合った
あの頃はさ、THE BLUE HEARTSみたく
未来は僕等の手の中にあるみたいで、どんな話もできた
卒業したら何をしようかなんて
単位が足りないことを棚に上げてさ
あの時のみんなは今何をしているのだろう
初売りでみんなでノリで達成させた売上100万円は
今思えばあの店の規模ではすごいことを成し遂げたと思う
できないことなんてないと思っていたんだ

思い出は断片的で
バラバラになったパズルのピースは
元の場所には嵌らない

忘れてしまったことと
思い出して美化した過去と
実際にあったことと
忘れたままにしたいこと
その狭間でボクらはたゆたうんだ


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