サンクコストを考える
2017年のfyre festivalの記事
一昨年も読んだはずだったけど
東京五輪に紐付けられて再浮上
まぁサンクコストを捨てられないというところなんだろうなぁと
単に破綻した構図を見て安心するという
下世話なエンタテイメントはいつの時代も蜜の味
歴史に学ぶという視座で見るならば教育コンテンツであるし
事実を淡々と見ていくことは受けて次第で変わるし
個人的には興味深いコンテンツだったりする
久しぶりに見たので紹介
東京五輪、偉い人が誰も「やめよう」と言い出せない「無責任すぎる構造」
Netlixで配信されているドキュメンタリー映画
「FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー」
カリブ海の青い海に浮かぶ主催者が購入した完全プライベートの島
他に住人は誰もいなく唯一の交通手段は小型ジェット
一流ホテル並みの宿泊施設と豪勢な食事
パーティチケットの最高価格は25万ドル(現在のレートでおよそ2700万円)
コンサートは一流の出演者ばかり
主催するのは成功したスタートアップ企業の創設者である
27歳のビリー・マクファーランドと
2000年代に一世を風靡したラッパーのジャ・ルール
Fyreフェスティバルは「Fyre」という
アプリケーションの宣伝のために企画された
このアプリは芸能人を簡単にブッキングできるというもので
そのブランディングのためフェスティバルをやることを考えついた
もともとビリー・マクファーランドは「Magnises」という
クレジットカードをベースにした会員制クラブを運営していた
彼は事業をスケールさせる上でブランディングが
いかに重要かをよく知っていた
とにかく人々の注目を集め事業やサービスに対する期待をふくらませる
「よくわからないけどスゴそうだ」という感覚を煽る
そのために重要なのはトップモデルとInstagram
Fyre フェスティバルは各種メディアで「今までにない音楽フェス」と
宣伝されチケットのセールスとしては大成功を収めた
多くの参加者はトップモデルが宣伝するInstagramの投稿を見て迷うことなく数十万円以上のプランを予約していた
98%のチケットが48時間以内に売れた
リアルなイベントを開催するのにはInstagramだけでは足りない
無から有を作ることはイメージの上では可能だが
イメージだけで生きていくことはできない
例えばトイレ
開催地は水道もない島なので当然トイレが必要
排泄物の量を考えれば現実的にトイレを十分な量用意するのは難しい
テントや宿泊施設も同様
クーラーがなければ寝られないほど暑い島だからだ
現地をよく知る建設業者は「トイレを設置するのは難しいのでクルーズ船を貸し切って岸につけそこで寝泊まりすべき」と主張したが
彼は「問題点を指摘したから」クビにされてしまった
ドキュメンタリーを見ていると
正しいことを指摘した人から消えていくことがわかる
あとに残るのは「『なんとかしてみよう』と考える人たち」
彼らは主催者のビリー・マクファーランドの「なんとかしろ」という声に
追い詰められる
一度引き受けたことなので引き返すことができなくなる
深みにハマっていく
「できない」という人間が一通り追い出され
新たにコアとなるメンバーが集まったころ
開催までの残りの時間は2ヶ月もなかった
彼らコアメンバーの後々の証言には
「一体何が事実で、何が事実ではないのか」わからなかった
という言葉が出てくる
じつは当初「購入した」と宣伝していたカリブ海の島は
実際のところ購入できておらず
その島から追い出される事態にまでなっていたのだが
そのことはInstagramでは隠され
彼らももはや自分が何を売っているのかわからなくなっていた
「もはや後には引けない」というところに来てしまうと
人間は正常な判断ができなくなる
撤退して開催することができない
という現実を認めることが最善であるとわかっていても
そして当日考えうる限り最悪の条件が重なった
大雨が降った
雨はわずかに残った資源テントやマットレスすら容赦なく汚していった
「秘密の島の超豪華なフェス」と喧伝されたイベントの実態は
惨憺たるものだった
テントの床は汚れていてマットレスは雨に濡れコンサートは開かれず
「一流のシェフによる豪華なディナー」は
チーズと少量のレタストマトのサンドイッチに変わっていた
多くの参加者はすぐに島から出ようとしたが
飛行機のキャパシティはほとんどなかった
彼らは空港でろくに眠れず水もないため
1人が熱中症で運ばれる羽目になった
SNSという砂の上に構築された夢は覚めたのだ
最終的にビリー・マクファーランドは逮捕され今もなお禁錮刑に服している
彼は破滅し計100億円にものぼる訴訟が繰り広げられた
「解決策を考えるんだ」「前向きな姿勢が必要だ」
彼は反対の声もアドバイスも聞かずただ精神論だけを唱え続けた
しかしいくら前向きになったところで
豪華なヴィラが天から降ってくることはない
魔法のように排泄物が消えてしまうこともない
というように鼻っから破綻していたプロジェクトの熱狂と暴走
それ以上にスタッフを鼓舞する言葉が特徴的
前向きな姿勢やら解決策やら
昨今ポジティブ自己啓発系で耳タコな言葉が踊っているのが
なるほどなぁとスルメみたいに味わい深い
とりあえずブラフは意外と効果的に世間に響くみたい
日々感じたことをジャンル問わず つらつら書いてます おもしろいなと思ったら フォローおねがいします