ちょっと気になってたやつ
未来を書く書籍は未来に読むのが面白い
説得力のある説明や論理展開もオチがわかってから読むと
またこれはニヤニヤ出来たりするのでオススメ
とはいえちょっと気になっていた書籍がピックされていたので
これはまだ寝かせてから早いのだけれども
マルクス好きとしては読もうかなぁと思う
エネルギー問題は陰謀論がつきまとうものですが
こういった陰謀を排除したものもいいよね
資本主義と環境保全は両立できない!?『人新世の「資本論」』が提示する豊かな「脱成長コミュニズム」とは?
スマートフォンやパソコン冷蔵庫に洗濯機
私たちは日常的にさまざまな電子機器を活用して生活しています
そしてそれらを動かすのに欠かせない電力の大部分は石油や石炭
天然ガスなどの化石燃料に頼っています
しかし枯渇性資源であるこれらの燃料はどこかで必ず限界が来ます
そしてその限界の日に人々が
今のような生活を維持できるという保証はありません
このようにわたしたちの生活は限りある地球上の
さまざまな「自然」を消費し
資源の枯渇危機や地球温暖化などの環境変動を引き起こしています
経済の成長が叫ばれ消費が加速する中で
「見ないふり」をしてきたさまざまな環境問題と
向き合わなくてはいけない時期はかならず来ます
というよりもうその時期はすでにやってきているのではないでしょうか
人類が地球で生活を営み続けるためにどのような方向転換が必要なのか
その道筋の一つを提示したのが斎藤幸平の『人新世の「資本論」』です
『人新世の「資本論」』ってどんな本?
Amazonの売れてるビジネス書ランキング第1位にも輝いた本書
さらさらと読める文体とは裏腹に刺激的な内容で話題を呼んでいます
著者の斎藤幸平は哲学・経済思想史を専門とする研究者で
現在は大阪市立大学で教鞭をとっています
タイトルの人新世とはオゾンホールの研究で
ノーベル化学賞を受賞した大気化学の研究者
パウル・ヨーゼフ・クルッツェンが提唱したもので
人間によるさまざまな活動の痕跡が記録された
新たな地質時代のことを指します
地質時代は地球上で起こった大規模な環境変動
そしてそれに伴う大量絶滅と新たな生物の登場などで区分されます
これまで人類が地層から読み取った
大規模な環境変動は数百数千万年をかけて起こったものですが
今それと同規模の変動が僅か数千年の人間の活動によって
引き起こされようとしているのです
そして急速な気候の変化は居住区域の縮小や農作物の生育不良
生物の大量絶滅に繋がります
過去のデータを見てみると1880~2012年の間に世界平均気温は0.85度上昇し
結果として海面は約19cm上昇しています
海抜の低い島国では「環境難民」として他国へ移民する人々も増えています
さらに平均気温は2100年までに最大で4.5度上昇するという予測もあります
「地質学的な」気候危機に直面しながらも
資本主義社会の中で経済成長や過剰消費をやめられない
そんな私たちに向けマルクス主義哲学、マルクス経済学を専攻する著者は
マルクスの晩期の思想を探る中で
行き着いた新しい豊かな社会の形を提案します
日本をはじめ多くの先進国(グローバル・ノース)は資本主義社会です
そしてグローバル・ノースに属する
多くの人は物質的に豊かな暮らしをしています
資本主義社会では資本を巡って様々な競争が起こります
その結果技術は発展しより良いものを求めて様々な商品が開発されています
そして人々がより良いものをより安価で大量に消費すれば
当然自然もまた消費されます
そしてその自然の中にはグローバル・サウスと呼ばれ安価な労働力として
搾取される人々も含まれています
現在グローバル・ノースのさまざまな国々ではSDGsが掲げられ
日本でもプラスチックの買い物袋の有料化や紙ストローの採用など
SDGsにのっとったさまざまな取り組みが行われています
しかしどれだけプラスチック買い物袋の利用量を減らしても
人々が過剰消費をし続けている限りは自然や安価な労働力として搾取される人々は消費され続けることになります
一方で資本主義社会では消費
つまり資本のやりとりが停滞すると経済が回らなくなってしまいます
経済が回らなくなれば多くの人々の生活が立ち行かなくなってしまいます
そうした中で自分自身の生活よりも環境保全をという決断を
個人がすることは非常に難しいと考えられます
経済成長を続ける社会においては構造的に環境を
搾取し続けなければならないのだと本書は指摘します
資本主義社会ではさまざまな競争が行われています
そして競争では必ず勝つものと負けるものが生じ
その結果として貧富の差が生じます
実際2021年1月に米政策研究所(IPS)と
税の公正推進団体ATFが発表した報告書によると
アメリカでは数百万人が貧困に陥る一方で
富裕層の資産が急増していることが明らかになりました
パンデミックや災害などさまざまな災禍は
資本を持たないものの生活を奪う一方で
資本を持つものにとってはさらに資本を増大させるチャンスとなるのです
こうした競争社会で地球の資源が尽き果ててしまえば
一部の資本家が豊かな生活を維持し富を増大させる一方で
「持たざる」99%の人々が
残ったわずかな残骸を奪い合う「野蛮状態」に移行することは
想像に難くありません
そこで本書ではマルクスの晩年の思索から
従来の共産主義とも異なる新たな「コミュニズム」を提案します
本書で「脱成長コミュニズム」と呼ばれる社会は
これまでの共産主義社会のように中央集権的に管理するのではなく
人々の相互扶助を強化することで成り立ち
グローバル・ノースにおける経済的な成長をストップし
地球環境と共存しながら消費以外の道筋で人々が豊かになれるといいます
これまでの歴史における共産主義社会の失敗を学び
当たり前に資本主義社会で「成長」を求められてきた私たちにとって
一見受け入れ難いようにも思える「脱成長コミュニズム」ですが
本書を読めば、その必要性を実感できるのではないでしょうか?
ということで
まぁこの思想がどうなのか
早すぎた考えなのかもしれないけれども
ひとつの話のネタにどうでしょうか?