ミツアナグマと殺害予告してきたおっちゃんの話
はじめまして、ミツアナグマのような何かと申します。1.5割人類です。
普段は夜のお仕事をする傍ら、趣味で小説を書いているただの呑んだくれでございます。
noteでは、Twitter(X)の140字で書ききれないような、日常で出会った奇妙で面白いと感じた出来事をまとめていくつもりです。
さて、唐突ですが読者の皆様は殺害予告をされた事はありますでしょうか?書いてみて思いましたが、結構居そうですね。浮気がバレた人間や毒親持ちの子供さんとか。
ではコレが、全く見知らぬ人間からの殺害予告となると、経験の無い方の方が多いかと思います。
今回はそんなお話でございます。
冬の日の夜の新宿。先ほどまで降っていた雨は、歌舞伎町の豚骨ラーメンライスセットを食べ終わる頃にはすっかりと止んでいて、周りを見ても皆傘を畳んで歩いていました。私と、私をAmwayに誘ってきた同僚――マルチ商法に同僚という概念があるのか知りませんが、友人と呼びたくないのでこの形で書きます――も例に漏れず、畳んだ傘を持ち、Amwayをやってくれそうな人間を勧誘するためにダーツバーに向かって歩いている最中でした。
「やべえ、バ先の鍵忘れた」
目的のダーツバーが目の前に見えたぐらいで、同僚の彼がそう言いました。
彼はこの後0時過ぎからアルバイト、私も0時過ぎから予定があったので、彼が家に鍵を取って新宿に帰ってきたら時間的に店にいる時間は20分程度になってしまうとの事で、一旦私たちは店の前で立ち話をしていました。
「一緒に行くなら、俺先に店入って鍵取ってくるの待ってるよ」
「いやでも、まだ1人じゃ勧誘難しいでしょ。時間も1時間もないし。どーすっかなー」
私としては、外は寒いしさっさと椅子に座って酒とタバコが摂取出来れば、勧誘だのなんだのはどうでも良かったのですが、彼はそれだと納得いかないようでフニフニ言い続ける始末。
めんどくせぇ〜と思っていると
「お前ふざけるんじゃねぇよ、殺してやるぞ」
と声が聞こえ、私たちは喧嘩でもあったのかと周りに目をやると、私たちのそばに細身で長身のおっさんが立っていました。
「お前は性犯罪者なんだよ、殺してやるよ、この性犯罪者が」
その見知らぬおっさんは、どうやら私に向かってそんな言葉を放ってきているようでした。
面倒の種が増えましたが、こういうのは幽霊と同じで無視するに限ります。私達はそのおっさんをほっといてフニフニ話を続けましたが、おっさんも私達もそこから動かず、話というのも横のおっさんからの「殺してやるぞ、おい殺してやるよクソが」が右耳から聞こえてくるせいで、全く入ってきません。
今思い返してみても、5分ほどそこから動かなかったのは謎だし、私が性犯罪者だというおっさんの発言にも、はてどの女の子だったか…いえ、全く身に覚えは無いわけですが。
とうとう私は痺れを切らして、おっさんに向かって
「あぁ、はいはい。わかったわかった」
と言ってしまいました。
当然おっさんはその言葉に反応し、持っていた傘の石突を私の方に真っ直ぐ向け
「お前なんなんだよその態度は!お前が悪いんだよ性犯罪者が!殺してやる!」
先ほどよりもすごい剣幕でおっさんが私に怒鳴りました。
さすがに私達も気圧され、同僚の「おい行こうぜ」の言葉でおっさんから離れると、おっさんは舌打ちを残して歌舞伎町に向かって歩いていきました。
きっと、次の獲物を探しに行ったのでしょう。
結局、同僚は鍵を持って私の待つダーツバーに合流し、勧誘なんかそっちのけで先程のおっさんの話で盛り上がりました。
しかし、あのおっさんはなんだったのでしょう。ただの薬物中毒者なのか、幕末あたりの亡霊かタイムスリップしてきた武士か…何にしても新宿歌舞伎町は不思議な街です。実害がないので、こうして笑い話にできますが、皆様も見知らぬおっさんとマルチ商法会員にはお気をつけて。
次回の無料更新は『オ○電してきた女の子との突発下北沢デート』有料更新として『Amwayを辞めるまでの話①出会い編』の予定です。
それでは。