神様と喋ってしまった
神様と喋ってしまった。神様と。神様と。
あたしはCö shu Nie(コシュニエ(こしゅにえ))というバンドが大好きで、神様だと思っている。
今日はコシュニエのファンクラブ限定ライブだった。念願の最前席が取れて、やばかった…。
しゅんす側の席。以前3列目が当たったときもしゅんす側の席だった。やばかった。絶体絶命のベースがぎゃんぎゃんのパートでピックを咥えてスラップしてたのがああもうやばかった。しゅんすを見たらすぐ目が合いそうでわざとみくさんを見たりして。みくさんの声は多分、もう私の心の一部だ、なんて思ってしまう。みくさんが大好きだ。神様。私の神様だ。しゅんすもね。
ライブが終わったあと、スタッフの人が急に
「お帰りの際、コシュニエメンバーからのお見送りがありま~す」と言った。?と思った。
コシュニエメンバーというのはコシュニエを支えるスタッフのことだと思った。
「それではコシュニエメンバーが出口の方へ行きますので拍手をお願いしま~す」
よくわからないまま拍手した。袖からみくさんとしゅんすさんが出てきて、出口の前に行った。
あ??????
「お呼びした番号の方からお帰りください」
2階席の方。〇番から〇番の方。ステージから見て右側の…
どんどん呼ばれていく。
「ステージ向かって左側の方、1番から7番、8番から…」
呼ばれた。私は6番だった。
装飾に使っていた花を、出口への道すがら、一輪ずつ渡されることになっていた。赤くて丸い、初めて見る花を一輪貰った。
神様がいた。
薄暗くて、一瞬わからなかったけど、確かに神様だった。
「大好きです」 と言った。
本当はもっともっと言いたいことがたくさんあったけど、それしか言えなかった。時間もないし、重いと思われたくなかったから。頭に着けていたうさぎの髪飾りを(ライブがrabbit holeという名前だったから)見せようかと思ったけど、そんなこともできなさそうだった。時間的にも、心的にも。
ふたりが笑って、多分ありがとうみたいなことを言ってくれた。あまり覚えていない。もったいないことをした。仕方ない。しゅんすが手を振ってくれた。みくさんが笑ってくれた。とても、とてもきれいだった。私の神様が確かにそこにいて、私の言葉を聞いてくれた。
出口を出る。花を持って写真を撮っている人がたくさんいた。私も一瞬撮ろうかと思ったけど、すぐに駅まで歩き出した。1人にならないと。薄まってしまう。この感情が。経験が。記憶が。
死んでもいい、と思った。泣きそうになりながら、歩いた。雨が降っていた。止まったら全部を忘れてしまいそうで、ただひたすら歩いた。
この花をドライフラワーにしたい。私はドライフラワーが好きじゃない。命の冒涜(そこまでじゃないけど)と思っている。けど、この記憶とだけは、死ぬまで傍に居たい。
私の手の熱で萎れてしまうかもしれない、と思いながら歩く。冬の空気に触れて、剥き出しのままの手がどんどん冷たくなっていく。それでいいと思った。この花が枯れるなら、私は死にたい。神様に触れたから。このまま死んでいい。
こんな気持ちも、ライブの感想も、うさぎの髪飾りを着けていたことも、何もかも伝わらなかったけど、それでいい。あのふたりに大好きですと伝えられたことだけで私は生きていけるし、死ぬことができる。
私のこと、きっと覚えてはいないでしょう。
それがいいのです。それでいいのです。
私の神様。これからも健やかで。燦然と輝き続ける星のように、私の心に光をください。愛しています。