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ラスアイのリモート・Zoomファン応援ルームの現場再現性がおもしろい

ラストアイドルが行っていた定期ライブ「ラスアイのヨルライ」をオンラインに移行した「ラスアイのヨルライリモート」の体験が非常におもしろいのでレポート。

リモートライブを特別にする「ファン応援ルーム」

新型コロナウィルスの影響で現場の自粛が今なお続くなか、各アイドル運営が取り組んでいる無観客ライブの配信や、特典会のオンライン版等は可能な限り覗く日々を過ごしています。しかし、なかなか現場の代わりにはなるものは無いのかな…と悶々としている中で、ラストアイドルがあまり他には無い実験的な取り組みを提供していたことに驚きました。しかも決して先進的ではなく、かなり泥臭い方法で。

「ラスアイのヨルライリモート」は、SHOWROOMで配信している、メンバーが各自宅からZoomで繋がった状態でそれぞれソロを中心に披露するリモートライブで、それ自体はよくある配信なんですが、おもしろいなと思ったのが同時刻で並行して開催される「ファン応援ルーム」。

キャプチャ

本放送の19:30より30分早い19:00に、ラストアイドル公式アカウントより、「ファン応援ルーム」への入り口となるZoomミーティングのURLが投稿され、中に入るとズラリとMCとファンが混在して並びます。

ラスアイのヨルライZoom3

これがいわゆるプレゼンターと聴く側が明確に分かれているウェビナーモードじゃなくて、デフォルトのZoomミーティングモードなんですね。なのでこの日の場合はMC・三拍子(最初期からラストアイドルのライブMCを務めてくれている漫才師。1,000人の芸人が選ぶ『売れてないけど本当は面白い芸人ランキング』1位。普段のヨルライでも当然MCを担当)、とこの日ライブには出ないメンバーと、ファンが同列に一斉に並びます。

相互監視型で場を共有するリアルタイム副音声

この時点で既にMCとメンバーとファンが相互に観る・観られるの関係がはじまり、例えば三拍子が「今日はもちろんお酒飲みながらもOKですよ!」と言うので缶ビールを掲げると「おっ!バドワイザーですね!」と拾ってくれたりする。一方でこの日はスタッフ側の設定ミスで、誰でも画面共有出来る状態になっており、誰かがネット上のAVを勝手に画面共有して流したり一時パニックにもなったり、カオスな時もありました。

三拍子や出演しないメンバーが前座トーク的なこともしつつ、定刻でライブがスタートするとこのような画面に。

ラスアイのヨルライZoom6

運営がSHOWROOMの状態を画面共有しながら、応援ルームのメンバーが感想を言い合ったり、時には関係の無い話をしたりしながらライブをMC、メンバー、ファンと共に鑑賞。いわばリアルタイム副音声/オーディオコメンタリーなのですが、その中にファンも同列に存在している状態です。

ファンと一緒にメンバーがYouTubeのコメント欄に居たり、Twitterで感想やエピソードを同時に呟いたりと、同時刻に同じコンテンツをSNS上で共有する場面は今までもありましたが、このような半分クローズドな顔が見えるクローズドな空間で、上下関係なく同列に並ぶ光景は新鮮です。

そして更におもしろいのが、メンバーがSHOWROOMとこのZoom応援ルームを行き来するんですね。Zoomでファンと一緒に喋っていたメンバーが「では行ってきまーす!」と言って次の瞬間にはSHOWROOMの本ステージ内でMCをしていたりする。つまりリアルタイム副音声でりながら、いわばオンラインの前室でもあるわけです。

現場の構図がZoom内で再現されている

ラスアイのヨルライZoom11

これはPC画面に限るレイアウトの話になりますが、Zoomは仕様上、頻繁に喋る人、次にビデオをオンにしている人を優先的に上位に表示する仕組みになっています(ザックリ)。なのでトップ画面には上記の様なビデオ表示をオンにしているファンとメンバーと一緒に並びますが、後ろの方にいくと、以下のようにモブ状態になっていきます。Zoomミーティングの仕組みを採用しているので、これはメンバーからしても近しい画面が表示されているわけです(自分自身の画面が他のメンバーにどう表示されているかはわかりません)。

ラスアイのヨルライリモート0606_2

つまり(チャット欄はありますが)メンバーからしたら後方のファンは、わざわざ画面遷移していかないと存在を認識されない状態になります。メンバーからは一切その姿が見えない一方で、ビデオオンにしているオタクはメンバーとスケッチブック芸をやったりしながらコミュニケーションをとっているんですね。

これを実際のメンバー目線での現場の構図で考えてみると【ステージ→前方客席→後方客席】の図がZoom上では【ビデオオン+音声オン→ビデオオン+音声オフ→ビデオオフ+音声オフ】の構成で再現されている事がわかります。つまり「後ろの方までハッキリ見えてるよ-!」の言葉を疑うとかそういう話ではないのですが、メンバーからすると、顔がよく見える前方席のファンと、後列のファンの差の付き方の構図が同じとなります。

言うまでもなく、後列で【ビデオオフ+音声オフ】だからといって疎外感があるかというとそうではなく、今までにないエピソードトークを聴いたり、メンバーのZoom越しの顔を観る事によって情報としては前列のファンと同じコンテンツを楽しんでいるのであって、その点についても現場と同様、いえむしろ後列であっても同じスクリーンを見ているわけなので、情報の解像度としては平等に近い状態ではないでしょうか。

ラスアイのヨルライリモート0606_11

ラスアイのヨルライZoom9

更にSHOWROOMでのライブが終了後には、ライブ出演メンバーが「お見送り」と称してZoom内に入ってきて「ファン応援ルーム」はこの日1番賑やかな状態となります。これをラストアイドル運営は毎週土曜夜に、毎回試行錯誤しながら開催中です。

まだまだ手探りな試みではありますが、無観客ライブや、過去・限定コンテンツの上映とは違った満足感があることを「今年1番楽しかったです。」とスケッチブックを掲げるファンの姿を見てもわかると思います。

With/Afterコロナ時代のアイドル現場の模索は続く

構成としては、SHOWROOMでメンバーがリモート状態でライブをやりつつ、その画面をZoomミーティングルーム内で共有して、Zoom内でMC・メンバー・ファンが一緒にリアルタイム副音声的に楽しむもので、決してスマートなものではありません。更に細かくは、Zoom内のチャット画面に定期的にメンバーの限定画像が投下(PC限定ダウンロード)されていくという、ファンを飽きさせないとてもアナログな工夫も見られます。

高解像度の上映や、上映内容に工夫を凝らすという方向性はひとつあると思いますが、情報の解像度を今のまま、あるいは下げた状態でも、既存のシステムの組み合わせ次第では、メンバーとファンが同じ空間を共有する新しいオンラインの現場体験が出来ることを、ラストアイドルの取り組みは示唆していると思います。

今後緩やかにライブや握手会現場は再開されていくとは思いますが、この機会にこれからもオンライン上でファンとアイドルが、今までとは違う形で同じ場面やコンテンツを共有する場を模索する試みは続いていくべきでしょう。

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