富士山の絶景が続く山梨の長い稜線
今回は大月市の定める秀麗富嶽十二景の内3座、滝子山・ハマイバ丸・大蔵高山を繋ぐ稜線を歩いてきましたのでご紹介いたします。
秋晴れの青空の元、素晴らしい富士山を眺めることができるとてもお勧めのコースですが、距離や累積標高差はそれなりに長く体力が必要。また、滝子山から米背負峠の区間は登山道が不明瞭なのでルートファインディングが必要です。危ない場所は無いので初級者でも大丈夫ですが、時間や体力に応じて米背負峠でエスケープの判断をすると良いでしょう。
下山後には日本有数の高アルカリ温泉であるやまと天目山温泉に入ることができます。高アルカリ温泉は美人・美肌の湯と呼ばれるつるつるスベスベの温泉ですので女性の方にもお勧めです。
時期
11月
アクセス
行き
東京から初狩駅まで中央線で約2時間 ※大月駅で特別快速からローカル線に乗り換え
帰り
大和天目山温泉バス停から甲斐大和駅までバスで12分 ※英和交通バスと市民バスの2種類あります
甲斐大和駅から東京まで中央線で約2時間10分 ※大月駅でローカル線から特別快速に乗り換え
紹介ルート
総距離:20.9km 登り:1,844m 下り:1,313m
初狩駅~滝子山~大谷ヶ丸~米背負峠~ハマイバ丸~大蔵高山~湯ノ沢峠~やまと天目山温泉
初狩駅~藤川子神社
初狩駅にはトイレと飲料自販機はありますが、近くにコンビニなどはありません。食料等の準備は到着前に整えておきましょう。
駅の出口は1箇所。駅を出たら国道20号までまっすぐ進みます。国道に出たら左に向かうので、途中の路地からショートカットしてもOKです。
国道20号を左へ歩くと、割とすぐ滝子山の案内看板があります。地味なので見逃さない様に右に曲がっていきます。高速道路の高架の向こうに見える高い山が滝子山なので、だいたいそっちの方向に歩いてけば間違えることはないでしょう。
笹子川を渡り、高速道路をくぐったら藤川の集落を通ります。「あいさつ街道」の看板もありますので、地元の方を見かけたら気軽に挨拶しましょう。朝のお散歩中と思われるおばあちゃんに「気を付けてね」と優しい声をかけていただきました。
集落の最後に子神社(ねのじんじゃ)があります。太っい御神木の大杉や、古い掟の高札が入口に在ることから、歴史のある神社であることが分かります。子神社は基本子宝にご利益がある神社ですが、とりあえず登山の安全をお参りしていきましょう。また、この先の登山口にはベンチ等は無いので、登山準備が必要な場合はあわせてここで整えていくと良いでしょう。
藤川子神社~欅平
神社を後にして歩いて行くと大きな看板があっていかにも登山口のように見えますが、よく見ると左下に「ここは登山口ではありません」の注意書きが在ります。ここは無視して舗装路をもう少し先に進みます。
登山口には滝子山への案内看板がありますので、そこから左に入っていきます。ここから舗装路ではなくなります。
序盤はなだらかで左手に沢が流れているのが見えます。次第に沢に近づき渡渉します。沢の水量はそれほどでもないので渡渉と言っても難しいものではありません。全部で5回くらい同じ沢を行ったり来たりしますが、沢を直接渡渉するところよりも簡易の渡し橋がある方が滑りやすいので注意が必要です。沢沿いを歩いている間はなだらかな道が続きます。
1時間ほどたったところでベンチが2つ並んでいる場所が在ります。ここからは稜線まで九十九折りの登りの始まりです。ちょうど休憩に良いタイミングですので、ベンチで一休みしてから登って行くと良いでしょう。
標高は1000mを越えどんどん高度があがります。稜線に到達すると木々の向こう側には綺麗な富士山が垣間見えます。展望が開けた場所を目指して稜線を登っていきます。それほど急な感じはしないのですが、なかなか大変な登りが続きます。稜線上は広く広葉樹が多めで、既に落葉してしまった木々の方が多かったですが紅葉を楽しみながら歩けました。
大きな木の板に文字が書かれてるが見えたら「欅平」です。「平」という割にはそれほど開けた平地の感じはしないのですが、富士山方向の展望が少し開けていて綺麗な富士山を楽しむことができました。
欅平~滝子山
欅平で一旦ルートは男坂と女坂に分かれます。今日は先が長いのでより距離の男坂を選択します。
男坂は稜線上の道で岩場というほどではありませんが、名前の通りきつい登りでした。
ぜえぜえ言いながら登っていくと、やっとなだらかな場所に出たので、もうすぐ山頂かな?と気を緩めて登って行きましたが、単なる男坂と女坂の合流地点だったのでガッカリです。前方には未だ山頂へ至る上り坂がそこそこ続いているのが見えます。一旦緩んだ気を引き締めて、もうひと頑張りです。
短いながらも男坂と同じくらいの急登を登りきると、登山道の先に三角点の石柱が見えました。立派な二等三角点の様です。という事はここが山頂?とまたも気が緩みますが、展望もなく山頂碑もありません。木々の向こうを覗くと、もう少し先に更に一段高い場所が見えました。どうやらここも「なんちゃって山頂」の様です。さらにひと踏ん張りです。
大谷ヶ丸への分岐看板まで緩やかに下ったあとやっと最後のひと登り。ついに滝子山に登頂できました。
滝子山山頂は大月市制定の秀麗富嶽十二景ではありますが、水平330度くらいの好展望地でした。赤石・悪沢・聖などの南アルプスから左へ富士山、愛鷹、箱根、丹沢山塊、都心方向の関東平野を開けて間近には雁ヶ腹摺りと稜線の奥に雲取山、そしてこれから歩いて行く大倉高丸、ハマイバ丸の稜線その左奥には金峰や国師ヶ岳の稜線、更にその左奥には八ヶ岳と非常に良い景色が拝めました。本日は天気も良く、山頂にはまだお昼まで時間があるというのにお食事休憩する登山者が沢山いました。
滝子山~大谷ヶ丸
滝子山で下りる方はここでの休憩が楽しいかと思いますが、私はまだまだ先が長いので休憩せずどんどん行きます。
山頂から一旦戻って、先ほど通過してきた分岐を大谷ヶ丸へと下っていきます。
暫く明瞭なトラバースが続いていましたが、稜線にのった途端登山道をロスト。足元がフカフカします。ですが暫くそのまま歩いて行くと再び足元がしっかりして登山道ったことが分かります。
この辺りの稜線は落ち葉が多く踏み跡が不明瞭でした。途中でスライドした方とも、恐らく登山道を外している場所ですれ違ったので、私だけではないようです。その方も「落葉で道が分かりづらい」とこぼしていました。
その後も度々登山道を外しているようで、「ふかふか」地面と「しっかり」地面を行ったり来たりしました。
登山道を外しているとはいえ正しい稜線上を歩いていさえすれば道迷いはしないコース。小ピークの都度、間違った尾根に入らない様に自分の影の方向と地図を見比べながら進みます。基本は北向きの稜線ですが、左右にうねっているので注意が必要です。
稜線上はアップダウンがマイルドで歩き易いです。葉が落ちているため日差しが入り込み明るい稜線で気持ちが良いですが、少し風が出てきたのか体感気温は朝より下がった気がします。ちなみにこの日の気温は1日を通して10℃前後でした。
数は少ないですが稜線上には案内板が何カ所かあり、道を外していないことを確認できます。右に90度曲がる「米背負峠」への案内板が在ったら左の方に大谷ヶ丸の山頂があるのでちょっと寄り道していきましょう。
「大谷ヶ丸(おおやがまる)」の山頂は展望は無いものの三等三角点があり、簡素ながら山頂碑も立っています。地味な山頂ですが、2024年のスポーツニュースでは本当に大谷選手一色。「大谷ハラスメント(「大谷なら~」「大谷のように~」と強要する)」なんて言葉まで生まれる程の大人気でした。
大谷ヶ丸は「大谷が◎」とも読めるので大谷ファンの方に是非立ち寄ってもらいたいお勧めの山頂ですね。
大谷ヶ丸~ハマイバ丸
さてここからは標高差100m程を結構な角度で一気に下ります。下りきった鞍部が米背負峠です。
米背負峠から左手に下れば今回のルートのゴールである「やまと天目山温泉」へショートカットできますので、体力・時間に問題がある場合はここから下山すると良いでしょう。私はお腹が空いてきましたが時間もほぼ予定通りで疲労もほどほどですので、予定通り先に進みます。
米背負峠からは再び登り返しが始まります。ここまでと違って登山道が明瞭になります。きっと、天目山温泉周回からハマイバ丸を周回するコースがメジャーなのでしょう。
この辺は滝子山より標高は高いはずですが、日当たりが良いからなのか木々の葉は全て落ち、既に紅葉は残っていませんでした。
少し登っていくと稜線上に大きめの岩がぽつんと在り、「天下石山頂」のプレートが岩に埋め込まれています。稜線の途中といった感じの場所で山頂といった趣はありませんが、ここも山頂なのでしょうか?。
ここまで続いていた樹林帯はここまでで、ここから先はススキの原が続いています。展望が良く、この時期は気持ちよく歩けますが、夏場はきっと日差しが強くて暑いでしょう。
この辺でお昼をだいぶ過ぎたので、富士山が観える場所でお昼休憩にしました。DAISOのアルコールストーブ(300円の方)を使ってトルティーヤを温め、コーヒーを入れてのんびりします。
食後はゴミ残し、火の始末のチェックをしてからリスタート!、稜線を登って行ってハマイバ丸に登頂します。
ハマイバ丸も秀麗富嶽十二景ですが、滝子山と違って展望は富士山方向のみが開けていました。「ハマイバ」は漢字だと「破魔射場」と書く様で、昔は何か神事でもやっていたのかな?と思われます。
ハマイバ丸~大蔵高山
さて、ハマイバ丸から大蔵高山の区間は今回の行程で一番気持ちの良い区間でした。稜線は明るく道もなだらかです。
ススキの原の区間が多く、振り返ればいつでも富士山が綺麗に見えました。おそらく、逆ルートで歩けばずっと富士山に向かって歩いていけるでしょう。また、この日はススキしかありませんでしたが、杭とロープで区切られていたり、鹿柵で守られていたりと植生保護されており、春はお花畑が観られる場所の様です。秋のこの時期も最高でしたが、春先に歩くのも楽しいルートかもしれません。左手には甲斐駒や白根三山が観えました。
さて、ススキの丘の上に白い看板が見えたらそこが大蔵高山の山頂です。最後のひと登りを頑張りましょう。
大蔵高山山頂は水平270度ほどの展望でしょうか、八ヶ岳や金峰方向は見えなくなってしまいますが、かなり広範囲の展望が楽しめます。特にススキの原越しの富士山の景色は格別でした。もちろん、ここも秀麗富嶽十二景の一座となります。
このすぐ先の湯ノ沢峠までは車で来れる(冬季は閉鎖)ので、体力が無い方は湯の沢峠からここまで登るだけでも富士山の綺麗な景色を楽しめるハイキングになるでしょう。
大蔵高山~天目山温泉
さあ、ここが本日の最高標高なのでここからは下っていきます。山の景色はまもなく終了ですが、ほとんど登り返しは無いはずなので体力的には楽に歩けます。
日向の気温は12℃ほどでしたが途中の日陰には霜柱が残っていました。もうすぐ冬ですね。
湯ノ沢峠まで下ると稜線から左に下っていきます。すぐに駐車場とトイレ、そして避難小屋が在ります。避難小屋の左わきから少し下ったところには水場もありますのでここで給水も可能です。
水場は塩ビパイプからちろちろ流れるタイプで、場所的に駐車場のトイレの影響が無いか心配でしたが、とりあえず500mlを生のまま飲んでみて問題ありませんでした(生水が大丈夫かは個人差があります。特に若い人は耐性が低いので注意)。
では水場から沢沿いにどんどん下山していきましょう。実はここは以前も訪れたことのある紅葉のお気に入りスポット。今年は残念ながらほとんどの木が落葉を迎え、ほとんど紅葉が残っていませんでしたが、所々綺麗な色が残った居て個人的には楽しめました。なお、このルートは沢沿いで渡渉も多く、崩落跡など荒れている場所も多いので初心者にはお勧めしません。
山道を抜け舗装路に出たところが「湯ノ沢峠登山口」です。登山道はここで終了ですがバス停等公共交通機関がありませんので、あと1時間ほど舗装路を歩く必要があります。
この舗装林道は途中に車止めのゲートがあり12月上旬には閉鎖されます。ゲートが再び開くのは四月下旬になるので、それまでの期間は車では入れませんのでご注意ください。
車が多い通りまで出たらそのまま坂を下ります(登って行くと上日川峠です)。やまと天目山温泉はもう目の前です。ちなみに、このバス通りに出るまでauの電波は届きませんでした。
下山飯と温泉
やまと天目山温泉に到着したとき、15:31分のバスがまもなく来る時刻でした。このバス路線は大菩薩嶺の登山口である上日川峠に向かう路線なので、本当は早めに乗った方が得策です。実際、温泉に入った後の最終バスに乗ろうと思いましたが、上日川峠から下りてきた16:16のバス2台には全く乗れず、その後に来た15:24の市民バス(甲斐大和駅経由塩山行き)に乗ることになりました。
さて、やまと天目山温泉は3時間520円。日本有数の高アルカリ温泉です。高アルカリ温泉はヌルヌルスベスベのお湯で、美人の湯、美肌の湯として人気の泉質ですので立ち寄りはお勧めです。まあ、最終バスまで45分くらいしか時間が在りませんので、この日はのんびりできなかったのが残念でした。
広い湯船は加温した温泉でこちらも気持ちよいですが、小さい源泉かけ流し(無加温)の方がぬるくても、よりヌルヌルスベスベ感が味わえるのでお勧めです。
湯上り後は「天目山温泉そば」と生ビールもいただきました。「最終バス乗ります!」と宣言したら食堂の方がマッハで用意してくれたので、汁までのみ切っても時間に余裕が在りました。お店のお姉さまに感謝です。
お土産を物色するほどの時間はありませんでしたが、さっぱりしてお腹も満たして天目山温泉を後にできました。
ちなみに甲斐大和駅近くはコンビニ程度で食事処はみたことが無いので、お腹が空いている場合は温泉で食べていくことをお勧めします。猪ラーメンや鹿ラーメンなどのジビエ料理もあります。
余談
2024年は新札切り替えの年です。この日、温泉入浴券の自動販売機は新札が使えましたが、食堂の自動販売機は未だ旧札しか使えなかったので、これから行かれる方はご注意ください。