霊峰白山を楽しむ1泊2日山行(後編)
2024年の能登半島は年越しから大地震に見舞われ、夏には集中豪雨による水害と大変な災害に見舞われました。亡くなられた方、被災された方には心からお悔やみ申し上げます。
石川県は直接的にあれこれ支援するには遠く離れているので、趣味の登山で少しでも経済活動の一助になればと、石川県の山に登りに行こうと思っていました。
天候の関係でのびのびになってしまいましたが登山バス運行の最終週となった10月の三連休、石川県の日本百名山、霊峰白山へ訪れました。
結局雨に降られてしまったものの、非常に良い山行でしたのでご紹介いたします。
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時期
2024年10月
アクセス
東京から新幹線で金沢へ約3時間
金沢駅西口7番バス乗り場から白山登山バスで市ノ瀬バス停まで約2時間15分(※注1)
市ノ瀬バス停からシャトルバスで別当出合まで約20分(※注2)
※注1)朝6時15分のバスしかないので金沢駅前泊必須です。「道の駅しろやま」でトイレ休憩があります。
※注2)マイクロバスでのピストンで20分間隔、最終乗車は16時半。
紹介ルート
総距離:13.6km 登り:844m 下り:1,002m
2日目 距離:13.6km 登り:844m 下り:1,002m
南竜ヶ馬場野営場~油坂ノ頭~チブリ尾根分岐~別山~チブリ尾根分岐~御舎利山~チブリ尾根避難小屋~市ノ瀬バス停
出発前
2時から3時くらいには周りがごそごそしだしました。どうもご来光を観に御前峰に登る人達はこのくらいから活動開始の様です。私は6時頃に油坂ノ頭でご来光が観れればよいかな?と思っていたので、4時起床、5時出発予定でシュラフに潜り込みます。
4時近くに起きてみる。先ずはトイレかと外に出ようとして初めて気づきました。テントのフライシートが凍てついて氷がバリバリ言っています。手持ちの気温計でを見るとテント内は10℃と暖かいはず、なぜ?テント内でストーブ使えば熱で氷も融けるかな?と思い、フライを閉め、テントに入口は全開にして朝飯を煮炊きしてみます。でもストーブの熱を使ってもやっぱり融けなかった。外はそれほど寒いのでしょうか?
諦めて撤収に入ることにしますが、この時点で時間は出発予定の5時になってしまいました。
外に出てフライシートを剥がすと氷でめちゃめちゃ重い。全体的に膨らんでいてこのままじゃとても仕舞えないので、フライシートを束ねた先端から揉みしごいて付いている氷を落としていきます。
徐々にしぼんでいき、やっとフライシートが仕舞えるというころには山向こうはかなり明るくなってしまいました。
南竜ヶ馬場野営場~油坂ノ頭
結局出発時したのは6時でした。御前峰方向の山肌は赤く染まり、もう日は登ってしまったようですが、気を取り直して油坂ノ頭に向かいます。こちらの方面に歩きだす人は少なく、ほとんどがテントを設置したまま御前峰ご来光登山に登っている様でした。今日は素晴らしい日の出が観れたことでしょう。
湿原の池塘は薄氷を張り、木道は白く凍てついている中を歩いて行きます。一旦谷に下り、沢を渡渉してから反対斜面を九十九折に登っていきます。笹原が多くて水滴がパンツにつく中、登山道はどんどん高度を上げていきます。
油坂ノ頭の少し下で稜線からの朝日を浴びました。昨夜はずっと星空が拡がっていたので今朝は素晴らしい快晴です。山向こうには雲海が拡がっているのが見えます。左手の稜線の向こう側に最初に顔を出した大きな山塊は乗鞍岳でした。さすがに存在感たっぷりです。高度を上げるたびに、御嶽山、穂高稜線、槍ヶ岳のとんがり、そして笠ヶ岳、黒部五郎岳、立山、剱岳と北アルプスの山並みが拡がっていき、何度も足を止めて眺めてしまいます。
油坂ノ頭は地形図で想定していた通り360℃展望でした。ご来光を観るのに最適な場所なので早く登ってこなかったことが残念です。ただここは山頂も道も狭いので混雑すると危ないかもしれません。
油坂ノ頭~チブリ尾根分岐
ここからの稜線歩きは比較的なだらかですが、ところどころ急登降はあります。とはいえ、いずれも短いのでそれほど苦にはなりません。注意すべきはとにかく道が細いこと!道は一人分の幅しかありません。枝や草の飛び出しも多く、谷が切れ落ちの場所もあるのですれ違いは注意です。トレランの方と何人かすれ違いましたが、走れそうな区間はあまりないのでは?と思います。
前半は主に稜線の西側を巻く道が多く、午前中は日陰の中を歩きます。登山道は凍てついて冬景色でした。
一方後半は稜線の東側を巻くので日差しが強く歩いていると結構暑くて大変でした。
稜線を歩いている間、正面に見える一番高い山が別山かな?と思って歩いていましたが、近づいてみるとその山は御舎利山だったようです。御舎利山を左から巻いたところでやっと奥の方に別山を見つけることができました。
御舎利山と別山の間の稜線に登ったところがチブリ尾根分岐です。市ノ瀬に下るにはここから御舎利山に登ってチブリ尾根を下っていきますが、別山には寄っていきたいのでここでザックをデポし、軽装で別山を目指します。別山まではわずか500mです。
チブリ尾根分岐~別山
別山までの道はまさにビクトリーロードでした。なだらかで景色の良い綺麗な稜線を歩いて行きます。左の眼下にはカール?と思われるすり鉢状の斜面が続いています。
別山山頂手前に霊峰白山の別山奧宮があるので、登頂前に先ずはお参りします。美しいアルプスの景色に感謝しつつ、能登の早期復興を祈願します。
それではいよいよ山頂へ。山頂碑の向こうに続く稜線と登山道の景色もすばらしく、振り返れば白山やアルプスの山々。昨日雨降られたことや、いまだに登山靴がずぶぬれで気持ち悪いことも一瞬忘れ、「白山に来てよかった~」とおもえる絶景の山頂でした。
気候も涼し気でずっといられる山頂でしたが、いつまでもここに居るわけにはいきません。本日の市ノ瀬から金沢駅に向かう帰りのバスは13時半出発の1便のみです。名残惜しいですが、初めての白山で下山にかかる時間もはっきりとは分かりませんので無理やり気持ちを切り替えて下山していきます。
別山~チブリ尾根分岐~御舎利山
チブリ尾根分岐まで戻ってザックを回収したら、御舎利山へ登り返します。これが本日最後の登りです。ザックを背負いなおしたので再び足は重くなりますが、これが最後と思い頑張ります。
山頂までの距離は短く、御舎利山へはすぐに到着です。こちらも白山やアルプスの素晴らしい景色が見えるとても良い展望地でした。
ちなみに山名の正しい読みは「おしゃりやま」の様ですが、ずっと「おしゃれさん」と読んでました。山のお洒落さんを自任する方がいましたら、ぜひ御舎利山に登ってお洒落写真を撮ってみてください。
さあ、ここからは長い下りです。頑張っていきましょう!
御舎利山~チブリ尾根避難小屋
御舎利山からは急斜面をジグザグに降りていきます。ちょっとガレてて足元注意です。
眼下にチブリ尾根避難小屋がずっと見えるので、近いのかな?と勘違いしてしまいますが、なかなか着かないので焦らずゆっくり下りていきましょう。小屋までは稜線を真っすぐではなく、稜線の左斜面に一旦下って少し登り返します。
この辺も道が細く、すれ違いには譲り合いが必要ですので注意しましょう。人が来ないから大丈夫と思って細い区間を歩みだすと、見えなかった場所からトレランの人が急激に距離を詰めてきてすれ違い難くなることも多かったです。
チブリ尾根避難小屋は甚之助避難小屋と比べると小さく、よくあるサイズの避難小屋でした。中は綺麗でトイレあり、水場なしです。外には植生保護用の靴ブラシが置いてあり、ここで靴裏の泥を落としてから登っていくようになっていました。
もう日が登って暑いので、小屋の中でタイツを脱ごうと思いましたが若い男女がずっとおしゃべりして小屋内を占有していたので、小屋外の見えないところでタイツを脱ぎ、更にチブリ尾根を下っていきます。
チブリ尾根避難小屋~水場
避難小屋から暫くは稜線の綺麗な景色が楽しめ、振り返れば白山の素晴らしい山容を眺めることができます。しかし、ほどなく登山道は樹林帯の中へ入っていきます。樹林帯に入ってからの道は延々と同じような下りが続くので中々退屈です。
そして困るのが、道が意外と細く、休憩に適した開けた場所が無いことです。疲れても下り続けなければならなりません。歩いている人は少ないものの、時々すれ違う方が居るのでさすがに登山道の真ん中で休憩も落ち着きません。
仕方なく休憩場所を探しながら延々と歩いていました。やっと休憩できたのは水場まであと少しという所の丸太が並んだ場所でした。金沢名物「こびりあんころ餅」を頂いて最後のひと踏ん張り。一つ一つは小さいけどエネルギー量が高く、歩く力がみなぎります。
リスタートして直ぐに水場の標柱がありました。少し脇道に入っていった場所にある様です。どんな水場か確かめに入ってみると、パイプやトイなどはなく、沢水を直汲みするタイプでした。先にいた方が水を汲んでそのままがぶがぶ飲んでいたので飲用可能だと思われます。
この時点で私は未だ1L持っていて、ゴールの市ノ瀬までは残り1時間ほどだったので、水場は確認しただけで下っていきます。
水場~市ノ瀬バス停
水場から先は登山道に水が流れているところもあり、水撥ねしない様に慎重に降りていきます。
細い沢を2~3本渡った後は、すっとフラットな道が続きます。この辺で標高は1,100m。市ノ瀬は900mくらいなのであと200mくらい下ればゴールです。
市ノ瀬まであと1km強という所で猿壁登山口に出ました。近くに舗装路が見えるので、ここからは舗装路歩きかな?と思いますが、舗装路の方向は虎ロープで通行止めになっています。まだ舗装路には出ない様です。
そのまま山道を進むと一旦舗装路に出ますが、看板を見るとこの舗装路は工事用道路で登山者が歩いてはいけない様です。横断歩道を渡るだけで、反対側の林の中に入っていきます。
再び舗装路に出たらもう市ノ瀬は目前です。舗装路脇に「現在登山者歩行中」の警告を出すためのボタンがあるので、これを押して側道を歩いて行きます。鎖のゲートを跨いでだら、市ノ瀬に到着です。駐車場には駐車枠に入れなかった車がたくさん並んでいました。
時間は12時半頃、帰りのバスまで1時間ほど確保できました。
お疲れ山でした!
下山温泉
さて、バスが出るまで1時間あります。金沢駅周辺には立ち寄り湯が無いので、バスの時間までに白山温泉で汗を流していきます。
バス停(ビジターセンター)の真正面にある永井旅館では800円で立ち寄り湯ができます。ここに入っていきましょう!バス停にザックを並べて順番確保したら着替えだけ持って永井旅館へ向かいます。
こちらはナトリウム塩化物炭酸水素塩泉(旧食塩泉)です。湯船が2つあり、広い方は恐らく白山天然水の沸かし湯。狭い方が温泉の様です。洗い場は5席でアメニティもそろっていて、新しくしたばかりなのか綺麗で快適でした。
ちょっとだけ残念だったのは温泉の湯船を譲り合わない若者が入っていたこと。狭い方の温泉湯船は3人くらい入れるのですが、若い2名がずっと居座って動かないので、あとから入ってきた人が使えず可哀そうでした(最後に温泉湯船に入った私が最初に湯船を譲るという状況でした)。最近は「早い者の勝ちで占有して当然」と思っている人が多いので今後の日本は心配です。そもそも温泉はずっと浸かってるのはあまり良くないので、ほどほどで一度上がって休んだ後に再び入るを繰り返した方が良いんですけどね~。
さて、お風呂から上がったら缶ビール(400円)を頂いてバス出発の15分前まで入口の座敷でくつろぎます。入口は解放されているのでバス待ちの状況を見ながらのんびり待てるのも良いですね。
帰路
帰りも道の駅しろやまでトイレ休憩があります。何か売ってるか?と思って駅舎内を覗きますがが、あまり品ぞろえが無く、そんなにお土産物販に力は入れていない様でした。軽食なども置いてないのでご当地B級グルメなどにもありつけませんでした。もっとも、金沢駅まで戻ればお土産は充実です。海鮮の干物・漬物関係とお菓子等が多かったです。
東京へ向かう新幹線の三連休だけあって指定席は売り切れでした。自由席しか買えなかった私は並ばなければならないので、お土産には日本酒「白山」だけ買って帰ります。帰って呑んでみたら美味しいお酒でした。やっぱり水が良いんでしょう。スーパーなどでも「白山の水」が売ってます。
金沢であまり時間がなく、観光はできませんでしたが楽しい山行となりました。なお、新幹線は金沢始発だったので自由席は混雑することなく、ゆっくり座れました。