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北アルプス縦走(3/4) 鷲羽岳・水晶岳に登る
北アルプスの中でも槍ヶ岳・奥穂高岳や白馬岳・五竜岳の稜線は、未だ関東からアクセスし易いので何とか行けますが。その裏側の富山県から登る北アルプスの縦走コースは遠くて行くだけでもなかなかハードルが高い。ずっと前から行きたいと焦がれていた薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳の縦走コースは計画を立てたまま数年が経ってしまいました。
今回遂に、憧れの場所を歩く機会を得ることができたので、早速あこがれの地へと向かいました。天気にも恵まれ、想像していた以上の素晴らしい景色の稜線を歩くことができた。
ということで、今回縦走してきたコースをご紹介します。
本レポートは3日目、三俣山荘でテント泊してから鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳に登って奥黒部ヒュッテに下山するまでです。
時期
8月
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紹介ルート
総距離:62.7km 登り:5,477m 下り:5,386m
1日目
折立バス停~太郎平小屋~薬師峠~~薬師岳山荘~薬師岳~薬師岳山荘~薬師峠(テント泊)
総距離:14.3km 登り:1,720m 下り:782m
2日目
薬師峠~太郎平小屋~太郎山~北ノ俣岳~赤木岳~黒部五郎岳~黒部五郎小屋~三俣蓮華岳~三俣山荘(テント泊)
総距離:17.9km 登り:1,4857m 下り:1,250m
★3日目
三俣山荘~鷲羽岳~水晶小屋~水晶岳~温泉沢ノ頭~赤牛岳~奥黒部ヒュッテ(テント泊)
総距離:15.6km 登り:1,052m 下り:2,113m
4日目 奥黒部ヒュッテ~平ノ渡場~ロッジくろよん~黒部ダム駅
総距離:14.6km 登り:1,203m 下り:1,240m
三俣山荘~鷲羽岳
朝起きると周りは真っ白で風も強く感じました。隣のテントの「赤牛岳ピストンしてきた」の方は早めの準備で出発していきました。さすが赤牛岳までピストンしようとする熟練者だけあって撤収は非常に静かでテントから出るまで気付かないほどでした。代わりに離れたところにいる若者が、本日も真っ暗な時間から結露をぬぐうためにフライシートをバサバサと煩く振り回していた。周りより自分を優先するあたり、ちょっと将来が心配です。ちなみに私は結露を手ぬぐいで拭って絞ります。多少濡れたままですが寝ている人も居る中で音を立てる程無神経でいたくはありません。
撤収後、水を2.5L汲んで三俣山荘で最終トイレを済ましたら鷲羽岳へ出発です。昨日テントの中から見えていた鷲羽岳の美しい山容は、本日は真っ白なカーテンの向こう。頭の中では念のため撤退ルートの検討が始まります。
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暫く登っていくと鷲羽岳から下ってくるおじさんとすれ違います。お話をすると水晶岳まで行こうと朝早く出発したが、風強くて真っ白で危ないので帰ってきたとのこと。情報感謝しつつ再び登り始めます。
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入山前の天気図は天気予測の為に頭に入れてきています。この日は東北地方の日本海沖に低気圧が入るので、この辺りで朝方西風が強くなるのは想定済みです。ただし、午後にかけて低気圧は太平洋側に抜けていく予報だったので、私の予測では次第に北西風に変わって風も穏やかになるはず。とはいえ天気図は日々変わるので3日前の天気図では安心はできない。「行けるとこまで」は危ないので、まずは鷲羽岳まで登って様子をみることにした。
鷲羽岳への登りはザレ・岩・急登の斜面をジグザグ登っていくもの。角度はほとんど変わらずずっと登り。登っている間もガスが行ったり来たり繰り返していたが、山頂に着いたときは未だガスも多かったが、次第にガスが流れ回復の兆しが見られた。
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鷲羽岳~水晶小屋
水晶岳へ稜線を下り始めると急にガスが流れ、これから行く水晶岳が姿を現した!これなら行って大丈夫!さっきすれ違ったおじさん可哀そう!「もう少し待てれば晴れたのに!」と思いながら先に進む。
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一旦下って登り返し、ワリモ岳への登りはちょっと岩場で歩行注意です。ワリモ岳は山頂の岩の上じゃなくちょっと下に山頂碑があった。わざわざ登るのも危なそうなので、山頂碑のところを山頂としてそのまま通過する。
再び下ったところで振り返ると見事な槍の穂先!今日も尖ってます。大天井や常念も見えてますます天気は良くなりそうです。
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しばらく稜線を歩いて行くとすれ違う人が増えて来た気がした。水晶小屋に沢山止まってたのかな?と思いつつ歩いていると、どうやら雲の平の方から登ってきて鷲羽岳に向かう方が多いらしい。雲の平との分岐を越え、水晶岳方面に入ると登山者がぐっと少なくなった。雲の平からだと鷲羽岳の方が周回出来て人気な様子。
この辺りはお花畑も見られてなかなか良い稜線だったが、水晶小屋の姿は一切見えず。標高2,500mから上辺りにに雲がかかっていて真っ白な風景だった。
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登っていくと再び雲の中に突入してしまう。水晶小屋まであと10分の看板があり、ちょっと勾配が強くなる。ガスの向こうに透けて見える岩影を「水晶小屋か!?」と思いながら何度もだまされて登っていくと、やっと水晶小屋に到着。水晶小屋は稜線向こうにあるので、稜線まで登り切らないと見えない場所にありました。
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水晶小屋でコーラを買って給水します。本日はこの先テント泊する奥黒部ヒュッテまで小屋がなく、稜線伝いに下るので水場も期待できません。背負ってきた水はなるべく温存します。水晶岳は小屋からは真っ白でちょっと景色は望み薄ですが、雨に降られる心配はなさそうです。
水晶小屋~水晶岳
水晶岳小屋でコーラを飲んでいると、少しずつガスが取れてきました。野口五郎岳が見え、大天井岳が見え、常念岳が見え、槍まで姿を現しました!
何だコレ最高か!と水晶岳を振り返ると、なんと綺麗に水晶岳が見えています。雲に隠れられる前に山頂に着きたい!と残ったコーラを一気に流し込み、足早に小屋を後にします。
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ここから水晶までの稜線は晴れたおかげもあって最高!左右どこをみても百名山。青い空に深い谷と森。素晴しい景色に気分も上がりまくりです!
ウキウキ気分で稜線を歩いて行くと、水晶岳が近づくにつれてなにやら恐ろしいギザギザの鋭い岩肌が見えるようになってきます。水晶岳が日本百名山の中で3大難関の一つとは知りませんでした。
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確かに水晶岳を目指す人達を見ると、ザックを水晶小屋でデポして軽身で向かう人が多い様でした。1人だけ場違いなテント泊装備を背負い水晶岳に向かいます。安全を考慮して核心部に入る前にポールはたたんでちゃんとザックに仕舞います。
入っていくと確かに大変な岩場でしたが、ギザギザのほとんどは巻くのでそれほどそこまでひどくは無く、無事登頂を果たせました。まあ荷物をデポして登った方が正解だとは思いました。
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山頂で若い5人パーティの独りに声をかけられました。太郎平小屋でも私の姿をみていたそうです。その子たちは私と違って雲の平経由でここまで来た様で、水晶岳(北峰)に登ったら戻るとのことでした。若い内からこんな良い山に登れるなんて実に羨ましい!と思いながらお別れをし、稜線を更に進みます。
水晶岳~温泉沢ノ頭
一般的に水晶岳は南峰が山頂ですが、少しだけ離れたところに北峰もあります。登って行っても良いのですが、先ほど会話していた若者たちと登ると狭そうなのと、今日は先が長いので北峰はパスして下っていきます。
水晶岳からの下りは結構急でガレているので、石を落とさない様に慎重に降りていきましょう。
下りきって稜線を歩き始めると左下に大きな雪渓が残っています。気分的にはひんやりするものの、稜線上は森林限界以上で木蔭がなく、日差しが強いので日焼け止めを塗っていくことにします。
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暫くは岩稜帯で結構大変です。水晶岳までと違ってこのコースを歩いている人の姿は前にも後ろにも一人も見えず、結構マニアックなルートなのかな?と心配になります。
稜線のアップダウンはあるものの、全体的には下り基調の様で暫くは楽に歩けました。
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温泉沢ノ頭の手前でお腹が空いたので富山名物の昆布パンを食べてエネルギーチャージします。ふと思いついて携帯電話の機内モードを解除してみたら珍しく電波がつながりました(au)。不通期間にたまっていたメールが続々入ってきます。どうやらここ数日の間、富山県のこの辺りは天候が悪い予報だったようです。本日も午後から発雷確率が上がるとの注意も届いていたので、なるべく早く稜線を下ろうと重い腰を上げ、先を急ぎます。
温泉沢ノ頭からは高天原に下りる分岐がありましたが、こちらも歩いている人の姿は見えません。赤牛岳は日本二百名山なのですが、やっぱり遠くてハードなのであまり足を延ばす登山者が居ないようです。
温泉沢ノ頭~赤牛岳
ここまで結構歩いてきたつもりですが、赤牛岳はここから2時間。赤牛岳の美しい山容はずっと前から見えているのですがなかなか近づいてきません。
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遠目には赤砂に覆われたなだらかな稜線の様に見えますが、スケール感がバグっているだけで実際にはアップダウンも多く、稜線の反対側には岩がゴロゴロしている場所もあって登る必要があるので結構ハードです。
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雲は多いものの赤牛岳やその奥にそびえる立山、五竜、鹿島槍等が見えて素晴らしい稜線です。遠く眼下には明日下る黒部湖も姿を現しいよいよ山行も終盤に入ったと感じます。
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景色を眺めて元気をもらいながらとにかく歩きます。最後の最後までなんちゃって山頂が出現し、気力をそがれながらもなんとか赤牛岳山頂に到着しました。
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振り返ると水晶岳の向こうにも黒部五郎岳の稜線が見えて、「ずっとあそこを歩いて来たんだ。」と感慨もひとしおです。
赤牛岳~奥黒部ヒュッテ
もう少し景色の良い稜線は続きますが、今回の山行での山頂はこの赤牛岳が最後。これまで歩いて来た稜線に感謝と別れを告げて下りに入ります。
ここからの下り始めは「これ崩落地だよね?」と思うような場所でした。ザレた急坂を下っていきます。その先も崩落した崖と崩落を留まったハイマツの間を歩いたり、疲れた体にはなかなかキツイ稜線を歩きます。
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怖い序盤を過ぎたらわずかにマイルドな稜線を歩きますが、ほどなく樹林帯に入っていきます。最初は細い雨水が流れる涸れ沢の様な道ですが、次第に通常の山道になっていきます。この辺で少し雨がパラツキ出したので、本当に雷があるのかな?と暫く警戒しますが、レインを着るまでもなく雨は上がりました。
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ここから先は木の根や岩を使ったアスレチックが多数出現します。雨は上がったものの木や岩が濡れて滑りやすくなっていて気を使います。
いい加減疲れて登山道のアスレチックにもうんざりしてきた頃、前方から人の声が聞こえました。まさか疲れて幻聴でも聞こえてきたのか?と思いながら進むとちゃんと人の姿が見えたので安心です。奥黒部ヒュッテまであと少しという所で前方を歩いていた大きな声のガイドさんと女性3人のパーティーを追い抜き、無事に奥黒部ヒュッテに到着しました。もうヘロヘロです。
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へろへろの理由は水不足もあるようで、水晶小屋時点で2.5Lの水を持っていましたが途中で飲みきり、ヒュッテに着いてすぐ1Lくらいがぶ飲みでした。ここの水は水量も豊富で、冷たく美味しいので余計に飲んでしまったかもしれません。
奥黒部ヒュッテテント泊
受付後(テント泊1,500円)テン場に向かいます。テン場はヒュッテからは見えず、ちょっと下の方にあるようです。ここのテン場は砂地でフラットなので今夜はよく眠れそうです。ただ近くに水場とトイレがなく、ヒュッテ併設の水場とトイレを使うのでちょっと大変でした。
水汲みに小屋まで登ると、前で先程抜いてきたパーティーのガイドさんと本日テン泊の方がお話していたので、小屋で買ったビールを飲みながらお話に混ぜていただきました。ガイドさんは現在65歳で素晴しい体力。私ももう少し頑張りたいですね。
テン場に戻ると疲れで食べるのも面倒でしたが、明日の為のエネルギー補給とザック重量減らしの為に頑張って夕飯を摂ります。
明日は早いので食事後は荷物を整理して就寝します。久々に標高1450mまで降りてきたので、テン場は少し暑く感じました。