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北アルプス縦走(2/4) 黒部五郎岳に登る

 北アルプスの中でも槍ヶ岳・奥穂高岳や白馬岳・五竜岳の稜線は、未だ関東からアクセスし易いので何とか行けますが。その裏側の富山県から登る北アルプスの縦走コースは遠くて行くだけでもなかなかハードルが高い。ずっと前から行きたいと焦がれていた薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳の縦走コースは計画を立てたまま数年が経ってしまいました。
 今回遂に、憧れの場所を歩く機会を得ることができたので、早速あこがれの地へと向かいました。天気にも恵まれ、想像していた以上の素晴らしい景色の稜線を歩くことができた。
 ということで、今回縦走してきたコースをご紹介します。
 本レポートは2日目、薬師峠でテント泊した朝から黒部五郎岳に登って三俣山荘でテント泊するまでです。


時期

 8月

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紹介ルート


 総距離:62.7km 登り:5,477m 下り:5,386m

1日目
 折立バス停~太郎平小屋~薬師峠~~薬師岳山荘~薬師岳~薬師岳山荘~薬師峠(テント泊)
 総距離:14.3km 登り:1,720m 下り:782m
★2日目

 薬師峠~太郎平小屋~太郎山~北ノ俣岳~赤木岳~黒部五郎岳~黒部五郎小屋~三俣蓮華岳~三俣山荘(テント泊)
 総距離:17.9km 登り:1,4857m 下り:1,250m
3日目 三俣山荘~鷲羽岳~水晶小屋~水晶岳~温泉沢ノ頭~赤牛岳~奥黒部ヒュッテ(テント泊)
 総距離:15.6km 登り:1,052m 下り:2,113m
4日目 奥黒部ヒュッテ~平ノ渡場~ロッジくろよん~黒部ダム駅
 総距離:14.6km 登り:1,203m 下り:1,240m

薬師峠~太郎山

 朝5時20分頃にはテントを撤収して出発です。テントは外側も結露していて昨夜雨降ったのかな?と思いましたが、夜は満月が近く月の明かりが煌々と照らしていてヘッドライト無しでも歩けるほどでした。
 登山道では良い登山者ばかりで安心していましたが、テン場では深夜2時頃から喋りまくってるおじさんや、テントの水滴を払う為に暗いうちからフライシートをバサバサやるおじさん(同じ人)。そしてそれをマネする初心者がいて残念。良く眠ることができませんでした。今日は疲れが少し残ったまま、先ずは太郎平に登り返していきます。
 天気は昨日より格段によく、太郎平で振り返ると大きな薬師岳が見えて気分は上々です。
 前方には太郎山、北ノ俣岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳の山頂が見え、あそこまで今日歩くの?と自分の体力を疑いますが、自分を奮い立たせて歩いて行きます。

左側にちょっと出てる▲が槍ヶ岳

 その他、明日歩く予定の鷲羽岳や水晶岳、槍の穂先も稜線の向こう側に見ることができました。
 太郎平小屋を通過すると直ぐに雲の平との分岐があります。
 野天風呂があって人気なのか多くのパーティが左のへと薬師沢を下りていきます。私も温泉には興味はありますが、本日は日本百名山の黒部五郎岳が目標。右の坂道を登っていきます。
 登り切ったところで右への分岐があり、太郎山の山頂があると書いてあります。朝から素晴らしい景色で山の同定に余念がなかったせいで既に予定時間を押していますが、せっかくなので立ち寄っていきます。
 朝露に濡れたハイマツの細道を歩くと山頂はすぐそこ。眼下には雲海が拡がり、太郎さんの影が映っています。そして、遠く西の方を見渡せば雲に浮かぶ白山の山影。素晴らしい景色でした。これだけ観て帰っても十分楽しいでしょう。

太郎山の山頂だけでも満足

太郎山~北ノ俣岳

 太郎山からは一旦下ります。遠くには雲海、笹原には池塘もみえ、なだらかでとても気持ちの良いルート。朝から気分が上がって返って疲れてしまいそうなくらいです。

雲海に浮かぶのは石川県の白山

 登り返しに入ってもしばらくは木道があり景色を楽しみながらゆっくりと登っていきます。しかし、いつの間にかぜいぜい言い始めていました。斜面の中間くらいからいつの間にか登りの角度が上がってきて、登り着る手前では結構な急登になります。
 なんとか急登を登りきると、そこはなんちゃって山頂であることに気づかされます。遠くの方に北ノ俣岳山頂が見えました。距離はそこそこありますが標高差はそれほどなく、なだらかな稜線歩きが楽しめます。周囲はお花畑でチングルマの綿毛に朝露がついてキラキラと輝いて見える素晴らしい稜線でした。

朝露に濡れるチングルマ

 やっとで北ノ俣岳に到着するとそこは絶好のビュースポット!なんでここは百名山じゃないんだろう?と疑問に思う素晴らしい景色でした。
 雲海に浮かぶ白山から左周りに視線を移せば、奥から御嶽山、乗鞍岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳が綺麗に並んで見えます。更に三俣蓮華岳、奥の方には槍の穂先や大天井岳、そして、鷲羽岳、水晶岳、赤牛岳、薬師岳と全方位絶景です。そして、薬師岳の左奥には剱岳の山頂がちょこんと姿を見せていました。

薬師岳の左にちょこっと見えるのが剱岳

 ここから先も絶景のご馳走だらけですが、北ノ俣岳はお勧めの山頂ですので、太郎平小屋まで来た際は是非足を延ばすことをお勧めします。

北ノ俣岳~黒部五郎岳

 美しい稜線はずっと続きます。とくにこのルートは御嶽、乗鞍、笠、黒部五郎の並びを正面に見ながらの広々とした稜線歩きが楽しめ、「最高か!」と感嘆の言葉が止まりません。

右から御嶽山、乗鞍岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳

 ただ暫く歩いていると気づきます。「あれ?黒部五郎岳が近づかない・・・」という事に。槍の穂先同様、スケールがでかいと距離感にバグが起きて近そうに感じてしまいますが、黒部五郎岳もまさにそれです。なかなか着かない!
 途中で急に岩ゴロゴロ地帯に入ったと思ったら赤木岳の山頂碑が登山道に立っていました。最高所の岩の上にも登れそうですが、改めて黒部五郎岳を見ると全然近づいていないので山頂碑を山頂として先へと進みます。

赤木岳の山頂碑は山頂じゃなくここ

 アップダウンを繰り返しながら歩いて行くと、結構下ったところで「中ノ俣乗越」の表示を見つけて休憩。ここからがやっと本格的に黒部五郎岳の登りの様です。徐々に急になる岩場を登っていき、黒部五郎岳の肩が近づくとガレ場になります。丁度時間は10時ごろ。麓の雲が太陽に熱せられて上がってきてしまい景色を遮ります。その代わり、日差しが和らいで涼しい。

中の俣乗越で休憩しよう

 なんとか肩についたら沢山のデポされた荷物があります。ここから黒部五郎岳まではピストンしますので、私も荷物をデポして登っていきます。
 往復25分のガレ登り。山頂にはたくさんの人がのんびりと景色を楽しんでいました。恐らくこの辺の方々は黒部五郎小屋でお泊りなので時間にゆとりがあるのでしょう。私は今日もっと先まで行くので、記念写真だけ撮らせてもらったらすぐに下山します。

後ろが真っ白

黒部五郎岳~黒部五郎小屋

 黒部五郎岳から肩まで戻って荷物を回収しました。登って来た時見えた黒部五郎小屋の屋根も雲がかかってもう見えません。
 ここから稜線伝いにしばらく歩いた後、カールに下っていきます。この下りが短いがキツイ!結構な急下りです。
 下りきったところには沢が流れているので、ここでザックを降ろし、沢の上流へと登ります。薬師峠を出るときに2.5Lの水を背負いましたが、ここまでで全部飲み干してしまいました。黒部五郎小屋へは沢に出たところから約1時間。もたなくもないが水があった方が安心です。この沢は黒部五郎岳のカールに残る雪渓の雪解け水ですが、一応浄水フィルタは使いました。冷たくてとても美味しいのでここでも飲んでいきます。

カールに雪渓が残っていて雪解け水が流れています

 さて、この先はなだらかですが、大きな岩がゴロゴロで非常に歩きづらいです。距離と等高線だけ観る感じよりも時間がかかるので注意しましょう。登山道の周囲にもバカでかい割れた岩が転がっていて迫力のある景色が楽しめます。

大きな岩がゴロゴロしています

 ちなみに標高2,300mくらいまで降りるので、樹林もあり、黒部五郎小屋はなかなか姿を現しません。
 やっとのことで黒部五郎小屋が見えると、小屋はすぐ側です。太郎平小屋から歩いて来た人の多くはここでテン場に向かいます。私も疲れているのここでテント泊したい気持ちいっぱいですが、もう少し頑張ります。
 トイレ200円。水も汲めますが、雪解け水沢山汲んできたのでここでは補給せず。

黒部五郎小屋~三俣蓮華岳
 小屋で親子丼とコーラを補給したらリスタートします。小屋の裏側に回り、林の中に突っ込んでいきます。

黒部五郎小屋でエネルギー補給

 いきなりの岩急登で湿気が多く暑いが、小屋飯のおかげで元気いっぱい!さらに涸れ沢のような細いガレ階段で一気に高度が上がっていきます。
 森林限界を超え、急登が一段落してなだらかな道に変わると、涼しい風も吹いてきて気持ちよく歩けた。気持ちよく歩けた。
 三俣山荘への巻き道分岐の手前では岩、細巻、ザレ等にちょっと悩まさたが、足元はお花畑で心が和んだ。

三俣へ向かいます

 巻き道分岐で最終休憩していると、三俣山荘からやってくる人はほとんど巻き道を使って黒部五郎小屋を目指していた。巻き道もアップダウンが多く結構大変らしい。確かにコースタイム上も山頂経由と巻き道にはそれほど時間差がない。まあ、私は元々三俣蓮華岳に登る計画なので、山頂経由で三俣山荘へと向かう。
 なんちゃって山頂も多く、疲れでなかなか足もはかどらないが、確かにそこまで時間がかからず三俣蓮華岳に登頂!

三俣蓮華岳は雲多くて残念

 山頂の三角点が古いのも含めてたくさん立ってるあたりに歴史を感じる。皆触っていくから風化も早いのだろうか?

三俣蓮華岳~三俣山荘

 三俣蓮華岳は双六に抜ける道にもなっているので、途中分岐が色々あって道が分かりづらい。
 山頂から三俣山荘に下るのは山頂碑のすぐ側の道。
 ここからの下りはちょうど同じルートで登ってきたおじさんと話しながら歩いていく。話は面白いのだがルートチェックや写真、動画撮影が出来ないのが難点。よくおしゃべりしながら歩いてる人達を見かけるが、話しながら歩いてちゃんと山道に注意出来てるのか心配になる。
 三俣山荘手前でおじさんと分かれて私はテン場を物色。良い場所を見つけてザックを降ろしてから三俣山荘に受付に向かう。

三俣山荘の向こうに明日登鷲羽岳

 三俣山荘のテン場は広くかなりのテントが張れる。だが、テン場から山荘からは距離がちょっとある。トイレがテン場にはなく、山荘まで行かなければならないので端の方に張ってしまうとトイレが大変だと思う。
 この日は山荘の水場が故障なのか、山荘泊のお客さんもテン場の水場に水汲みに来ていた。
 テントを張ったら先ずはビール!今日はとにかく疲れた。因みにここの山荘はビール缶を潰して返却するルールなので小屋前に潰す用のハンマーが置いてある。
 夕方、隣のテントの人と話すとお二方とも連泊していて、「赤牛岳までピストンしてきた」「水晶岳まで登って、雲の平に下りて温泉入って返ってきた」とかクレイジーな山行をしていた(笑)。私もまだまだ修行が足りないようです。

テン場でビール飲みながら鷲羽岳鑑賞

 といわけで明日を楽しみに本日も就寝。お疲れ山でした!

動画


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