稼ぐ力、を組織が得るためのDX内製化
初めての投稿になりますが、前置きは兎も角、日本が安いといわれることが嫌でグ研をスタートしました。中小企業から大手まで業務でお会いした皆様を、おしなべて整理してみると次の様に感じます。
まず、①中小企業は、『ITリテラシーの低さに起因する生産性の浪費』が顕著、②中堅大手は日本型組織の特定からくる『部分最適による生産性の浪費』が顕著です。また③大手になると『会計無知と行き過ぎた責任感による生産性の浪費』が課題になります。全ての規模において、一番の問題は、これらの浪費を組織が無自覚であるという点です。
それぞれ、考察を追加させていただきたいので、お付き合いください。
①中小企業の場合から。基本的に組織には、ホメオスタシス(始まったことを変えたくない)バイアスが働きます。従って、ITやDXを駆使した業改が出来ると分かっていても社員側では自ら改革を行おうとする事はまれです。むしろ非効率な方が多少の残業代を受け取ることが出来るので、心の中では好んでいる時もあるといえます。
その点で、業務の整理について社長が号令をかけることは重要です。デジタル化とアナログ維持と、時には後者が良い例もあるので、一概にDX推進とは言わないものの、既に始まった採用難、生産年齢人口の減少を考慮すると業務量と業務負荷率の考察は死活問題です。一人の社員が対応できる業務量を上げていくために、中小企業ではITの活用は必須課題です。
Office365の導入やGoogle workspaceを使った、クラウド利用による提案書/契約書の電子化、モバイル情報アクセス環境の整備、またWeb会議による訪問の効率化、電子契約による調達/営業工程の短縮、スマホ利用による社員導線の改善(店舗や工場の場合)、アプリによる顧客接点の電子化なども、全て社員の戦闘能力を、努力なく向上できるから重要になります。
②次に中堅大手の場合、この規模の企業では、IT管理者が社内に居たり、一定のIT業者との付き合いがあり、基礎リテラシーは社員が持っています。また社内規則の整備により、モバイルやクラウドも利用済みである事が大半です。すなわち一定の業務改革は完了しているといえます。そこで次に発生する課題が部分最適です。これはプロ意識の副作用と言えますが、営業の情熱が強ぎて製造が作りきれない量や頻度を売りたくなる場合、また運びきれない需要に応えようとする場合、逆に製造側が、原価目標を意識しすぎて、売り捌ききれないロッドで作ってしまう場合、捌ききれないロッドで調達をしてしまう場合などです。全てこれらは、営業部門内の効率、製造部門内の効率を目標設定しているために起きる現象です。売れない在庫は、原価の棄損のみならず利益をダブルインパクトでつぶします。また不必要な一括発注は会社のキャッシュフローを強烈に棄損します。営業側の情熱からおきる提供単価や提供納期の問題は、案件単体では赤字となる場合さえ発生しています。これらも全て理解されていないマネジメントの問題になります。
組織として赤字になる発注の為に社員が一丸となって働いていては、会社は何のために存在しているか意味不明です。しかし、そんな意味不明の事が当たり前に起きているのです。これが中堅大手の課題です。「見える化」という言葉は普通の一般用語まで成り下がり(笑)/身近になりましたが、必要十分に「見える化」できている企業はないでしょう。
③最後に大手です。この規模でも中堅にある部分最適と全体最適のジレンマは続きますが、大手では更に、「全社方針と部内方針」の方向性の統一に苦労します。複数の多角事業をもつ大手では、全社ポートフォリオを考えるにあたり、個別事業の目標が設定されます。対投資家目線ではROICというキーワードがありますが、各事業別ROICを設定し、計画ROICと実績ROICの対比を行う必要があるわけです。大手規模になるとD/Eレシオで投資家から資金比重が高くなる傾向にあります。投資家は企業内の投資配分を強制できないため(取締役会の決定程度しか)、投資先企業内で、投下資金が計画通りの付加価値を生み出しているかが気になるわけです。これが、ROICの計画予実とです。ポートフォリオを会社の意思として表明し、それを現場に徹底するために、ROICツリーなどによって事業側のKPIと結び付け、事業側が方針を理解し、腹落ちして頑張るバランスを作る仕事が、非常に重要になります。一言でこれを説明できる用語が実はあり、FP&Aと言います。最近の4~5年で結構広がりましたが、まだまだ日本国内ではマイナーな業務/担当者/役職です。日本型組織では、ファイナンス意識が弱いので、買収防衛や物言う投資家への適切な反論、また投資家を納得させるだけの現場力の掲示が弱い事が多いです。
今日は長くなりましたが、どの企業規模でも、やはり生産性の改革は必要なのです。答えのないゲームですが、疲れて来たら業界平均と比較し、息抜きをしながら走ればよいゲームです。企業は誰のものなのか?企業はどこまで儲けたらOKなのか?などには、様々な意見があります。しかし、社長の意見と利害関係者の意見の2点がその答えである気がします。後者は金融機関かまたは出資者です。金融機関は利子さえ担保すればOKであるし、出資者の側にも計算する原則はあります。資本コストを上回る数字を作り、リスクプレミアムを考慮した数字を計画通りに稼ぎ出すことを有言実行すればOKです。この意味で、事業計画や投資家との対話が、非常に重要な企業の定期ジョブという事になります。
どの規模の企業も更に一段と強くなり、失われた30年を、この次の30年では少しでも取り返せるよう、グ研では、一期一会のお客様に進言を続けていきます。誰に頼んだら良いかわからなくなったときは、お気軽にグループ生産性研究所の問合せにご一報ください。