Fender Custom Shop“1963 Jazz Bass Journeyman Relic -Black over Aztec Gold-”について
みなさま、こんにちは。今回は弊店オーダーによるフェンダー・カスタムショップによるジャズベースを紹介します。
精悍なブラックのカラーリングと思わせておきながら、時間が経つと派手な本性を現す「魔性の魅力」を持つベースです。
基になっているモデルはモデル名にもある通り、1963年のジャズベースです。
1963年のジャズベースの特徴としては、各弦独立のミュート機構が撤廃される。ブリッジとリア・ピックアップの間に取り付けられていたアース線がなくなり、12フレットのポジションマークのドットの間隔が狭くなる点が代表的な特徴でしょうか。
ただ、フェンダー・カスタムショップの1962年モデルで各弦独立ミュートの取り付け穴が無いモデルもありますので、ジャズベースの歴史として覚えていただければと思います。
今回紹介のベースは1963年仕様のジャズベースとなりますので、「ミュート機構が無くなった」との時代考証は間違いなしです。ブリッジとリアピックアップの間のアース線は1963年に無くなりますので、「ミュート機構無しでありながら、アース線は残っている」というマニアックな過渡期のスペックになります。
木材スペックとしては1950年代からのフェンダーの定番マテリアルとなる2ピースのアルダー材をボディ材に使用し、柾目のメイプル材をネックに使用しています。指板材も定番のローズウッドを使用しており、1962年以降のラミネート方法として知られている、ネック材と指板の接着面を指板表面の曲線と併せた「ラウンド貼り」になります。
指板表面のドットはちゃんとクレイ・ドットで、細かいポイントですがちゃんとサイド・ドットもクレイ・ドットになっています。
指板表面のラジアスはヴィンテージに倣ってきつめの7.25インチになっています。ナット幅は一般的なジャズベースと同様に約38mmとなっていますが、7.25インチの指板ラジアスとなることで細く感じます。ネックグリップはジャズベースでは定番となる「’60 J-Bass “U”」ですが、左手でネックを握りこむスタイルのプレイヤーにはスリムでオススメです。
フレットまでヴィンテージ・スタイルの細身のフレットだと、懐古主義すぎて昨今のプレイヤーには演奏性がよろしくないので、フレットはミディアム・ヴィンテージです。
ヴィンテージ・フレットよりもわずかに高さがあり幅の広いフレットで、ミディアム・ジャンボよりも幅を抑えて、ナロー・トールよりも高さを抑えています。
ピックアップにはブラックボビンで手巻きの「Hand-Wound Vintage J-Bass」を2基マウント。2ボリューム、1トーンのコントロールになります。コンデンサーの数値は0.05μFになるので、ヴィンテージのCircle Dなどと同じ値ですね。
ここからは一番気になるルックスです。
一見すると黒のジャズベースですが、ポイントとしてはマッチングヘッドです。ブラックのヘッドですが、ロゴ・デカールは通常通りなので、一見すると「Fender」のロゴだけがゴールドで輝いています。
ヘッドがブラックなのでもちろんボディもブラックです。
ただし黒の下地には1950年代のフェンダーのカスタムカラーの一つである「Aztec Gold」がペイントされています。異なるカラーを重ねる「マルチレイヤー」は昔から存在していましたが、当時はレギュラーカラーのベースを作った後にスペシャルオーダーでカスタムカラーの注文があった際に、既存の塗装を剥がさずに上から重ね塗りした、横着な製作方法によるものです。
完成時はオーダーしたカスタムカラーの楽器でオーナーは大満足ですが、当時はラッカー塗装で薄い。弾いていくうちにぶつける….ぶつける….ぶつける….剥がれる….剥がれる….剥がれる….ってことで下地に残ったままの色が顔を出すって寸法です。
もちろん当時は「マルチレイヤー」なんて認識もなかったでしょうから意図して作っていたことはないはずです。
一般的には「レギュラーカラー」を隠すために「カスタムカラー」を「上から」ペイントするのが普通ですが、このベースはカスタムカラーの上にカスタムカラーをペイントする贅沢なマルチレイヤーになっています。
控えめなレリックである「ジャーニーマン・レリック」なので下地のアズテック・ゴールドはほとんど見えませんが、よく見るとちゃんと「アズテック・ゴールド」してます。コントロールパネルの中の縁あたりが分かり易いです。
ちなみにピックガードはミント・グリーンの3プライです。
サンバーストとオリンピック・ホワイト以外のカラーではピックガードは白と決まっていますので、ヴィンテージに倣っています。
ここまで説明してきましたが、言いたいことは「黒いベースは格好良い」ってことです。
しかも使い込んで塗装が剥がれていったときに顔を出すのが、「ゴールド」ってとこにギャップがあってグッとくるのではないでしょうか。
試奏動画もありますので見てみてください。
https://youtu.be/TRz0dVSMfGg?feature=shared
今回もお付き合いいただき、ありがとうございます。次回もお付き合いいただければ幸いです。
八坂
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