停滞

Netflixでプリキュアをみた。
劇場版「HUGっとプリキュア!云々」という作品で、応援上演モノらしくライト型の玩具が女の子供に配布されたようだった。話の途中でプリキュアが我々に向き直り、手に持っているライトを振って応援しろと語りかけてくる。プリキュアは応援のチカラによってプリキュア力(りき)を増幅させ魔物を倒すのだ。
私もとりあえずMacBookの液晶越しに「ぷいきゅあがんばえ〜」をした。そうすることが正しいと思ったからである。私のささやかな応援も、プリキュアの支えとなり喜ばれるのだ。

プリキュアは強い。
今まできちんと視聴したことがなかったので気づかなかったが、彼女たちはめちゃめちゃ肉体的な戦い方をする。初代プリキュアは蹴りを主な攻撃手段としていた。黒い方の彼女はラクロス部なので足腰が丈夫そうだし、白の彼女は恐らく茶道部か何かだろうから長時間の正座に耐え得る強靭な膝下をしているのだろう。プリキュア全部出しの映画なので、いろんなプリキュアのいろんな攻撃を見ることができた。よかった。

プリキュアは強いが、残酷である。
前提として、プリキュアは他人と組んで戦う。つまり彼女たちには「プリキュアである」という固い約束で結ばれた仲間がいるということだ。憎い。わんぴいすと同じである。わんぴいすが男女混合グループであるのに対してプリキュアは中学生・高校生のなかよし女子グループだからタチが悪い。青春コンプレックスを刺激されて暴れてしまう。私のようなお友だちのいない女の子供が見たら大変傷つくと思う。私はガキの頃自分にお友だちがいない状況に対し「私が特別だから…」と逃げの解釈をして自衛していたためにリアルタイムでプリキュアに傷つくことはなかったが、今みたらめちゃくちゃ羨ましくてちょろりと涙が出た。

プリキュアは強いが、残酷である 2
本作の敵キャラは「ミデン」というてるてる坊主みたいなやつで、こいつは使われなくなって中身も抜き取られた同名のカメラのオバケ(?)である。カメラの役割である「思い出を写す」機能を果たせぬまま長い時間を孤独に過ごしたミデンは、プリキュアの「記憶(思い出)」を奪い取って自分のものとすることでココロの穴を埋めようとする。記憶を奪われたプリキュアはチカラを失い幼児化してしまうため(バブ)、ミデンと戦えるプリキュアはどんどん少なくなっていく。しかもこいつは奪った記憶から技コピーが可能なので集めた記憶の分だけ強くなるのだ。幼児化して完全にお荷物となったかつての仲間を両手に抱え疲弊しきった表情を浮かべるピンク髪(たぶんHUGっとのメインキャラ)の描写からは、「ガキの世話はめちゃくちゃだるい。つまりお前たちもこんな感じでクソだるかったです」というメッセージが伺える。プリキュアはガキの世話もきちんとできてえらい。泣いてるガキにはもっと泣いてる保護者をぶつけることで泣きをやめさせるテクニックも紹介されていた。私のママがよくやってたやつだ。その後なんやかんやあってプリキュアは全員記憶を取り戻し総出でミデンを攻撃する。先ほどのピンク髪はミデンと対話してココロの檻を壊す役割を担っているので戦闘には不参加だった。

プリキュアは強いが、残酷である 3
ピンク髪にほだされて改心してしまうミデンが悲しい。彼は孤独だ。孤独な者は自らを守るためにしばしば外部に対して攻撃的になりがちである。彼の孤独に寄り添うこともされぬまま、彼はただプリキュアであるだけの、プリキュアになれただけの女の中学生に説教され抱き締められて、彼の孤独を理解した気になられてお話は終わりになるのだ。しかもミデン1に対してプリキュアは大勢いる。孤独な者に大勢でかかっていくというのはなんとも卑怯な行いではないだろうか。寂しい者を寄ってたかって成敗する行いは果たして正義と呼べるだろうか。彼を思うならば、記憶を奪還した時点で説教かまして元の世界に帰りゃいいのに、あの仕打ちである。ピンク髪も、「あなたはひとりじゃないよ…」的なことを言っておきながら結局最後は元の世界に帰ってしまう。助けるよ、寄り添うよ、あなたの気持ちわかるよと思いやりのポーズをとる人間は信用ならない。マジで女は嘘ばっかつくし交際していてもいいことひとつもない。しかもこの女、実際に見てもらえればわかるんですけども、最後仲間に呼ばれて立ち上がる際に自分の膝で項垂れてるミデンを押し除けてるんですよね。そのシーン見ていてエッ!?って言っちゃいました。つめて〜!!!怖っ!!!怖っ!!!

私がたかだかプリキュア映画の一作品にマジになっているわけは、敵キャラミデンの行動が自分によく似ていると感じたためである。
彼はプリキュアに対話を持ちかけられているときめちゃくちゃ逃げます。孤独な者は対話を嫌うんですよね。自分の内面がボロボロに弱いのを知っているゆえに。私もカウンセラーと喋るのマジで嫌だったし今も自分を勝手に分析されることに強い不快感を感じます。先述の通り孤独な者は弱さを攻撃的な態度で覆い隠しているから、せっかく被った安心毛布をぽっと出の知らんやつにガバガバ剥がされちゃ堪らんというわけです。孤独な時間は人をどんどん弱くします。弱さを隠すために怒りで武装するけど、すぐボロが出る。孤独な者はいつも怒っています。だからいつも敵キャラになっちゃうね。それと、Twitterに自分に@つけて載せたシーンがあるんですけど、あれは普段の私そのままです。プリキュアたちからたくさんの記憶を奪い取って上機嫌のミデンだが、突然押し黙って「……つまんない」と呟いたあと、つまんないつまんないと叫びながら積み上げた記憶の山を薙ぎ払う。おま俺wすぎてあのシーンだけを繰り返し見て涙を流した視聴者は私くらいだと思う。それくらいそのままだった。楽しかった気分が急に消え失せてすぐ苛立ちに怒りに変わる。つい先ほどまで楽しかったはずなのに、その瞬間から「楽しかった気持ち」が再現できなくなる。ふとしたきっかけで、あるいはきっかけと呼べる出来事がなくても、頻繁にあのような状態になってしまう。私のなおしたい癖のうちのひとつです。それと孤独な者あるあるとして「物をめちゃくちゃ集めたがる」があります。ココロの空虚さを誤魔化すために物理的な安心感を得ようとする。ゴミ屋敷を作る人は寂しい・不安である状態が多いらしい。でもいくら買っても奪っても残しても、物体だけに依存していてはいつまで経ってもココロの安寧は訪れないよね。私には買い物依存の節があるな。

終始気の毒な敵キャラだったな。
涙なしには見られない作品でした。
一見の価値、アリ!!!

ぷいきゅあ あいあと〜

#プリキュア #映画 #女児向けアニメ


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