恋愛小説
以前に友人のお薦めで渡辺淳一「失楽園」を読みました。
一言で言うと「凄まじい」小説でした。作家と言うものは凄いものだと感心させられました。
ストーリー自体の展開もありますが、迫真の描写力。そして、男と女のそれこそ究極の愛の姿。
あのように二人が究極まで行けること自体も凄いですが、性愛の描写も克明で、その克明さ故に迫真の臨場感に圧倒されます。
男と女の性。
そうした性を人間に与えた自然とは何なのか。
あの世界の向こう側には一体何があるのか。
もはや、結婚、不倫、とかの枠組みを大きく取っ払ってしまった世界を恐ろしいまでに描写しています。
もはや、恋愛小説等と言うジャンルには収まらない世界が、そこにはあります。
その関連で「ベティブルー」、この映画を思い出しました。
愛の赴くまま、全てを擲ち、奔放に、周りなんかお構いなし、二人だけの純粋な世界のために。
「失楽園」と共通するものがあります。
こうした二つの世界を経験させられると、世間一般の私達は打算的に生きていることは勿論、恋愛においても打算的ではないのか?
と言う素朴な疑問を持ってしまうくらいです。
実はこうした生き方の原型をみんな持ってはいるが、現実の価値観、体裁を保つために、ただ押し隠しているに過ぎない。
そう、思ってしまいます。
そうした意味でも、今の自分を覚醒させるに充分な小説でした。
一つの経験、実際には経験はしていないけれど、確かに作家の力量によって、自分自身の経験のようにまで感じられます。
芸術とは凄いものです。ある一線を越えて、芸術までに昇華したものには、時間を超えて時代をも超える何かが備わっているものですね。