連載『オスカルな女たち』
《 母か、女か、》・・・16
(責められているのだろうか…?)
「私も、お父さんしか知らないから…それがどういうことなのかはなんとも解らないし、知らないことは追及しなくても、子どもが丈夫に育って、家庭がうまくいっていればなんの問題もないと思っていたのよ。いいえ、思いこんだのね…」
守られて、尽くして、家庭が円満であれば、「女のしあわせ」は確保され安泰なのだとすりこまれて育った時代。「女三界に家無し」とはよく言ったもので、跡継ぎにもならない女(娘)は嫁ぐまでは親に養われ、嫁ぎ先では夫やその家族に従い、老いさばらえては子に世話になる、一生安住の地に落ち着くことなく生きるものと定められた身。それを倣って健気に生きてきたと、頼子は言う。
「でもね、お父さんはとても優しい人だったの。子どもも授かったし、私はそれでもしあわせだったのよ…」
それでも、しあわせだった・・・・。
そう語る頼子は、「しあわせだった」と言いながらもどこかさみし気で、いつもの気丈さは見受けられない年老いた母親そのものだった。
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