海4

連載『オスカルな女たち』

《 おとなの階段 》・・・4

「せめて…私という薔薇に魅せられた『蝶』とでも言ったなら、まだマシだったわね」
「じゃ、じゃぁ…」
「馬鹿ね。女に言われてどうするの、情けないひと」
「かつて私を『蛇苺』だと言ったひとがいたわ。誰もが薔薇や蘭やユリといった高価な花に例える中、蛇苺よ? でもその彼、たとえ毒にあたっても世界中の蛇苺を食べつくすと言い放った…」
 玲(あきら)はそう言って、瞬きしながら男を見上げた。
「蛇苺…そ、そりゃぁひどいな」
「えぇ、でも。蛇苺もまた、バラ科の植物よ。あなたにはどうでもいいでしょうけれど」
「え…」
「植物図鑑嘗め尽くすぐらいの気合で、出直してきな。ボウヤ」
 そう言い放って踵を返す。
「出直す価値もないかしら…? ほほほほほ…」
 それはまだ、玲が水本姓を名乗る前の話だ。

蛇苺の花言葉は「可憐」。そして「小悪魔のような魅力」。
あの人は、知っていたのかしら・・・・?

『羽子(わこ)が家出したぁ? そんなのいつものことじゃんよ』
「いつものことじゃないわよ! あの子、男と逃、げ、た、の!」
『はぁ? たまに電話してきたと思ったら、』
「とにかく、出てきて!」
 そんなやり取りがあってお約束の『kyss(シュス)』だった・・・・。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです