蜜月の刻(とき)
『初体験』の話を聞くはずが、話はあらぬ方向にそれ・・・・
「それから2年後くらいにまた彼に再会し、付き合うことになったんです」
「中絶の経験がある」と嘘をついた相手に再び出会い、こともあろうにつき合うことになったとは…!? ある意味彼女にとっては成功?だったのかもしれないが・・・・
コーヒーデリバリーサービス:笹生多佳恵
(また更なる大きな嘘をつくんだろうか…?)
「それが今の主人なのですが…」
「ええ!? ご主人なんですか? えっと、そこで初体験…というわけでは」
「さすがにそれは。でもわたし、嘘をついたことをすっかり忘れていて」
(そんな大きな嘘、わすれられるものなの?)
「妊娠した時に『ちゃんと産めるのか』って確認されて」
「確認?」
「中絶の経験があるから、まともな子どもが生まれないんじゃないかって」
「そんな…。で、どうしたんですか?」
「あれは『嘘だった』っていいました。でも…」
「でも?」
「おそらく信じてはくれなかったと思います。産院に確かめれば解ることなのですが…」
当時の彼女には、渾身の演技だったはずなのだ。今さら『中絶はウソだった』と言っても「そうか…」とはいかないのだろう。
「記録とかで解るってことですか?」
「いえ。中絶も出産扱いになりますから、医者が見れば初産かそうでないかは」
「あぁそうなんですね。わたしはまだ経験がないので…。じゃぁ、旦那さまはまだ中絶の経験があると思われて?」
「だと思います。若気の至りとはいえ、バカなことをしました」
バカなこと…そうは言っても、男と女では「処女である」ことの重さが違うようだ。
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