連載『オスカルな女たち』
《新しい風》・・・2
(え…?)
「え? 嘘、けい…ちゃん?」
口元を手で覆い、意味もなくキョロキョロして見せた。
(やだ…なんで?)
「やーっぱり。つかさだ…!」
嬉しそうに、昔と変わらぬこぼれるような笑顔がつかさを捉えた。
立ち止まるつかさに駆け寄ってくるその姿を幻かと瞬きをする。
「どう、して…?」
(なんで…嘘…ホントに…?)
自然と顔がほころんでしまうのを必死に制する。
「やだ…。髪型違うからすぐ判らなかったよ…」
言いながら超高速で過去の記憶の引き出しを開けていく。
つかさの記憶している彼はいわゆる〈ロン毛〉と言われる髪型だったが、今目の前に在る姿はさっぱりとしたスポ―ツ刈りになっていた。
「それはこっちのセリフ。エプロンなんかして…ここでなにしてんの?」
へぇ…と珍しいものでも見るように、上から下へとつかさを見る。
「あ…」
(そうだ、そのまま出たんだった…)
エプロンの裾を一瞬つかんでは放し、
「仕事の途中なの…」
笑顔でそう返した。
(こんな格好で…)
そう思いながら、懐かしい職場の記憶がよみがえる。
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