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連載『オスカルな女たち』

《 大切な・・・・ 》・・・6

「いろいろと相談に乗ってくれてありがとね」
 おそらく織瀬(おりせ)なりに、真実(まこと)に気を遣ってくれているのだと解る。
「あたしはなにもしちゃいない」
 織瀬が弥生子(やえこ)の子どもを引き取ると決めてから、離婚、引っ越しとトントン拍子に事が運び、真実は少し空虚感を覚えていた。
 そんなことはないと解っていても、疎外されているようでさみしかった。

「それより…。年明けまで来るなって言われたって?」
「うん」 
(それなら、あの行動はやっぱり…)
「ネットかなんかみたのか、思いのほかナーバスになっててなぁ…」
 気を紛らわすようにして回転椅子を左右に揺らしながら、頭の後ろで腕を組む。
「なにかあったの?」
 患者用の椅子に座る織瀬は、バッグを両手で握りしめ前のめりに真実に詰め寄る。
「いや、体調は…おとなしくしてればいいんだ。でも、なんかあったんだろうなぁ、急に『外出許可出してくれ』っていいだして。もちろん無理だろ? 自分だって知られちゃまずいから口止めまでして隠れてんだから。でもなぁ…」
 首を後方に倒し、天井を仰ぐ。


*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

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たゆ・たうひと
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです