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シンデレラコンプレックス
第4話 『乙女が歌えば小鳥もさえずる』5
「見知らぬ訪問者に気を許すな」と言われながら、それでも騙され3度も命を狙われる白雪姫に、小人たちは苛立ちを感じなかったのだろうか。
(わたしも、だれかをイライラさせているのかな?)
考えられる相手は・・・・店長? いや、やっぱりナナ江ちゃんかな。
(歩多可…は、省いていいよね、お互いさまだし)
「あ、荷物。そろそろ届いてるかな」
珍しくお店で買い物なんかしなければよかった。
まさか「こないで欲しい」と言われるなどとは思わなかったし、品物を頼んだ時は、取りに行ったときの店長の悔しがる顔が見てみたいと思っていた。
余計な好奇心を出さなければよかった。
(どうしてこんなことになってしまったんだろう)
なぜ、こんなにも心がざらつくのか。
幼すぎるゆえか、聡明ゆえか、白雪姫は騙されてしまう。
否!
ただ聡明であったのなら、継母に灼けた鉄の靴など履かせるはずはない!?
やっぱり女は、どんなに幼かろうとも「女」なのだ。
加えてお姫様は、騙されてもそれを跳ねのけるだけのスペシャルな回復力を持っている。すべてはハッピーエンドに向かって取り計らわれているのだ。
(こんな結末じゃまた再提出かな…それより、)
お妃様はなぜこうも「美しさ」に拘ったのだろう。まるで美しくなければ「存在価値がない」とでもいうかのように、執拗に「世界一」であり続けようとした理由は?
だれもが認める「美しさ」であれば、べつに白雪姫が次の「世界一」になったとしても変わり無いのでは? いずれ老いも訪れる。
それともただ、話題が自分から逸れることが許せなかったのか。「世界一」であれば、嫌われていようとも気に掛けて貰えることが重要だったのだろうか。
あり得ない話ではない。
「でもそれって」
(さみしかった…って、こと? だとしたら)
なんだか悲しい。
嫌われても関心を持って欲しかった。
他人に気を配って評価を得るより、美しさで力を誇示し、人々の心に自分という存在を刻み込みたかったということだ。
ひとは「ひとりでは生きていけない」のだ。
お妃様とて、もとは「姫」。それ相応のハッピーエンド効果を備えて持っていたのかもしれない。どこを間違えたのか、安らぎよりも強さを求めいつの間にか周りからひとがいなくなった?
さみしさを紛らわせるための魔法の鏡。
話し相手は鏡の中に閉じ込められている精霊。
(女は、切ない生き物だ)
「恋」とは、そういうもの…だろうか。
「ぁ、脱線した」
答えを求めるべきは「プリンセス」なのだ。ヴィランズに関わってる場合ではない。でも、
「悪」は生まれたときから悪だろうか。
ひとにはそれぞれ「歴史」がある。
たかがおとぎ話、されどおとぎ話。
きっと、物語の中にも流れる時間があって、時代ごと、こうしてわたしのようにいろいろな解釈をして、あるいは都合よく当てはめているだけなのかもしれない。
(どうしよう…)
お妃がかわいそうになってしまった。
これではレポートが仕上がらない。
「再提出…上等!」
次はどんなプリンセスにしようか。
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