チューリップ紫

連載『オスカルな女たち』

《 真実を語る 》・・・7

「織瀬(おりせ)、顔色悪いぞ?」
 手術入院を前に怖気づいたのだろうか…と、真実(まこと)は気が気じゃなかった。案の定、
「ぅ…ん。いろいろあって…最近、よく眠れてないの」
 静まり返った診察室にふたり、向かい合って座った。

「なにがあった?」
「ン~。どっから話そう」
 苦笑いの織瀬。
「どっから? そんなにいろいろあったのか?」
「…そういう、わけじゃないけど」
 そう言って織瀬は、少し視線をそらして考えるようなしぐさを見せた。「もうずっと、幸(ゆき)とまともな会話がなくて…」
「いつから?」
「そう言ったら…。もう、結婚記念日のあと?」
 小さく微笑む織瀬。
「そう、か…」
(なぜ言わない…!)
 もう2か月以上になる。
(言えない…か…)
「織瀬。あたしの前で、ムリに笑わなくていい」
(そんな、泣いてるみたいな顔で笑うな…)
 取り繕わなくていいんだ、ここでは…と、優しく肩に手を触れた。
「ありがと、真実。…日常会話はあるけど、突っ込んだ話はしないってだけ」
「当たり障りないってことか。それもそれで…」
 さみしいな…という言葉を飲み込む。

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