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連載『オスカルな女たち』

《 過去からの手紙 》・・・7

「ありがとう…って。それは、オレらのセリフなんだぜ」
「あたしだって、いろいろあんたたちからしてもらってるのに…」
(犬…とか…)

「そんなの、育ててもらった恩に換算したら微々たるもんだっての」
 そんな風に大事にされていたのかと思うと、また目頭が熱くなる。
(あたしには、こんなにもたのもしいナイトがいるんだね…)
「郷(さと)なんか、姉貴がいつまでも子ども作らないのは、自分が自立できてないからだって気に病んでたんだぜ。…ま、夫婦の事情は知らねーけど」
 継(つぐ)は語尾を荒く、意味深な視線を送ってる。
「そうなの? あの子無口だから、嫌われてるのかと思ってた…」
「そんなの、当たり前の反抗期だろ? 末っ子ちゃんには、充分かぁちゃんだったんだよ。姉貴は」
「そう、なんだ…。やだ、もう」
「なんだよ、涙もろくなったな」
「もともと繊細なの、あたしは」
 ずっと怪しんでいた通帳の正体がこれだった。
 それはこの上なく貴重で、たとえようもないほどすばらしい贈り物。まるで過去からの手紙を開いた時のような、懐かしい風に包まれたような思いがつかさの心を満たした。

 あたしは、しあわせ者だ・・・・。

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たゆ・たうひと
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです