花茶

連載『オスカルな女たち』

《 ブレインストーム 》・・・5

「お兄様にもそんな甲斐性があったのね」
 という玲(あきら)の言葉に、ますます顔を紅潮させる明日香。
「玲さん…」
それ以前に、緊張からなのか、明日香は体に妙な火照りを感じていた。
「からかうなよ、玲」
 そう言いながら自身も、その薔薇を拾い上げては持て余している様子の聖(ひじり)。
「あら失礼。とにかく、ふたりで話し合って」
 玲はとにかくおかしくて仕方がない。
え…
 まさかふたりきりにされるとは思ってもみなかったのだろう。重なる言葉と同時に玲の顔を凝視する。
「なによ、当然でしょう? 子どもじゃないんだから」
 世話の焼ける人たちね…と、キッチンに向かう玲。だが、
「玲さん一緒にいてくださるんじゃないの?」
 すぐさま明日香が、玲の足を止めた。
「お兄様だって…それなりの覚悟をして来られたのでしょう…? 明日香さんがただ黙ってついてくるなんて、思っていないわよねぇ?」
 ドアの前で一歩も動けずにいる聖は、ここへ来ることさえやっとだったのだろう。当然のことながらなにも反論してはこなかった。
「私がいたらお兄様が気まずいでしょう…?」
 確かに、妹の前で家出した妻を口説くなど、これ以上の恥辱はない。まして普段から寡黙な聖は、玲どころか明日香にだって話を切り出せるのかすら怪しいものだった。

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