新装開店
日常的に見る景色にはその時期ごとの変化が見られるが、季節の変わり目ほど目まぐるしい変化はない。が、その景色の中に「新装開店」というイベントが加わると、建物ばかりでなくまわりの景色までもを活気づけてくれるような気がするのはわたしだけだろうか?
ぽっかりとあいた空間に、まるで新しい絵画がはめ込まれたように様変わりするとき、平穏な毎日が一瞬で華やかな期待を孕んでくる
更地になった土地に看板が立ち、駐車場が整い建物が姿を現すと開店日が待ち遠しくなってくる。期待がプラスされ、横目に過ぎていく真新しい壁に気持ちが昂揚する。自分のことじゃないのに、だ
ほぼ毎日同じ道をドライブしている
家から駅まで、約20分
飲食店の切り替わりは早い
いつか「行こう」と思っていた高そうなレストランが建っていた場所は、引っ越してきて3年目に更地になった。雑草がぼうぼうになり、森になるかと思うくらいに背が伸びた頃、突然空間が現れ、だが既にそこから3度目の新しい店。しかも全部が飲食店。土地には建物を呼び寄せる特質でもあるのだろうか
最近、わたしの交通圏内に新装開店をした飲食店が4店舗。ひとつは前から噂のあった安定のチェーン店。ひとつは出来あがってから初めて知った専門店。もうひとつは居ぬきで、内装も食べ物の種類も変わらない入れ替わり。最後は一度更地が雑草に覆われてからやっと工事が始まった有名店
どの店もばらばらに着手されたはずなのに、結局開店は数日の誤差で始まった
いつもは気にならないことが、最近気になるようになった。これも年齢のせいなのか、季節がらだったのかは定かではないが、自分「随分丸くなったもんだなぁ」と思う
それは、新装開店日に店頭に並ぶお花たちについて・・・・
一件はお断りしたのか、新装開店当日もお花はなかった。一件は大きなお花が門松のように並べられていた。もう一件は以前からそこにあったような顔をしてひっそりと何の変化もなかった。そして気になる話題を提供してくれたのは、店先から駐車場までずら~りとお花を並べた有名店
お花屋さんが相談して同じ花にしたのか、それともお花屋さんは指定だったのかというくらい、同じタイプの花飾りがびっしりと並んでいて「あぁ、ひまわりかわいいな」と思った
そうひまわりがあった。でも、ここ数日の炎天下で周りのお花たちがちょりちょりになっていて、お花屋さんで用意した花籠だから新店舗の店員さんがあえて水やりをすることもないのかな~と眺めていた
花籠って、結婚式やお葬式の時は、来場者に「ご自由にお持ちください」的なところがあるけれど、新装開店のお花は、お祝いとしてくれたものだからお客さんに「ご自由にお持ちください」というわけにはいかないのかな?
ただ枯らしてしまうなら、お客さんに「よかったらお帰りの際にどうぞ」って一言あったら、喜んで持ち帰るのに…と思った
いや多分、ひまわりがなかったらそこまで思わなかったかもしれないけれど、きっとあの緑のガサガサしたやつに刺さって、最初はお水がたっぷり沁み込んでたんだろうなぁなんて想像したら、ちょっと行き先が心配になった
終わったら「すてられちゃうのかな、やっぱり」なんて考えてる自分が不思議でしょうがないけれど、あぁいう花籠って、どのくらいの期間で引き上げられるんだろう。ちょりちょりになるまで放置なら、やっぱり配ってほしいなぁと眺めておりました
まさか、食べに行って帰りしな「お花貰っていいですか」とも言えない。いや、おばちゃんだから言ってしまってもいいのかもしれないけれど、やっぱりちょっとね、憚られる
いや、全然、まったくもって余計なお世話だけどね
そして数日後、開店前の店先で店員さんと思われるお姉さんたちが花籠の選別をしている姿を見掛けた。あぁ「いいなぁ」って思った。そういう姿勢を目の当たりにすると、勝手ながら「ここは成功まちがいない」と根拠のない自信と、応援したい気持ちが湧く。もちろん自分とは何の関係もない場所なのに、だ
更に、わたしのもやもやも報われる