蜜月の刻(とき)
病院の医院長ともなると、かしこまったイメージを当てはめがちだが、今目の前にいる女医さんは、普通に学校のクラスにいそうな、ちょっと不機嫌なお姉さんという感じだった。
女医:匿名希望
「初体験の話なんて、みんな喜んで話してくれるの?」
「それはまぁ、人それぞれに…」
「オタクは?」
「え?」
「自分の話はもう記事にしたの?」
「あぁ、いえ。わたしのはつまらないので…」
「そんなこと言ったらみんなそうだよね? こっちの話ばかり聞いて、自分は安全圏? そっちが話してくれるなら喜んで話すよ。匿名希望なら、自分もいけんじゃないの?」
おやおやなんだか雲行きが怪しくなってきた。
「あ、じゃぁ、オフレコで、インタビューのあとに…」
そしてやっと彼女は重い口を開いた。
「あれは、高校2年の秋…だったかな。部活でへた打って、ふてくされて学校休んでたところに、部活のコーチがやって来て」
「え~と、それはなにしに?」
「最初はほら『学校にこい』とか『腐るな』とか、とにかくそういう暑苦しいやつで、」
「あ~いますね、体育教師なんかに」
「そう、それよ。で、最初は適当にあしらってたんだけど…」
適当にあしらうって、仮にも相手は先生なのでは…?
(この女医さん、オラオラ系だったのかしら…)
「あしらって、どうしたんですか?」
「いい加減うざいから、きちんと話そうと思って、家に入れたんだよね」
おお…っと、これは予期せぬ禁断の恋というやつだろうか!?
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