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蜜月の刻(とき)

乙女と呼ぶほど成熟してもおらず、少女と呼ぶほど幼くもない、娘は二十歳。当たり前に将来を考えていい年齢ではあった・・・・

ただ娘は、男子と席を分けて育つ環境にあり、世間に身を投げ出すには少々、ひとを疑うという心を持ち合わせてはいなかった
「恋」とは堕ちた者の澄んだ眼を曇らせる性質に在るのか、娘は明らかになにか見落としていた…としか言いようがない
男は自由奔放で少年のまま大人になった。ゆえに乙女に対する心の在り方を知らずに、優しさがないわけではなかったが心の機微に対する配慮にかけていた。見るものを見えるままに、感じるものを感じたままに投じられるその悪気の
ない言葉は、相手を惨めにさせるには充分な毒気を孕んでいた

共に成熟していたとは言えない者同士が出会い、大人のなりをしていながら心は未熟、先は見えていたのかもしれないが求め合ってしまったのだ
娘は充分に用心はしていたのかもしれない。ただ、その用心は心無いものや外敵に対するものであって、信頼する者や好意をよせる者に向けられたものではなく、ただただ無防備だった



「なぁ、なんなのこれ。いくちゃんよ」

「はい…」

それはまるで、遠い過去に戻って、静まり返る教室の中、クラス中の視線を浴びながら教卓の前に立たされているような、そんな気分だった。


「だれも、こんな、中途半端な小説書いてくれって言ってないじゃん」

「はい…」

いつもの砕けた感じではなく、明らかに怒りのこもった口調が、恥ずかしさよりも嗚咽を誘う。


「コラム書いてって言ってんの。作文じゃなくて」

だから最初から無理だって言ってるのにぃぃぃぃx


結局わたしは、2000字すら書けなかった。


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