桑の若芽
母の実家は、わたしが物心つく前まで「お蚕さま」を生業に暮らしておりました。繭をキレイに整えて、どこぞに収めていたらしい。糸にまではしてなかったみたい
休日になると母は、わたしを連れて実家に手伝いに行く
なんでも口に入れる乳児期のわたしを、飼育台の上にのせ「遊ばせていた」というからコワい。むくむくと動く蚕さまをわたしは、おもちゃ同様に「口に入れて遊んでいた」という・・・・
記憶はないが、当然大嫌いだ。たとえ「様」がつこうとも、申し訳ないがあがめられない。「不思議と食べなかったんだよねぇ」というが、食べていたらなおコワい。なんツー母親だ、と未だに思う
口に入れると「冷たくて気持ちいい」なんてことはどうでもいいのだ!
そんな話がしたいわけではない
蚕さまの餌は「桑の葉」だ。だから、蚕さまをやっているおうちはたいがい桑畑を持っている。もしくは畑の周りをぐるりと桑の木が囲んでいる…とか、そんな感じだったんじゃなかろうか。母の家の畑しか見たことないから何とも言えないが
物心ついたころにはもう、祖父も他界して蚕さまもやらなくなっていた。でも桑畑はまだ残っていて、わたしはいとこ達とよく「桑の実」を取って食べたものだ。味は覚えていないが、美味しかったんだと思う。探してまで取りに行っていたから
さて、そのお蚕さましか食べない「桑の葉」だが、実はひとも食べられるらしい。知っているひといるかな?
わたしも食べたことはないけれど、とても美味しいらしいのだ
小さい頃「よく食べていた」と母は言う。それも新緑の頃に出る「若芽」が美味しいのだそうだ。でもそれが「桑の葉」だということは、聞かれてもだれにも「言うな」と固く禁じられていた。なぜなら当時、母の実家の部落は「お蚕さま」か「たばこ」で生計を立てていたから
桑は蚕の餌である。その餌がひとも食べれると解ったら盗られてしまう。ひとがこぞって若芽を取ってしまったら、お蚕さまの桑の葉が育たなくなり、ひもじい蚕は繭を作らなくなってしまう。だから「内緒」にしなければならないということだ
貧しい時代にはよくあることで「美味い」と解ればみなこぞってそれを食すことだろう。だがしかし、自分の畑のそれを食べるのか…と言えば当然そうしない輩もいただろう
しかしながら祖父は、ケチではなかった。時期になればひとに振舞うこともあり、ひとり占めしていたわけではない。ただ、それを食べたお客様に「この葉っぱはなんぞや?」と聞かれると「その辺にいくらでも生えている」と答えていたらしい。嘘ではないが、なかなかだ
蚕は繭を作り、それを丁寧に、ごみやらを取り除いてしかるべきところに収めていた。じゃぁ「たばこ」は?
たばこの葉っぱってみたことありますか?
わたしも記憶が定かではないのですが、大輪のひまわりくらいの背丈に育ち、それこそひまわりの葉っぱ…いやそれよりもっと大きな葉をつけるのです
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この葉を1枚1枚とって紐に括り付けて干す。その干したものをしかるべきところに収めるというわけです
懐かしい絵面です
わたしが中学くらいまではまだ、たばこの畑をやっているおうちがあり、わきを通るとたばこ臭かった~。青い葉っぱも匂うし、触ればヤニで手がべたべたになります
わたしもアルバイトでたばこの糸通しをしたことがある。親類の家に家族総出で手伝いに行くわけだ
一本通すと500円。いいバイトだが、稼げるのは一回に3000円程度だった。まぁ中学生にはいい値段
でもとにかく、それをすると全身がヤニ臭くなるわけで、手ばかりでなく服も髪もベタベタになるので、帰りはそのオタクでお風呂と夕飯をいただいた。一日がかりなのでちょっとしたワーケーション? 小遣いがついてくるのだから、子どもには充分に楽しめる週末だった
ふと、この葉っぱが「セブンスター」や「エコー」になるにはどんな選別をするのかと疑問になり、母に聞いてみた
「コシヒカリ」や「あきたこまち」のように、畑によって選別されているのかと思いきや(そういうこともあるそうだが)、お茶のように取れる部位、順番でわけられているらしい
ふ~ん(。-`ω-)
・・・・なんて話をね、最近実家に帰るとするようになった
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです