連載『オスカルな女たち』
《 騒がしいやつら 》・・・8
「どうするかなぁ~」
思わず口をついて出てしまった心の声に首を落とし、真実(まこと)はスマートフォンを手に玄関を出た。
着信履歴から電話をかけ、器用にスマートフォンを肩と耳で挟み込みながら、今度は煙草を取り出して慣れた手つきで火をつけた。
『もしもし。…いそがしかった?』
「いや。織瀬(おりせ)、胃潰瘍だって…?」
スマートフォンを持ち直して、煙草の煙を吐いた。
『なりかけ…だって』
電話の相手はつかさだった。
(じゃぁ、子宮の方はもともと心配なかったのか…?)
気がかりだった織瀬の体調に「思い過ごしか」と安堵するものの、婦人科医の勘なのか妙な胸騒ぎがやまない真実。
「しばらく飲みにも誘えないか…」
半分うわの空の真実は、雨が降り出しそうな空を見上げながら煙草をくわえる。最近の真実は、手術の前日にはいつも織瀬と一緒にいることが多かったため、手術前のルーティーンがなくなる…かと懸念しながら。
『飲まなきゃいいんじゃない…?』
「そうだけど…」
(すごいこというな)
『飲みに行かなきゃいいわけでしょ』
「まぁそうだろうけど、胃だろ…?」
『胃潰瘍はなりかけてるんだけど…今回のは、極度の緊張からくる胃痙攣だって診断だったみたいよ』
「胃痙攣? どっちにしたってだめじゃん」
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