連載『オスカルな女たち』
《 あかちゃんはどこから? 》・・・20
自分が操(みさお)の「実子ではない」と知ったのはいつの頃だったのか。
気づけば父親はいなかったが幼い頃にはまだ祖父がいたためか、自分の家庭環境が他とは違うと思いながらも特に不便を感じたことはなかった。だが父親の不在に対し、ふとまわりを見渡し同じように〈母子家庭〉である級友と自分を見比べた時〈死別〉だとか〈離縁〉だとかそんな雰囲気どころか自分には父親が存在すらしないのではないかと疑ったのはなにがきっかけだったのか。
操は最初から隠してはいなかった。だからといって「実子ではない」ことを理由に自分を責めたり、蔑ろにするようなことはなく、むしろ執拗なほどに自分を慈しんでくれたのだ。
「里子の件。考えなくてもいいけど、養子縁組って話になると、婚姻の有無で様式が変わってくるから、」
突然に、真実(まこと)は真顔で切り返した。
「ぅ、うん…」
「織瀬(おりせ)。真田のこと、好きなの?」
ついでのように問われた言葉は、今の真実にとって一番気になるところだった。それまで淡々と答えていた織瀬だったが、その質問には無言で返した。だが、織瀬を想う真実にはそれだけで充分だった。
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