サングリア

連載『オスカルな女たち』

《 男ともだち 》・・・14

「最近、生理のたびにあちこちに固いものができるの。お尻だったり、内腿だったり、生理が終わると自然に治るから気にしてなかったんだけど、さすがにこれは…」
 痛い…と顔をしかめ、無防備な下半身に恥ずかしさを隠せず、誤魔化すように口が滑らかになる自分を滑稽だと思うつかさ。
(妊婦はみんなこんな思いをしてるのか…)
 冷静に考えても周りはトイレよりも広い空間で、自分を隠しているのは薄いカーテン1枚とあっては、心細さも倍増だ。
「準備できた?」
 と、今度は自分の背後から真実(まこと)の声がする。座椅子の背後にはこれまた入り口と同じブルーのカーテンがひいてあり、そちら側で真実が待機していることが解る。
「ぅ、うん。座ったよ」
 いよいよ、真実がこちら側に入ってくるのだろうか…と待ち構えていると、
「椅子動くよ、体楽にして」
 という言葉と同時に、静かに機械音が鳴った。
「わ…」
(動くの、コレ?)
 などと悠長な言葉を考えている間もなく、ひじ掛けを掴み、椅子が回転すると同時に自分の身体が斜め後ろに倒されていく。
「わ、わ、なにこれ、こんな…?」
 驚きもままならないまま今度は両足が持ち上がっていくのだ。
(うそ~)
 あれよという間に、カエルの解剖のような自分の下半身はカーテンの向こう側で真実にむかって「こんにちは」である。
(は、恥ずかしい…)

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たゆ・たうひと
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです