連載『オスカルな女たち』
《新しい風》・・・8
つかさの中でも今の生活は限界だった。
「それもありだな。吾郎さんもなに考えてんだろうな。戻ってくる気もないんだろ?」
「まさか…。嫌がらせしてるだけよ。今さら戻ってこられても、こっちも困るけどね…。それより、相談て?」
愛犬の背中を見ながら静かに答えた。
「あぁ、実は…」
継(つぐ)は少し考えてから、立ち止まり、
「…みさきに3人目ができたんだ」
「あら、おめでたいことじゃない」
思わぬ出来事につかさは笑顔で返す。
「うん。それで、ゆあも今年は受験で一人部屋が欲しいって言いだしてさ。今のマンションじゃ手狭だし、…引っ越しを考えてる」
〈ゆあ〉は継の長女で今年15歳になる。
引っ越し、と言われてひとりには広い今の家を思うつかさ。
「そうかぁ…もう高校生になるのか。早いね…」
(そうかぁ…。あたしがあの家を出れば、新しいマンションを探さなくてもいいんだよねぇ…)
しばらくの沈黙の後、歩き出し、
「そろそろ身の振り方考えないとね…あたしも」
言い出しにくいであろう弟を気遣い、自ら口火を切ったつかさだが、
「え?」
合点のいかない様子の継。
「そういうことじゃないの? あの家を明け渡せってことよね?」
違うの?…と継の顔を見上げる。
(言い方悪かったかな…)
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