連載『オスカルな女たち』
《 あかちゃんはどこから? 》・・・6
「だれ?」
当然の質問だ。
「行けばわかる」
ひとつため息をつき、真実(まこと)はそう言って入り口のドアに向かった。
「来てる、の?」
黙って真実の行動に従い、診察室を出る織瀬(おりせ)。
「だれか、呼んでるの?」
後を追いながら織瀬は、正面玄関を過ぎたところでそう言った。
「患者、だよ」
一方真実は、余計なことは言わずにただ奥へと歩いた。向かった先は無記名の〈ファミリールーム〉。
「ここ?」
〈面会謝絶〉の札が織瀬の気持ちを騒がせる。
真実はその問いには答えずに、黙って扉をノックした。
「はい…」
「あたし」
織瀬はその対応に目を見張る。
病院でいうところの〈面会謝絶〉とは、言葉の通り「ひとと会うのを断る」という意味だ。大概〈重体〉の患者や見舞いを〈拒絶〉した状態を表しているのではないだろうか…と、その扉をノックし「あたし」で通じる相手を、織瀬は必死に思い描いているだろうことが想像できる。
「どうぞ~」
思いのほか元気そうな病室の主。
「入るよ」
そう言って扉を開けた。
部屋の中はとても暖かく、甘い香りに包まれていた。
「失礼しま…す」
そう言って顔をあげた先に、知っている顔。
「えっ…」
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