ヴァン2

連載『オスカルな女たち』

《 ありのまま 》・・・12

「おりちゃんが追い出した…とか?」
「そうなのかしら…でも『出て行った』って言っていたし。とにかく織瀬(おりせ)の様子も普通じゃないらしくて、ただの喧嘩ってわけでもなさそうなのよ。そうはいっても旦那さまも、まさか病院には顔を出すだろうと思って」
 様子を見るつもりで出掛けて行ったのだという。
「だよね…。で? いたの、病院に」
「いたわよ。行ったらちょうど受付で旦那さまが入院手続きをしてるところで…待合の椅子に織瀬と座って待ってるマコの顔が、もう鬼のようで…」
 言いながら玲は両手で顔をかきむしるようなしぐさをして見せた。
「え~っなんでまこちゃんが」
「だから、マコに『まさか殴ったりしてないでしょうね』って、思わず言ったわよ」
「殴ったの?」
 真実(まこと)ならやりかねない行動につかさは大げさではない反応を見せる。
「我慢したそうよ」
「ガマン…」
(殴りたい衝動はあったのか…)
 とはいえ想像がつくから不思議だ。
「早朝に織瀬を迎えにマンションに来たらしいの、旦那さまが。それを受けたのがマコでね…握りこぶしは振り上げていたでしょうねぇ。でも、双方の事情も解らず一方的に殴り掛かるわけにはいかないし、寸でのところで思いとどまったみたい」
 まるで見て来たかのように語る玲だが、つかさも想像に難しくないと納得する。

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たゆ・たうひと
いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです