連載『オスカルな女たち』
《 ギフト 》・・・2
「そう言えば、先輩なんだとか…?」
「え?」
「高校、一緒なんだって聞きました」
あぁ自分から話を振ってしまった…と、改めて楓が恨めしいと思う真実(まこと)だったが、相手もなにがしの『オスカル』だと聞いてしまっては興味をそそられないわけではない。知りたいことでもないが、気になるレベル。
「あぁ…。そう。『奇跡のオスカル』…!」
嬉しそうに真実に微笑む。
「いや、それは…」
逆指名。
(どうでもいいんですがね…)
そちらは?…とは、なかなか言い出せないものだ。
「わたしが卒業したあとだったけど、あなた、だいぶ有名だった」
優雅に、そして流れるように楚々と話す彼女は、とても線が細く抜けるような白い肌をしていた。〈女性〉という言葉がぴったりハマる容姿。自分の周りにはいないタイプ。
「そうですか?」
「外部生でスポーツ特待生なんて、そういないもの」
外部生とは高校からの受験で入学してくる生徒のことを指して言った。真実もそうだが、玲(あきら)、つかさ、織瀬も同じく外部生だ。逆に玲の取り巻きは皆、内部生…「お嬢様学校」なのだから当然といえば当然。
「そちらは、ずっと…?」
そう言えば自分は、彼女の名前を知らない。院の駐車場は彼女の家の裏手にあたるため表札を確認することもできない。
(楓は知ってるのか…?)
「ふふ…。えぇわたしは小学校から」
結果、「お金持ち」ということだろうか。
「そうなんですね…」
(名前を聞いてもいいのだろうか…?)
しかしこの先、どの程度のつきあいになるのか。今までだって、ただの隣接した家の住人にしか過ぎない存在だった。あとで近隣の地図でもググってみるか…と考えあぐねていると、そんな真実の様子に気づいたのか「自己紹介がまだだったわね」と彼女の方から持ち掛けてきた。
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