チャペル

連載『オスカルな女たち』

《 結婚記念日 》・・・14

結婚10周年記念当日は、皮肉なことに水曜日であった。

頼んでいた書斎の椅子も届いた。
リボンをかけて書斎に運び込む織瀬(おりせ)は、アクションを起こそうと考えていた。
どうせいつも通りになってしまうなら、いつも通りではない試みを思い切って持ち掛けてみようと考えていたのだ。

このさみしい夫婦生活にピリオドを打つべく、幸(ゆき)と話をしてみようと、ずっと考えていたことを実行に移そうと。
たとえいつも通りの夜になったとしても、予定もなくがっかりさせられたとしても、それでも頑張って特別メニューを用意して。

「ねぇ幸、そろそろ考えてみない?」
食事が終わって、デザートのブルーベリータルトをいただきながら、ワイングラスを傾け気分よさそうにしている夫に向かって静かに語り始めた。何気ない会話の、何気ないひとこと、何気ない続きの言葉であるかのように自然に繰り出したのだ。

「なにを?」
「あたしたちの…子供のこと」
「え?」
 明らかに顔色が変わるのが分かった。だけど、今日はあきらめない。

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