連載『オスカルな女たち』
《 騒がしいやつら 》・・・2
「そうなんですか? あたしはてっきり、」
はい…と素直に差し出されても、はい…とそれを受け取れない現実。「てっきりじゃねーわ! 勝手に…っ! なにやってんだ」
「あたしもてっきり、真実(まこと)先生のかと」
唇を尖らせる楓は「ざ~んねん」と、手首を回転させあらゆる角度から品定めでもするかのように手に持つ白いくまのようなそれを眺める。
うよん、っよん、っよん・・・ うよん、っよん・・・
「てか、止めて。それ…。気持ち悪い」
額に手を当てため息をつく。
「そうですか? かわいいですよ…?」
そう言って白いくまの裾をめくって見せ、マペットもどきに姿を変えた〈ジャンボ金太郎〉のスイッチを切る。
「なにそれ、なにした?」
(かわいいとか、冗談じゃない…!)
額を親指と中指で力強く押さえ、力なく診察ベッドに腰を下ろす。
「これ、ジャンボ…」
「そうじゃなくてっ、…姿、変わってんじゃん!」
「真実先生、かわいいって言ったじゃないですか」
「それはっ、ぬいぐるみだと思ったから…!」
物の正体が解れば「かわいさ」など吹っ飛んだ。
「これ、ゴルフクラブのヘッドカバーなんです。こうすると、子どものおもちゃみたいででよくないですか?」
「よくないよ…」
(ヘッドカバー…? なんちゅう…)
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