連載『オスカルな女たち』
《 結婚記念日 》・・・9
「部屋ぁ…? あんだけでかいマンションに住んでて、部屋なんかどうすんだよ」
また、でかいプレゼントだな…と真実(まこと)が突っ込む。
「そりゃ…ひとりになりたいときとか? 趣味…とか、ね」
「趣味…」
疑いの眼差しを向ける真実。
「結婚10年でしょ? それなりに考えて…、逃げられちゃまずいとでも思ったんでしょうよ」
慌ててとりなす玲(あきら)。
「その部屋に逃げられるだろうよ?」
「言われてみれば…そうね」
「なんだよ、それ。結局玲に都合よくできてんじゃん」
これだから金持ちの考えることは…と、背もたれに重くのしかかる真実。
ぼやくように、
「その部屋に家出すりゃよかったじゃん」
何気無い言葉のつもりで言い殴る。が、
「そういう部屋じゃな、い、の、」
思わず口を突いて出てしまい、「落ち着くインテリアじゃないのよ…」と、玲は慌てて言い直した。
「落ち着くインテリア~? 玲、どんな趣味よ…?」
どうにもそこが気になるらしい。
「い、いろいろよ、多趣味なの」
「多趣味~?『退屈』が口癖の玲が~? 多、趣、味? 聞いたことない…」
ますます疑いを強くかける真実。
「玲、趣味とかあるんだ」
そこはつかさも興味をそそるらしい。
「なんだっていいじゃない、そんなの。あなたたちだってあるでしょ、趣味のひとつやふたつ…」
これ以上突っ込まれては困ると、話を遮ろうとする。
「なに慌ててんの? なんかあんの?」
すかさず切り返す。
「マコ、うるさい。…子宮フェチのあなたは、仕事が趣味よねぇ…」
したり顔で真実を見遣る。
「フェチいうな! 勘違いされるだろうが…!」
「大丈夫よ~。私たちはみんな知ってるもの…」
「そういうことじゃない、つーのっ…!」
「ふふふ…また始まった~」
もうすでにおなじみのこのやり取りが、最近では楽しみにさえ感じているつかさだ。